おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

クリスタル殺人事件

2022-06-17 08:11:09 | 映画
「クリスタル殺人事件」 1980年 イギリス


監督 ガイ・ハミルトン
出演 アンジェラ・ランズベリー
   ジェラルディン・チャップリン
   トニー・カーティス
   エドワード・フォックス
   ロック・ハドソン
   キム・ノヴァク

ストーリー
老婦人のミス・ジェーン・マーブルはセント・メアリー・ミードに住む推理好きで有名な人気者だ。
この町では今、映画『スコットランドの女王メアリー』の撮影が行なわれており、スクリーンを遠ざかっていた往年のスター、マリーナ・クレッグが主演のため、夫で監督のジェースン・ラッドと共に長期滞在を予定している。
町中あげての歓迎パーティでホステスを勧めるマリーナのもとに様々な人々がやってくる。
婦人会のヘザー・バブコックもそんな一人で、彼女は、昔からのマリーナのファンで以前一度会ったことがある、ということなどを、一方的にしゃべりまくった。
そのころ、製作者マーティと共に主演女優でライバルのローラが到着し、マリーナのいる二階に姿を現した。
彼女を見て一瞬顔をこわばらせるマリーナ。
その直後、ヘザーが死んだ。
彼女の死はたちまち町中にひろがり、チェリーの口を通じてミス・マーブルの耳にもとどいた。
チェリーは、パーティの手伝いに行っていて、会場の様子を詳しく知っていたのだ。
やがて事件解明のためスコットランド・ヤードの警部でマーブルの甥のクラドックが派遣され、ヘザーの死がカクテルに盛られた毒物によるものであることをマーブルに知らせにくる。
しかも、そのカクテルは、マリーナが飲む予定だったものだ。
捜査が難行しているころ撮影現場ではマリーナとローラが火花を散らせていた。
やがて秘書エラが用意したマリーナのコーヒーから再び毒物が発見された。
その件で容疑が深まったエラが、常用していた鼻炎用の吸入器に仕込まれた毒で殺された。
テリーが語った、マリーナの表情が一瞬氷のように変化した、という言葉を考え続けていたマーブルは、その時ヘザーがマリーナに何を語ったのかを調べたところ、その内容はヘザーがマリーナの舞台を見て感激し舞台裏で彼女に思わずキスしてしまったというものだった。


寸評
往年の大女優が久しぶりに映画出演するというのでロケ地である町あげての歓迎パーティが催されている所から映画はスタートする。
往年の大女優マリーナ・グレッグを演じているのが文字通りの大女優エリザベス・テイラーで、かなり体格的にも貫録が出てきている。
マリーナ・グレッグのライバル女優ローラ・ブルースターを演じているのが キム・ノヴァクで、これまた懐かしい名前である。
それぞれの夫を演じているのが ロック・ハドソンとトニー・カーチスときては往年の大スターが集合したと言う感じ。
始まってすぐに事件が発生するが、その事件とは犯人がマリーナ・グレッグ殺害を企てたところ、ふとしたことからパーティに参加していたヘザー・バブコックが殺されてしまったというものである。
犯人は誰か?
この時点で主要登場人物は両女優と二人の夫、そしてグレッグの夫であるジェイソン・ラッドの助手を務めているエラ・ジリンスキー(ジェラルディン・チャップリン)の5人であるから、よほどのことがない限りこの中に犯人がいるというのはサスペンス映画を見ている者ならすぐに想像がつく。
そして一番怪しい人物も何となくわかって来るし、その動機もなんとなく想像がつく。
それが推理映画の定石とでもいうように、観客はそこに導かれていく。
そして、これまた定石と言うべきか、その予想は見事に裏切られる。
しかし一連の流れに緊迫感が生まれてこないのは、犯人が追い詰められて第2の殺人を犯すというくだりの描き方が弱いためだと思う。
最後には、「ああ、そいうことだったのか」と観客を驚かす結末を用意しているのだが、驚きよりも僕はロマンチックなものを感じてしまった。

事件を解決するのは推理好きなミス・マープル(アンジェラ・ランズベリー)なのだが、ミス・マープルの甥でロンドン警察の主任警部ダーモット・クラドック(エドワード・フォックス)の関係が微笑ましくて楽しい。
警部は無能ではないが伯母さんのアドバイスばかりをもらっていて、映画ファンらしくてやたらと映画作品に詳しい
のだ。
それを補足するかの如く作中で楽屋落ち的にハリウッド映画界のことが実名で語られている。
クラーク・ゲーブルの名前が挙がっていたし、監督をジョージ・キューカーにやらせればよかったとかも語られていたような気がする。
途中でプロデューサーでもあるローラの夫マーティ・N・フィンが西海岸に電話を依頼すると、どこの西海岸だと言われるシーンがある。
当然ハリウッドのことを指していると思うし、マーティ・N・フィンはハリウッドのプロデューサーということになっているから不自然ではないのだが、これがイギリス制作なのでハリウッドに対するイギリス流のジョークではなかったかと思った次第。
あまりいい出来とは言えないが、大物が出演していることで何とか体裁を保った作品のように思う。



