おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

男はつらいよ 柴又慕情

2024-04-26 07:26:11 | 映画
「男はつらいよ 柴又慕情」 1972年 日本


監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 吉永小百合 松村達雄 三崎千恵子
   前田吟 太宰久雄 中村はやと 笠智衆 津坂匡章
   桂伸治 佐山俊二 吉田義夫 宮口精二 佐藤蛾次郎

ストーリー
“フーテンの寅”こと車寅次郎(渥美清)が、初夏を迎えた東京は葛飾柴又に久しぶりに帰って来た。
ところがおじ夫婦(松村達雄、三崎千恵子)は寅の部屋を貸間にしようと「貸間あり」の札を出していたからびっくり仰天し、札を見た寅は捨てゼリフを残して出て行ってしまい寅の下宿探しが始まった。
手前勝手な条件ばかり言う寅を不動産屋は相手にせず、やっと三軒目の不動産屋(佐山俊二)に案内されたのがなんと「とらや」で、その上、不動産屋は手数料を要求する始末。
払う気のない寅と不動産屋との間が険悪になりそうになったが、博(前田吟)が仲に入り手数料を払った。
今度はそのことで、寅はおじ夫婦とも喧嘩になり、果ては建築中のさくら夫婦の家にケチをつけさくら(倍賞千恵子)を泣かせてしまい、居づらくなった寅は、また旅に出ることにした。
最初に行った金沢で寅は、久し振りに弟分登(津坂匡章)と再会した。
翌日、登と別れた寅は、三人の娘たちと知り合った。
歌子(吉永小百合)、マリ(泉洋子)、みどり(高橋基子)というこの娘たちを寅は何故か気に入り、商売そっちのけで御馳走したり、土産を買ってやったり、小遣いをやったりする始末。
やがて、三人と別れた後、急に寂しくなった寅は柴又に帰ることにした。
寅は柴又・帝釈天の境内でみどりとマリに再会した。
翌日には、みどりに聞いた歌子がひとりで寅を訪ねて来て想い出話に花を咲かせる。
それ以来、たびたび歌子は遊びに来るようになり、寅は歌子に熱を上げ始めた。
ところが歌子は、小説家の父(宮口精二)と二人暮しで、好きな青年との結婚と、父との板挟みで悩んでいたのである。


寸評
「男はつらいよシリーズ」は毎回寅さんが思いを寄せる女性が登場し、そのマドンナ役を誰が務めるかが注目を集めたシリーズでもあった。
マドンナ役は第一作の光本幸子から佐藤オリエ、新珠三千代、栗原小巻、長山藍子、若尾文子、榊原るみ、池内淳子と続いてきて、マドンナ役の人気投票を行ったところ吉永小百合が1位となり彼女を迎えた第9作である。
吉永小百合の為の「男はつらいよ」となっており、僕は内容的には深いものがあると思えないでいる。
娘が父親を心配して結婚をためらう話は、松竹の大先輩である小津安二郎が好んだテーマでもある。
山田洋次には小津へのオマージュがあったのかもしれない。
冒頭で寅次郎が夢を見ているシーンがあり、夢の中で登場する寅さんは長い爪楊枝をくわえている。
これは当時人気を誇ったテレビ映画の「木枯し紋次郎」を意識したものだろう。
また寅さんは度々レコード大賞受賞曲の「いつでも夢を」の一節を口ずさんでいるが、これも受賞者である吉永小百合を意識したものであることは明らかで、一種のサービスとなっている。

寅さんが歌子のことで明るくなっていくと、おいちゃん、おばちゃん、さくら、博が落ち込んでいく姿が面白い。
歌子にぞっこんの寅さんなのだが、歌子と二人きりになると無口になってしまう。
大好きな女性を前にすると、それも飛び切りの美人であれば、寅さんならずとも無口になってしまうのは分かるような気がする。
寅さんは旅先で歌子たちと親しくなり、それがきっかけで歌子はとらやにいる寅さんの元を度々訪ねるようになる。
寅さんは訪ねてくる歌子を待ちわびるだけで、特別歌子に対して世話を焼いてやっているわけではない。
結局この回では博が貴子に語る内容がテーマだったように思う。
それを寅さんに語らせることによって、貴子が決心をして寅さんから離れていく方が、寅さんに対する悲劇性は高まっていたように思う。

寅さんが歌子と親しくなったのは旅先での写真撮影によってである。
そこでの記念撮影で、にっこり笑うポーズの時にバターと言ってしまい大笑いとなるのだが、これはかつて御前様がやったギャグである。
その事で女性三人は笑いこげるのだが、僕にはその演技がわざとらしく見えた。
僕に不自然と思われたそのシーンは、結局吉永小百合を可愛らしく見せるためだったように思え、第9作は吉永小百合を際立たせるための企画だったように思えるのだ。
もっとも、それが狙いなら目的は十分に果たされていたようには思える。

今回はおいちゃんが松村達雄に代わっている。
松村達雄はおいちゃんとしての存在感は示しているが、渥美清の寅さんとの掛け合いにおいてはやはり先代の森川信に一日の長があったと思う。
「バカだねえ~」のセリフが消えていないのだ。
おいちゃん宅を歌子の父親である宮口精二が訪ねてくる。
歌子が世話になった礼に訪れたのだろうが、父親の娘に対する愛情は感じ取れなかった。
満男をあやす姿に、歌子の子供を抱きあげたい気持ちが凝縮されていたのだろうか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