おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

銀座の恋の物語

2021-01-10 08:42:27 | 映画
「銀座の恋の物語」 1962年 日本


監督 蔵原惟繕
出演 石原裕次郎 浅丘ルリ子 ジェリー藤尾 江利チエミ
   和泉雅子 清水将夫 深江章喜 清川虹子 高品格
   河上信夫 三崎千恵子 南風洋子 牧村旬子

ストーリー
伴次郎(石原裕次郎 )はジャズ喫茶のピアノひきの宮本(ジェリー藤尾 )と一つ部屋を仕切って同居する絵かきで、「銀座屋」の針子秋山久子(浅丘ルリ子 )と愛しあっていた。
次郎と宮本は苦しい生活の中で助けあう仲で、次郎は久子の肖像画作成に没頭した。
一方宮本はバーテンたちの企みで、クラブをクビになってしまった。
次郎は久子と結婚するために信州の母のところへいくことになった。
田舎いきのため、次郎は今まで売ろうとしなかった久子の肖像画を画商の春山(清水将夫)に売り払った。
出発の日、新宿駅へ向かった久子は、横からとびだした車にはねられてしまった。
久子は事故現場から姿を消したままで、次郎にはやけ酒の日が続いた。
ある日宮本のピアノをひきあげにきた月賦屋を次郎と宮本は悪酔いが手伝って殴り、留置所にいれられた。
次郎と宮本が釈放されて帰ってみると、二人の家は消えてなくなり、「銀座屋建築用地」の立札。
宮本は憤り、次郎のとめるのもきかず、何処かへきえ去った。
幾週かがすぎ次郎は久し振りで宮本にあったが、彼は豪華なアパートに住み、久子の肖像画をもっていた。
宮本の部屋からでた次郎はデパートに流れる久子の声を耳にしたが、久子は記憶喪失症になっていた。
次郎は久子の記憶回復につとめ、二人の記憶がつながる肖像画を買いとりに、宮本の所へ行ったが彼は絵を手ばなさないといった。
その時電話がなり、宮本は蒼然と外へとび出していった。
彼は偽スコッチ製造の主犯だった。
宮本はひそかに久子をおとずれ、例の肖像画をおいて、そそくさとでていった。
数日後、春山堂で次郎の個展がひらかれ、“銀座の恋の物語”のメロディに久子の記憶は回復した。


寸評
カラオケなどで定番のデュエット曲として愛唱されている「銀座の恋の物語」は1961年の1月に公開された裕次郎主演の「街から街へつむじ風」の挿入歌として使用されて大ヒット曲となったものである。
本作で共演した浅丘ルリ子とのデュエットもあるが、本来はこの作品でジェリー藤尾の恋人であった樹理役の牧村旬子とのデュエット曲である。
このテーマ曲が効果的に使われていて、耳に馴染んでいる人にとってはメロディの一部が流れるだけでつい口ずさんでしまいそうになる。
古典的な和製恋愛映画と言えるが、プログラムピクチャとして撮られた割にはしっかりとした脚本だ。

主人公が画家を目指す青年とあって、浅丘ルリ子を描いた肖像画が重要な役割を担っている。
記憶喪失になった浅丘ルリ子が、記憶を取り戻すための小道具の一つとして描かれてもいるが、浅丘ルリ子が記憶喪失になる前に恋人のためにその絵の額縁を買い、石原裕次郎は恋人のためにその絵を売ってハンドバッグを買うというシーンを通じて、二人がそれぞれを想う気持ちを描写しつつ、小道具としての肖像画の重要性を観客に伝える役目を果たしている。
さらには冒頭で宮本の彼女である牧村旬子が部屋を訪れた時に「どうしてこの絵、額縁に入れないの?」とつぶやかせている念の入れようである。
そんな伏線はいたるところに張られていて、壊れたピアノの使い方も堂に入ったものだ。
後半に入って浅丘ルリ子の記憶喪失に焦点が当たってくると、小道具としてのピアノや肖像画、そして主題歌が輝きを増してきて、僕たちはムード歌謡の世界に引き込まれていく。

浅丘ルリ子が記憶を取り戻すのも、昔の劇的な出来事に巡り合ってすべてを思い出すといった単純なものではなく、二重にも三重にもひねりを聞かせている。
劇場のライトを浴びて交通事故を思い出すとか、肖像画で記憶を取り戻すとかになってもおかしくないが、それを最後まで引っ張っていき、観客をじらし続ける感があるのも効果的なものとなっている。
したがって、あるきっかけで記憶を取り戻す1分弱のサスペンス性は感動的だ。
二人がヒシと抱き合う感動的場面に、眼鏡をかけた道化役的な和泉雅子や清川虹子のお松さんでなくても思わず「ああ、よかった」と思ってしまう。
ラストシーンで二人が闊歩する銀座のショットも素晴らしいけれど、冒頭でのタイトルバックの人力車のショットも「無法松の一生」ほどではないが、なかなかいいシーンとなっている。
星ナオミの芸者を乗せて夜の銀座を走り抜ける石原裕次郎の姿は、この青年の性格描写を一瞬のうちに描いていたとは思うのだが、この人力車のアルバイトがまったく意味を持っていなかったのはおしい。
ラストシーンで、代わってあげたおじさんが二人を見つめるだけではちょっと寂しい気がした。

外国人とのハーフと思われるジェリー藤尾がいい味を出し、金がすべてと音楽家の道を諦めた自分への嫌悪感と、純粋な気持ちを持ち続ける石原裕次郎への嫉妬をうまく表現していた。
屋上でトランペットを吹く小島忠夫の青年をシルエット的に描くことで、夢を追うことの素晴らしさを強調していた。
裕次郎や牧村旬子の歌声は当然だが、婦人警官役として江利チエミの歌声が聞けるのも嬉しい。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
典子三部作です (FUMIO SASHIDA)
2021-02-14 20:07:14
これと『何か面白いことないか』『憎いアンちくしょう』は、典子三部作で、どれも素晴らしい。
是非、『憎いアンちくしょう』を見てください。
これは、文句をつけるところがどこにもありせん。

大阪での群衆のシーンもすごいが、博多の山笠は日本映画で初めて出てきたのだと思う。ここも巧みに合成しています。
当時、浅丘ルリ子は、運転ができず、このために免許を取ったそうです。
そして、
「あなたたちに、私たちの愛をケガせられたくありません」と言い切る芦川いづみの美しさ。

私は、個人的には今まで見てきた邦画洋画の中で、これが一番好きで感動した作品です。
返信する
憎いアンちくしょう (館長)
2021-02-15 05:58:20
私も『憎いアンちくしょう』はいいと思います。
石原裕次郎、浅丘ルリ子と芦川いづみ、小池朝雄のカップル対比が面白かったです。
返信する

コメントを投稿