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2 コメント

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「クリスタル殺人事件」について (風早真希)
2023-07-14 09:57:20
「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」で、アガサ・クリスティー原作のミステリーを、豪華キャストで映画化すれば大ヒット間違いなしというやり方が定着したのか、その第3弾がこの「クリスタル殺人事件」。

しかし、それにしても何とセンスのない邦題なのか。
本当に安っぽい題名になっています。
時流に便乗というか何というか、アガサ・クリスティーを愛する一ファンとしては、苦情を言わずにはいられない気持ちになります。

これでは、原作の邦訳名の「鏡は横にひび割れて」のほうが、どれだけいいかわかりません。
いつもセンスの良い、素敵な邦題を付けていた東宝東和とも思えぬ、"悪題"ですね。

それはともかく、今までの2本がエルキュール・ポアロ物だったのに対して、今度の作品はアガサ・クリスティーのミステリーを代表するもう一人の名探偵、ミス・マープルの登場です。

セント・メアリー・ミードという英国の小さな田舎町から一歩も出たことがないという老嬢ミス・マープルが、その鋭い"人間観察"を通して事件を鮮やかに解決していきます。

その平和な田舎町へ、映画のロケ隊がやって来て、もう、てんやわんやの大騒ぎ。
そして、その歓迎パーティの席上で殺人が起きてしまいます。

この映画を原作を未読の人が見たら、どう思うのでしょうか?
原作をそれこそ深く知っている私としては、その辺の判断がつきません。

しかし、往年の人気スターを集めて、この田舎町へ乗り込ませたアイディアは実に楽しい。
エリザベス・テイラー、キム・ノヴァク、ロック・ハドソン、トニー・カーティス。

この顔ぶれを観ていると、リズとロック・ハドソンは「ジャイアンツ」で夫婦役で共演していたなとか、キム・ノヴァクはヒッチコック監督の「めまい」で妖艶な魅力があったなとか、トニー・カーティスはジャック・レモンとのコンビでの「お熱いのがお好き」での女装がなかなか良かったなとか、様々な映画の思い出が走馬燈のように、次々と脳裏をよぎってしまいます。

かつての美男美女が、今やどこかうさんくさい、一癖ありそうな風貌となって、いかにも誰もが犯人らしく見えてくるから愉快です。
それから、忘れてはならない女優として、ジェラルディン・チャップリンが秘書役でなかなか好演しています。

そして、肝心の主人公のミス・マープルはアンジェラ・ランズベリー。
エルキュール・ポアロのアルバート・フィニー、ピーター・ユスティノフもそうですが、こういうよく親しまれた名探偵というのは、誰もが自分なりのイメージを持っていますから、どうしても違和感があるのはやむを得ないことだと思います。
私個人の好みとしては、エルキュール・ポアロは断然、アルバート・フィニーが良かったですね。

芸達者なアンジェラ・ランズベリーですから、決してミス・キャストではなく、好演していると思いますが、私のイメージから言えば、多少派手すぎる感じがしないでもありません。

この映画の舞台となるセント・メアリー・ミードの村は、よく雰囲気を出して作られていて、名手クリストファー・チャリスのカメラも実に美しい。

ただ、監督が007シリーズのガイ・ハミルトンというのが観る前に気になっていて、その不安はどうも半ば的中してしまいました。
英国ミステリーの、生活感のあるムードがどうにも出て来ないのです。

そして上映時間が1時間45分というのも、はっきり言って短かすぎると思います。
ここはやはり、2時間以上かけて、じっくりと描き込んでもらいたかった。
大体、アガサ・クリスティーの作品は、世界中でかなりよく知られているのですから、話がわかっている観客をも、楽しませるように作ってくれなくては困るのです。

せっかく、お金をかけ、豪華な役者も集めたのに、何ともったいないことかと、つくづく思います。
確かに、顔ぶれの楽しさ、原作の骨組みの確かさで見せてくれますが、アガサ・クリスティーの大ファンとしては、文句なしに面白かったと言えないのが残念です。
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出演料は? (館長)
2023-07-15 13:11:01
これだけの人を集めると出演料はどれほどになったのでしょう?
内容より、それが気になる作品でした。
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