おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

グッドモーニング,ベトナム

2021-01-17 11:25:37 | 映画
「グッドモーニング,ベトナム」 1987年 アメリカ


監督 バリー・レヴィンソン
出演 ロビン・ウィリアムズ
   フォレスト・ウィテカー
   チンタラー・スカパット
   ブルーノ・カービイ
   ロバート・ウール
   J・T・ウォルシュ

ストーリー
1965年、北爆を開始した米軍は一層深い“ベトナム戦争”の泥沼にふみ込んでしまった。
米軍将兵たちのなかにこの目的なき戦いに対しての厭戦気分が蔓延し始めていた。
彼らの士気を高めようと、テイラー将軍は、本国から米軍放送の人気ディスクジョッキー、エイドリアン・クロンナウアーを呼び寄せた。
酷暑のサイゴン空港に降り立ったクロンナウアーは武器を持たず、いたってラフな格好であった。
軍服も敬礼さえも好きでないというこの一等兵DJに、迎えに来たガーリック一等兵はびっくりさせられた。
更に驚いたことに、サイゴンの街に出るや通りがかりのベトナムの美少女トリンを追いかけ始めた。
しかし何よりも驚いたのは「グッドモーニング・ベトナム!」の叫び声で始まる放送であった。
従来の、軍の検閲をパスした気抜けしたニュースとパーシー・フェイスやマントバーニといった、ただ甘いだけの音楽とは打って変わり、ロックンロールと機関銃のようなしゃべりでニクソンまでもまな板に乗せてしまった。
軍の上層部は動転したが100万のベトナム米軍は絶大な拍手をもって彼を迎えた。
直属の上司であるディカーソン軍曹とホーク少尉には睨まれ通し。
そんななかでも、ガーリックを連れてトリンを追いかけ、彼女の通う英語学校で妙な英語を教えて人気者になり、いつしかトリンの兄ツアンと親しくなった。
ベトコンのテロ事件は軍のチェックで放送禁止であったが、ある日目の前で起こった爆弾テロ事件をしゃべってしまい、軍規によって彼は降ろされた。
後を継いだホーク少尉のDJは最低で、津波のような投書が寄せられた。
再びマイクに向かった彼を許せぬディカーソンは彼とガーリックをベトコン地区に派遣して殺させようとした。


寸評
ベトナム戦争の米軍基地で軍の検閲を無視したハイテンションDJを繰り広げるエイドリアン・クロンナウアの役どころを演じたロビン・ウィリアムズの存在がこの映画の全てだ。
アメリカン・ジョークが肌に合わないのか、クロンナウアのDJは勢いの面白さは伝わって来るのだが、僕の英語力のなさの為、字幕を読むのが精一杯で、米兵に大うけする真の面白さを感じ取れなかったのが残念。

相棒ともいえるガーリックに基地に連れ戻されるクロンナウアは、泥沼となっていくベトナム戦争の前線に向かう兵士たちを乗せたトラックとすれ違い、人気DJその人と知った兵士の求めに応じてその場で即興のDJを行い、そこにいる兵士の何人かをネタに笑いをふりまく。
ほんのひと時の安らぎを得て戦場にむかっていく兵士を見送るクロンナウア。
マシンガントークが続く中にあってシンミリとさせる感動的シーンで、僕は泣けた。

戦争映画に付きものの大量火薬を使ったシーンはわずかにレストランの爆破テロぐらいで、爆撃シーンは登場しないのだが、それでもサッチモことルイ・アームストロングの唄う“what a wonderful world”を背景に挿入されるベトナム戦争の風景はあまりにも悲しい。
悲惨なシーンに正反対の音楽をつける事で複雑な感情を生み出す演出技法だ。
声高に戦争反対を叫んでいる作品ではないが、アメリカによる他国への一方的な価値観の押し売りをゆるやかに批判している部分がある。
ベトコンと友達だったことが理由で名誉除隊扱いで本国に送還されることになったクロンナウアは、ツアンがベトコンだったことが信じらず、ベトナムの美人少女のトリンを通じてツアンと会い真相を知ろうとする。
そしてベトナム人のもつ反米感情も知ることになる。
アメリカの正義は、正義を押し付けられる側から見れば侵略に他ならないのだ。
戦時中には正しい情報は提供されず、戦争を遂行する者にとって都合の良い情報のみが提供される欺瞞も描かれている。
声高ではないが権力批判の反戦映画には違いない。

それでもわずかな希望を描くのがラストシーンだ。
送還されるクロンナウアは空港まで送ってくれる相棒ともいえるガーリック達を交え、英語学校のベトナム人とソフトボールに興じる。
果物をボールに見立てたものだが、そこはアメリカ人もベトナム人もない平和な世界だ。
そこにはクロンナウアを受け入れてくれる人々の笑顔があったという、ちょっとアメリカよりな描き方だが、心温まるシーンとなっている。
クロンナウアはサイゴンを去って行き、翌日の放送室のマイクの前にはガーリック一等兵が座っている。
放送開始と同時に彼は叫ぶ。
「グウウウウウッド、モオオオオオオニング、ヴィイエットナムウウウ!」
ノリはクロンナウアほどではないが、クロンナウアの魂を引き継いだ一声だったと思う。


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