おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ぼくのエリ 200歳の少女

2024-07-16 07:03:43 | 映画
「ぼくのエリ 200歳の少女」    2008年 スウェーデン 

    
監督 トーマス・アルフレッドソン                            
出演 カーレ・ヘーデブラント リーナ・レアンデション
   ペール・ラグナー

ストーリー
ストックホルム郊外の小さな町。
集合住宅に母親と2人で暮らす12歳の少年オスカー。
同級生のイジメに苦しみながらも、誰にも助けを求めることが出来ず、ただ復讐を夢想してはじっと堪え忍ぶ日々。
そんなある晩、彼はひとりの謎めいた少女と出会う。
彼女は、オスカーの家の隣に父親と引越ししてきたばかりの少女エリ。
やがて、同じ12歳だという彼女と毎晩のよう毎晩のように中庭で顔を合わせ、寝室の壁越しにモールス信号を送り合うようになる。
自分よりも大人びた彼女に次第に心惹かれていくオスカー。
その頃、町ではおぞましい殺人事件をはじめ奇妙な出来事が立て続けに起こり、住民の間に不安が広がっていた。
そんな中、エリが少女の姿のまま200年も生きているヴァンパイアだという衝撃の事実を知ってしまうオスカーだったが…。


寸評
単なるヴァンパイア映画でなく、底辺にイジメの問題が横たわっていて、さらには孤独な少年と彼の心が分からない大人との断絶、そして少年と少女の淡い恋などが描かれ奥深い。
最初はイジメにあうオスカーが描かれ、たいていの場合がそうであるように、オスカーもその事実を母親にはひた隠す。
しかし自身はいつかやっつけてやりたい気持ちが有り、屈折した毎日を送っていることが描かれる。
そしてエリ親子が引っ越してきて、やがてエリに強く出ることをけしかけられる。
ルービックキューブを通じて親しくなった二人だが、やがてオスカーはエリの秘密を知ってしまう。
その場面のエリがオスカーの血を見てお腹をゴロゴロ鳴らすあたりの描写は面白い。
そして、とまどいつつも完全にエリを拒否できないオスカーの様子が少年の少女に対する気持ちをうまく表現していて微笑ましくもある。
血を吸わずには生きていけないエリと、それを知ってもどうすることもできないオスカーの2人の切なさや哀しさが伝わってくる。
スウェーデンの雪に覆われた冷たい風景が詩情あふれる世界を生み出し、ヴァンパイア映画ではあるが、グロテスクな描写はあるもののメルヘンチックですらある。
唐突に思えるラストも、孤独な2人が行き着く先に思いをはせれば納得出来るのだが、その余韻は僕に次のような空想をもたらした。
エリは歳を取らないがオスカーは成長していく。
エリはその間もオスカーを見守るが、やがて成人したオスカーはエリに物足りなさを感じ新たな恋人が出来る。
エリは彼女に嫉妬しヴァンパイアの餌食とする。
絶望した彼はエリに襲いかかるが逆に噛みつかれて自らはヴァンパイアとなってしまう…。
その後の彼らを想像すると僕の中ではそんな展開となる。
この年2本の吸血鬼映画を見たのだが「渇き」よりは楽しめた。


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