おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

新宿泥棒日記

2022-09-18 07:54:42 | 映画
「新宿泥棒日記」 1969年 日本


監督 大島渚
出演 横尾忠則 横山リエ 田辺茂一 高橋鐡 佐藤慶 渡辺文雄
   戸浦六宏 唐十郎 麿赤兒 大久保鷹 四谷シモン 不破万作
   九頭登 藤原マキ 李礼仙

ストーリー
真夏の新宿で蒸し蒸しする雑踏の中から、突然「泥棒だ!」という声が起った。
捕った少年は、追手の前で素裸になり、ひらきなおった。
その有様を見ていた一人の学生が、紀伊国屋書店へ入ると、数冊の本を抜きとった。
その手首をしっかりとつかんだのは厳しい表情の女店員ウメ子(横山リエ)だった。
紀伊国屋書店の社長田辺氏(田辺茂一)は叱りもせず学生を許し、女店員は三度目までは大目にみるのだと笑った。
学生は再び、万引を宣言し、実行した。
ところが田辺氏は、岡ノ上鳥男(横尾忠則)という学生を許したばかりか金まで与えた。
それから、ウメ子もネグリジェを盗み、そして鳥男を挑発し、鳥男は彼女を抱いた。
しかし、鳥男との情事は彼女の想像とは違った空しいものだった。
その夜、ウメ子はスナックで暴れ、田辺氏が彼女をもらい下げに留置所を訪れた。
田辺氏は、二人を性科学の権威高橋氏(高橋鉄)のもとへ連れて行き、高橋氏は「人間の根元的な性」について語るのだった。
田辺氏はつづいて新宿のバーへ二人を案内し、そこにいた俳優の佐藤氏(佐藤慶)や渡辺氏(渡辺文雄)に紹介した。
両氏は、二人を料亭へ連れ、友人の戸浦氏(戸浦六宏)が女性を口説く様子を見せた。
その料亭では、お客のためにわざと「やらずの雨」を降らせたりしていたが、この作られた性の世界に二人は失望し、ますます虚しさを覚えるのだった。
その反動から、鳥男はウメ子に乱暴をした・・・。


寸評
さっぱり分からない。
これは見る映画ではなく、感じる映画である。
前衛的でもあるが時代性を感じさせる作品でもある。
容易に想像がついても実名を出さないのが日本映画で、大学ならば城西大学、新聞社なら毎朝新聞と言った具合なのだが、この作品においては紀伊国屋書店という実に現実的な書店が舞台の一つになっているし、創業者である田辺茂一も実名で登場する。
その他にも高橋鐡、佐藤慶、渡辺文雄、戸浦六宏などもドラマの中にそのままで登場していて、現実と虚構の世界が入り混じっているという演出がとられている。
感覚で見る映画なのでモノクロ画面が突如カラーになっても何故なのか考えることはない。
僕にはさっぱり分からないのだから、考えてもしようがないのだ。
それでも、この時代に生きた僕は何となく感じるものがあるが、そうでない人はおそらく受け付けないだろうと思う。

イラストレーターの横尾忠則は当時のある種の若者にとってカリスマ的存在であった。
役者ではないのでセリフはたどたどしいが、それがかえって妙にリアル感をだしている。
タイトルが出る前の冒頭で、長髪の唐十郎が飛び出してきて、路上で取り囲まれた男たちの前で裸になり、ふんどし一丁で腹を見せると、そこにバラの花の刺青があり、取り囲んでいた男たちがは逆立ちをする。
状況劇場によるパーフォーマンスである。
あの頃の僕には民芸や文学座などの劇団よりも、演劇実験室とでもいうべき唐十郎の「状況劇場」、寺山修司の「天井桟敷」のほうが馴染み深かった。
僕は社会人となって東京支店に出張した時に、支店のN君に案内されて夜の花園神社に行ったことがある。
ここに唐十郎の赤テントがあって、寺山修司と乱闘をやったんだと説明を受けた。
その唐十郎の舞台がドラマの中にたびたび映し込まれてくる。
そこだけを見ていれば面白いけれど、それが何の意味を持っているのかは分からない。
夜の街、どこかの酒場であるのか佐藤慶や渡辺文夫たちがセックス談義をやる。
相当酔ってそうだがその談義が面白い。
僕たちもあの頃、酒を酌み交わしながら下らぬことを話題にして真剣に議論したものだった。
僕たちがそうであったように、彼らの議論は延々と続く。
そのあと戸浦六宏が和服の女性と性行為に及ぶシーンがあるかと思えば、鳥男とウメ子が舞台の役者になったり、ウメ子が佐藤慶たちにレイプされたりするシーンもある。
紀伊国屋書店の本が積み上げられたところで、鳥男とウメ子が抱き合おうとしたら、田辺茂一がが止めたりするシーンもあり、見終った僕はどのシーンが先で、どのシーンが後だったのかさえ分からなくなっている。
ましてやウメ子は書店の店員だと名乗っているが偽者なのだ。
繰り返されることは幻想なのかフィクションなのかさっぱり分からない。
そして新宿騒乱事件と思われるようなシーンが出てきて、男が逮捕されるシーンで映画は突如終わる。
映写機の故障かと思われるような終わり方で、エンドクレジットもない。
あの頃は、人を喰ったようなこの様な作品が評価された時代でもあったのだ。


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