おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

WATARIDORI

2023-06-25 07:42:09 | 映画
「WATARIDORI」 2001年 フランス


総監督 ジャック・ペラン
共同監督 ジャック・クルーゾ ミッシェル・デバストーリー

渡り鳥たちは北半球に春が訪れると、生まれ故郷の北極を目指して飛び立つ。
北極は、世界中からやって来る鳥たちにとっての楽園。
彼らの繁殖は、なぜかこの地でしか行なわれないのだ。
そんな春の北極へ向けてほとんど休まずに飛び続ける鳥もいれば、宿泊地を定めながら向かう鳥、親鳥からはぐれて独りで見知らぬルートを羽ばたいて行く幼い鳥もいる。
彼らは北半球が新しい春を迎えるたびに、苦難を乗り越えながら数千キロにも及ぶ果てしない空の道を辿って“必ず戻ってくる”のだった……。


寸評
鳥が飛んでいる以外に何もない映画だが、ナレーションが一杯でないのもいいし、鳥の習性や天敵とのバトルを描いて興味を引いていない所もいいし、何よりも鳥たちに対して自然体なのがいい作品だ。
カメラは鳥と共に飛び、すぐ横を飛んでいるような映像に驚嘆するが、それは万国博覧会のサントリー館で見ていたものでもあるのだが撮影対象と撮影時間が比較にならず臨場感たっぷりである。

ニューヨークのハドソン川からは自由の女神が見え、パリのセーヌ川をとぶときはエッフェル塔が見える。
砂漠に燃える太陽、夕焼けの海をかすめていく鳥のシルエットが美しい。
シベリアのツンドラでは、長い首と首をからめてのけぞる優雅かつエロチックなツルが撮られている。
大きな羽、力強い背筋、肉感的な胴部、美しい編隊を組んでとぶオオハクチョウの飛翔する姿は、あるときはダイナミック、あるときはエレガントでもある。

渡り鳥たちは太陽と星を目印に移動し、地球の磁場を感知できるらしいのでコースと目的地を絶対に間違わないということであり、その飛行距離は驚異的である。
カオジロガン2500キロ(西ヨーロッパからグリーンランド)。
オオハクチョウ3000キロ(極東からシベリアのツンドラ)。
インドガン2500キロ(ガンジス一帯から中央アジアステップ地帯)。
タンチョウヅル1000キロ(日本からシベリアのタイガ地帯)。
ハクトウワシ3000キロ(アメリカ西部からアラスカ)。
カナダガン3500キロ(メキシコ湾から北極圏)、ハクガン4000キロ(同)。
カナダヅル3500キロ(アメリカ大草原から北極圏)。
キョクアザサシは北極から南極へ地球を半周して2万キロを飛ぶ。

噴煙をあげる工業地帯を飛んだかと思えば、道路わきの廃車のラジエターから湧き出た廃水で水浴びする鳥たちのすぐそばをトラクターが通る。
過酷な旅を続けていることが分かり、数百万羽の鳥のなかには、たどりつけなかった鳥もいるのは当然だ。
羽が折れて飛び立てず、その弱った身体を狙ってカニが追い続け、やがてむらがるカニに生きたまま食いつくされるという残酷な場面もある。
カニは鳥についばまれる生き物だというイメージがあるが、ここではカニが鳥を襲っているので驚いた。

季節は再び春になり鳥たちが戻ってくるのだが、冒頭で登場した小川のほとりの少年も再び登場する。
とびたつガンの群れのなかで、網にからまった鳥が一羽いて、少年は鳥を救い出してやったのだが、網の一部が巻き付いたまま飛び立ったガンが、ヨレヨレになったヒモを脚につけたまま帰ってくる。
ラストを飾るこのシーンだけは演出を感じさせた。
僕はドキュメンタリー映画は好きな方ではないのだが、これは映像でもって見せるところがあり鑑賞に堪える作品だった。
ジャック・ペランは俳優よりもプロデューサーとしての能力が勝っている人かもしれない。


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