おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

スラップ・ショット

2021-04-21 06:48:56 | 映画
「スラップ・ショット」 1977年 アメリカ


監督 ジョージ・ロイ・ヒル
出演 ポール・ニューマン
   マイケル・オントキーン
   ジェニファー・ウォーレン
   メリンダ・ディロン
   ストローザー・マーティン
   リンゼイ・クローズ

ストーリー
全米プロ・アイスホッケーのマイナー・リーグのチャールズタウン・チーフスは最下位の三流選手のチーム。
しかもスポンサーの鉄工場が不況で閉鎖するため、おさきまっくらだ。
選手兼コーチのレジ(ポール・ニューマン)とネッド(マイケル・オントキーン)の2人はチームの解散を覚悟するが、マネージャーのジョー(ストロザー・マーティン)は、解散どころか新しく3人を採用。
この3人組、名前はジャック(デイヴィッド・ハンソン)、スティーブ(スティーヴ・カールソン)、そしてジェフ(ジェフ・カールソン)といい、モジャモジャ頭のガラの悪い馬鹿連中で世も末だ。
レジの私生活の方も、女房のフランシーヌ(ジェニファー・ウォーレン)とは別居中で、元どうりは不可能。
一方、ネッドの方も女房リリー(リンゼイ・クルーズ)と別居中。
数日後の試合の時、レジは相手チームのゴールキーパーに、「お前の女房はレズだ」とののしり、乱闘して勝利をものにする。
その日をさかいに、チーフスのチームの売り物は暴力となった。
なかでも例の3人組のメタメタは素晴らしく、チームは連勝につぐ連勝で、血をみてファンは熱狂した。
そんなある日、レジはチームの今後につき話し合うため現オーナーを訪ねる。
連勝のチームなのだから、何んとか未来は明るそうだったが、オーナーが今までチームを持っていたのは、税金対策のためだったと分かる。
その夜、優勝決戦が開始された。
最後の試合こそクリーンに--、でも相手チームは悪ばかりだ。


寸評
落ちこぼれチームが何かをきっかけに変質して勝ち続けるストーリーは、野球やフットボールなどのチーム競技を通じて描かれてきた格好の題材である。
「スラップ・ショット」はアイス・ホッケーを描いたスポーツ映画であるが、コメディの要素を多分に含んだ作品だ。
スポーツ映画でありながら、アイスホッケーの迫力とか、息詰まるような試合展開で手に汗握らせるという描き方を避けている。
ホッケー試合の背景である選手たちの生活や家庭、彼等を支える町の雰囲気などに重点が割かれている。
チーフスがいるチャールズタウンは鉄工場で成り立っている町だが、不況で1万人の失業者がでるようで、人々の中にうっぷんが溜まっていることが想像される。
チーフスの身売り話が起きていることも不思議ではないし、その事は皆も納得してそうだ。
選手は遠征のため留守がちで夫婦間に隙間風が吹いている。
ジャックは妻と別居中で、ジャックが未練たらたらなのに対し、妻のフランシーヌは離婚を決意している。
ネッドの方も妻のリリーと別居に至るなど、彼等の私生活の崩壊ぶりが作品に陰影を与えている。
アイスホッケーはアメリカでも人気のある4大スポーツの一つであるが、選手としてアメリカン・ドリームを獲得した者たちを描いているわけではない。
むしろ町の不況と言い、アメリカン・ドリームを獲得し損ねた人々を描いているように思える。
ドリームの体現者はチームの女性オーナーで、彼女がチームを持っている理由を知って反旗を翻すのは、社会を牛耳る数少ないドリームの成功者への反撥とも見える。

悪者三兄弟が加入し、ラフプレーで連勝するようになっていく過程が描かれるようになって映画は輝いてくる。
しかし、乱闘に至るまでの描き方は、乱闘シーンは面白いが、しかしそれを徹底的に描いているとは言えず、男性目線としては途中で打ち切られているようで、少々物足りなさを感じる。
ジャック、スティーブ、ジェフの3兄弟のキャラは面白く、もっと大暴れをさせても良かった。
脚本のナンシー・ダウドが女性であることが影響しているのかもしれない。

これが最後と思ったレジは本来のアイスホッケーをしようと提案し、ラフプレーを封印しボコボコにされる。
乱闘シーンを見たい観客は不満たらたらである。
野次馬根性が渦巻いている世の中の観客にとって、どんなスポーツでも乱闘シーンは面白いと感じてしまう。
チーフスのラフプレーに興味を持った全米プロ・アイスホッケーのスカウトが見に来ていると知ってから、チーフスの面々は本来の凶暴さを見せるのだが、彼等の態度が一変するのもちょっとアッサリしすぎていたように思う。
これは脚本のせいなのか、監督ジョージ・ロイ・ヒルの演出なのか、僕にはよくわからない。
観客は「殺せ、殺せ」の大合唱である。
暴力反対の立場をとるネッドは乱闘に加わらずベンチで控えている。
その時、スタンドで同じように「殺せ、殺せ」を叫んでいるリリーを発見し、ネッドはついにリンクに飛び出していく。
おお、やっとネッドも参加するかと思いきや・・・。
チーフスは反則オンパレードの暴力ではなくエロで優勝したというオチなのであるが、それは平和主義への提言であったのかもしれない。


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