おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

日本の熱い日々 謀殺・下山事件

2021-08-16 06:39:40 | 映画
「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」 1981年 日本


監督 熊井
出演 仲代達矢 山本圭 隆大介
   井川比佐志 平幹二朗 浅茅陽子
   中谷一郎 岩崎加根子 橋本功

ストーリー
昭和24年7月、敗戦後の騒然とした雰囲気の中で労働運動は大きく高揚していた。
昭和日報の社会部記者・矢代は、上野に集結するシベリヤからの復員兵たちの集会を取材していたが、その時、下山国鉄総裁の行方不明を知らされた。
翌朝、下山の死体が発見されると、政府は他殺説の立場をとり、各新聞は自殺説と他殺説に分かれた。
この中で昭和日報は、他殺の線ですすめるべく、矢代に東大法医学研究室を取材させた。
矢代は遺体解剖を行なった和島博士の「死体轢断の鑑定は絶対に間違いない」という言葉で他殺説に自信を持つが、一方、事件現場近くで下山の姿を見たという証言者が現われたり、東大鑑定に対する慶応の異論も出て、自殺説がクローズアップされてきた。
しかし矢代は他殺の臭いを執拗に追い続け、東大研究室に通い続けるうちに、轢断現場近くに、下山の死体を運んだ時についたと思われる血痕を自らの手で発見する。
この発見と前後して無人電車の暴走という「三鷹事件」が発生。
矢代の背後に黒い妨害の手が現われ、ホームから突き落とされ、電車に轢かれそうになる。
事件から一ヵ月後、警視庁が自殺を発表することになったが、突然、その発表は中止された。
その二週間後、何者かによってレールがはずされ列車が転覆するという「松川事件」が起こり、政府はこれを利用して労働組合、左翼への弾圧を一層強め、やがて五年、十年と時間が走り過ぎていった。
そんな時、矢代は死体を現場で運んだらしいという男・丸山の存在を知った。
ある日、丸山は駅のホームから転落死してしまった。
事故死なのか、誰かに突き落とされたのか……。


寸評
1949年は僕が生まれた年なのだが、この年に下山事件、三鷹事件、松川事件という「国鉄三大ミステリー事件」が発生している。
翌年には朝鮮戦争が勃発しているから、第二次世界大戦が終わったとはいえ世の中はまだまだ戦後処理で混とんとしていた時代だったのだろう。
当然僕はそのような社会の混乱は知らないし、記憶にあるはずはない。
日本が連合国の占領下にあった1949年7月5日の朝、国鉄総裁・下山定則が出勤途中に行方不明となり、翌7月6日未明に常磐線綾瀬駅付近の線路上で轢死体となって発見された事件が下山事件で、映画はその事件の闇を描いている。
事件当時の国鉄では占領政策によって大規模な労働者の解雇が予定されており、連日の労働争議が起きていたのだが、下山国鉄総裁の死が自殺にせよ他殺にせよ、この事件によって国鉄の労働争議が水を差され、大量解雇が容易に行われたのは事実だと思う。
下山総裁の死を喜んだ人間は大勢居たようにも推測する。

映画は2時間以上あるのだが、警察の事件捜査は始まってから1時間ほどで終わってしまう。
しかし、主人公である昭和日報の新聞記者・矢代はこの事件にこだわり続け、たとえ記事にできないとしても事件の真相を知りたいと事件を追う。
それまでの捜査や証拠調べで、下山総裁が何者かに誘拐されて殺されたことが示される。
自殺に見せるために総裁の替え玉が存在していたらしいことや、捜査にGHQから大きな圧力がかかっていたことも明らかにされていく。
事件の背後には何か大きな力が働いていたような描き方が続く。
映画から受ける印象は、どこまでが事実でどこからがフィクションなのかさっぱりわからなくなってくる。
結局、事件の黒幕が誰なのかわからないで終わっている。
実際にそのような事件だったのだろう。

映画の中では昭和24年から昭和39年までが描かれているが、その時代の変化をニュース映像に加えて、登場人物たちの服装やセットの違いで見せているのは細やかだ。
事件自体がミステリーだから、映画は自然とミステリータッチになっているのだが、熊井啓としてはミステリー作品として撮りたかったのではないだろう。
日本が厚く燃え上がっていた時に、政治的な圧力で世の中を押さえていったと思われる事件を描くことで、今においてもそのようなことが行われているのかもしれないと言う警告を発しているのだろう。
一方で、国鉄が民営化されて毎年のように行われていた鉄道のストライキはなくなったし、国会前の安保反対大規模デモのような政治的発言も少なくなったように思う。
平和ボケしてしまったのか、国民の政治的発言や行動は影をひそめてしまって、その事が政治家の劣化、ひいては政治の劣化を招いているような気もする。
オリンピックの開会式の日にラストシーンを迎えるので、余計にそのように感じる。
やがて日本は高度成長期を迎え、人々は働きバチと化していったと思う。


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2 コメント

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困ったものです (FUMIO SASHIDA)
2021-08-22 08:12:19
これは、下山事件を他殺説としていますが、私は自殺だと思う。
なぜ他殺説があるのかと言えば、当時国鉄総裁のような「偉い人」がノイローゼで自殺などしないという思い込みがあった性だと思う。
今日では、雅子様のようにどんな人でもノイローゼになることは皆知っていますが。
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国鉄時代は (館長)
2021-08-23 07:41:00
JRになっても脱線事故などが起きていますが、国鉄時代は事件に分類される出来事やスト騒ぎが頻発していましたが、ゼネストは今や死語ですね。
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