おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

クリムゾン・タイド

2022-06-18 09:09:18 | 映画
「クリムゾン・タイド」 1995年 アメリカ


監督 トニー・スコット
出演 デンゼル・ワシントン
   ジーン・ハックマン
   ジョージ・ズンザ
   ヴィゴ・モーテンセン
   ジェームズ・ガンドルフィーニ
   マット・クレイヴン

ストーリー
ロシアで超国家主義者のウラジーミル・ラドチェンコが率いる反乱が勃発した。
ラドチェンコの反乱軍は大陸間弾道ミサイルの基地を占拠し、ロシア正規軍に包囲されながらも、アメリカと日本に対して自らの要求が認められなければ核攻撃を行うと脅迫する。
アメリカ海軍のエリート黒人士官ハンター少佐は軍に召集され、オハイオ級原子力潜水艦「アラバマ」に副長として乗艦することを命じられる。
アラバマの艦長で、たたき上げのベテラン士官のラムジー大佐は、ハンターがアフリカ系でありながらハーバード大学卒であること揶揄しつつも彼を歓迎した。
アラバマ乗艦を前に、ラムジーは整列した部下たちを前に、自分たちの任務の重大さについて語り、最善の努力をするよう要求し、さらにラムジーはこの艦に乗る者は自分の指示に従うよう改めて言い聞かせる。
航海3日後、厨房で火災が発生し、ハンターたちが必死に対応している中で兵器システムの演習指令が行われたが、火災で負傷した乗組員が心停止したことでラムジーは演習の中止を命令。
その乗組員は死亡し、ハンターはラムジーに対してあの演習は誤りだったと告げたが、ラムジーはそういう時こそ演習をするべきだと言い返す。
歴戦の叩き上げのラムジー艦長と、ハンター副官は、核に対する思想でも真っ向から対立する。
目的海域に達し、敵潜水艦の影を捉えたアラバマは臨戦体制に突入。
ペンタゴン(米国防総省)からの通信が入ったその時、敵の魚雷攻撃が艦をかすめて爆発した。
通信は途中で途切れ、ミサイルの発射か中止か、はっきりしない。
即時攻撃を主張するラムジーに対し、ハンターは命令の再確認を強く求める。
艦内に異常な緊張がみなぎり、艦長への忠誠心か副官のモラルに与するか、乗組員たちも激しく揺れる。
ハンターはラムジーの命令を服務違反として指揮権を剥奪、彼とその一派の将校たちを監禁した。


寸評
絵空事のような話だが、実際にキューバ危機の時にソ連の原潜で同じことが起きていたのだ。
その事が明るみに出たのはこの映画が撮られてからのことだから、本作はそのようなことが起きる可能性があることを予見していたことになる。
キューバ危機の時も、米軍の攻撃を受け深く潜航したソ連の原潜が通信不可となり、地上での米ソ戦が開始されているかどうかわからなくなった。
二人が命令を受けていた核攻撃を主張したが、人望ある一人がクレムリンへの確認を主張し開戦が回避されたことを知ったということである。
状況は本作で描かれた内容と同じことだったのだ。

アメリカ映画らしい。
ラムジー大佐が出撃前に雨の中で乗組員に檄を飛ばす内容などは正にアメリカと感じさせる。
ラストシーンに至る描き方なども正にアメリカ映画だ。
ちょっとした手違いで核戦争が勃発してしまう怖さを描いてはいるが、一触即発の緊迫感には乏しい。
原因はラムジー艦長の主張の弱さにある。
本国からの第一報は核攻撃の指示であったが、第二報が途中で切れてしまい指示内容が不明となってしまう。
ラムジー艦長は第二報が不明の為、第一報を正式命令とし核攻撃を開始しようとする。
核戦争を開始するなどという重大局面では当然内容確認するものであろう。
一般社会人であっても上層部からの指示通信が途中で切れたら、確認の電話を必ずするものだと思う。
ラムジー艦長の正当性を高めるために、脚本的に二つのことを用意している。
一つは広島、長崎への原爆投下を正当化していることだ。
戦争を早く終わらせるための投下だったと言うのがアメリカの言い分となっている。
ここでも核を積んだミサイルの発射を正当化するためのシーンとしているのだろう。
日本人の僕はこのシーンには不快感を持った、
今一つは、反乱軍のミサイル発射までの時間が切られていて、相手が発射する前に先制攻撃をしなけれがならないと言う状況を設定していることである。
しかしながら、先制攻撃をしなければならないことへの説明不足と、タイムリミットの緊迫感に乏しいのは脚本不足ではなかったかと感じる。
そもそも1分違いで先に撃つことにどのような意味があるのだろう。
映画の中でも敵の原潜に魚雷を命中させて喜んだのもつかの間、命中する前に発射された敵の魚雷攻撃を受け被害を出していたではないか。
燃料注入している事が分かっているなら、核攻撃などせずにミサイル基地を攻撃できるはずだ。
それではロシアとの全面戦争が起きてしまうということなのか。
デンゼル・ワシントンはシドニー・ポアチエ以来の理知的で美形の黒人俳優でこの役にはうってつけだったが、如何せんそのキャラクターは生かし切れていないように感じる。
潜水艦を描いた作品として、作中で「眼下の敵」が語られたりしていて面白いのだが、今一歩踏み込み不足感があるように感じるところがあり惜しい。


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