おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

キング・コング

2021-01-09 15:23:32 | 映画
「キング・コング」 2005年 ニュージーランド / アメリカ


監督 ピーター・ジャクソン
出演 ナオミ・ワッツ
   エイドリアン・ブロディ
   ジャック・ブラック
   トーマス・クレッチマン
   コリン・ハンクス
   ジェイミー・ベル

ストーリー
1933年、大恐慌時代のニューヨーク。
売れない女優のアン・ダロウは芝居小屋が突然閉鎖になり路頭に迷う。
そんな彼女を救ったのは、出資者から見離された映画監督カール・デナム。
彼は幻の島へ行って冒険映画を撮ることに賭けていた。
最初は彼の誘いに抵抗を感じたアンだが、脚本が憧れのジャック・ドリスコルのものだと知り、承諾。
こうしてデナムは、助手のプレストンに命じ、主演男優のブルース・バクスターらスタッフと機材を3時間足らずで船に乗せ、急いで大西洋へと出航してき、唯一、本当の目的地をデナムから聞いていたエングルホーン船長は、危険を承知で南インド洋の海域に近づいていった。
そしてデナムが探し求めていた髑髏島に辿り着いた。
上陸したクルーは、原住民たちの攻撃に遭って数名が命を落とす。
まもなく彼らにアンがさらわれ、巨大な野獣、キング・コングがアンを奪い去る。
アンを追ってジャングルの奥地に進むクルーだが、恐竜や未知の生物に襲われ、次々と命を落としていく。
一方、アンはコングと心を通わせるようになっていた。
やがてジャックが、アンを連れ戻すことに成功。
怒ったコングを、デナムは生け捕りにしてしまう。
数か月後、コングはブロードウェイで人間たちの見世物にされていた。
その最中に怒り出したコングは、拘束具を破壊してニューヨークで暴れ出す。


寸評
僕はこの映画は3部構成になっていたと思う。
それぞれ一時間ばかりを費やして描いて、都合3時間8分の長尺になっている。
第一部と思われるのは1930年代の不況の世の中を丁寧に説明しながら、映画のロケに出発するまでを描いていた部分。
1929年が世界恐慌だから、まさに不況の中で、町では浮浪者がいて炊き出しが行われている。
街に流れるのはアル・ジョルスンの能天気な歌声だけど、戦後日本の「りんごの歌」のような希望はまだ見えない。
人々は日々の生活さえままならなくて、劇場に通う客足も遠のいて劇場封鎖で喜劇女優のアン・ダロウは職を失い、それがやがてコングの住む髑髏島への航海となっていく。この辺りの展開は丁寧に描かれているので説得力がある。
映画製作者デナムの山師的な行動や言動も違和感なく物語を進める役割を十分にこなしていたと思う。

さて、第二部の部分になると第一部のリアリズムから一転して空想の世界になる。
コングの登場も含めて、島に住む巨大生物と、撮影隊との死闘が繰り広げられる。
巨大生物は今もいるゴリラや、かつてはいた恐竜だったり、いそぎんちゃくのオバケの様な空想の生物だったりする。
僕はこの怪獣たちとのバトルは少し食傷気味だった。
恐竜との追っかけっこや、変な虫との格闘などが仮想なのだと言う感覚を強くしてしまって興ざめしたのだ。
ただ、コングがアンを守り、そして自らは傷つきながらも恐竜と戦うシーンは引き込まれた。
身を犠牲にしてもアンをかばい続ける格闘に感動すら覚えて、コングのアンに寄せる愛情がよく現わされていたと思う。

第三部に当たる部分は最終章で、コングがニューヨークに連れてこられて見世物となり、再び暴れだしビルから転落して死ぬまでを描いている。
コングを見世物にしか出来なかった人間のエゴと淋しさや空しさなどがもう少し出ていたらなとは思ったが、ビルのてっぺんからコングとアンが見る夕陽のシーンがしんみりさせた。
あれは、二人(?)が髑髏島の岩山の崖っぷちで見た夕陽とつながって感傷的になった。
なぜコングは逃げようの無いビルに登ったのか?所詮は動物の浅はかさなどではなく、コングはあの髑髏島で夕陽を見た至福の時を今一度味わいたかったのではないかと思う。
コングの見せた優しそうな眼差しが脳裏に残る。予想に反して、真面目に作られた三角関係の恋愛映画だった。

余談ではあるが僕が解説や評論、感想の類を色々とネットサーフィンしていて、ちょっとくすぐられるエピソードを知った。
それは、女優探しに奔走するデナムが次々に女優の名をリストアップする中で、「フェイ・レイはどうだ?」「彼女はRKOで新作の撮影中です」「そうか。監督はクーパーだったな」という会話があって、実はフェイ・レイはオリジナル版『キング・コング』の主演女優で、RKOは製作会社、クーパーはその監督だと言うことを知ったわけだが、この映画ファンのための楽屋オチはやはり先輩映画ファンの特権だったのだと羨ましかった。


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