おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

旅立ちの島唄 ~十五の春~

2024-06-08 09:02:24 | 映画
「旅立ちの島唄 ~十五の春~」 2012年 日本 

                                              
監督 吉田康弘                                              
出演 三吉彩花    小林薫    大竹しのぶ 早織 小久保寿人
   立石涼子 山本舞子 照喜名星那 手島隆寛 上原宗司
   日向丈 松浦祐也 若葉竜也 ひーぷー 普久原明

ストーリー
沖縄本島から東へ360km離れたところにある南大東島には高校がないため、この島に住む高校進学希望者は島を出なければならない。
民謡グループのリーダー・仲里優奈の家でも、姉・美奈と兄は進学を機に、沖縄本島出身の母は美奈が高校へ進学するときに一緒に島を出ており、今はサトウキビ畑を営む父と二人暮らし。
美奈は子どもとともに島に帰ってきているが、兄は那覇で働き、母は島に戻っていない。
優奈は北大東島から来た健斗に淡い想いを抱くが、健斗は高校進学をあきらめ父の仕事を継ぐため島に残ることを決意する。
中学3年生になった優奈の心には、めったに会えない母への思い、父を島に一人置いていくことの悲しみ、淡い恋、南大東島にはないものへの憧れや将来への不安などがよぎる。
様々な思いを込めて優奈は島唄を唄いきり、島からの旅立ちのときを迎える…。


寸評
ドラマのスタートは、主人公・仲里優奈の1年先輩の卒業時期。
先輩から島の民謡グループ「ボロジノ娘」のリーダーを託された優奈なのだが、彼女も1年後には島を出なければならない。
映画はヒロインの優奈が島で過ごす最後の1年を、時系列的に淡々と描き出していく。
壊れかけた家族の中で優奈の心が激しく揺れ動き、描かれている内容がすごいのに反比例するかのごとく、映し出される映像はゆったりとした雰囲気の中で淡々と、ごく自然に、最後まで描き続けていることがこの映画のいいところだと思う。
父親の利治は二度「子供は親が見守ってやらねばならない」という。
一人は子供を抱えて帰って来ていて、離婚の危機にある長女・美奈のダンナであり、もう一人は沖縄本島にいる妻の明美に対してである。
崩壊しかけた家族ながら、それでも何とか優奈を支えようとする父や母の姿も観客を引きつける。
両親を演じた小林薫と大竹しのぶの受けに徹した押さえた演技がゆったりとした雰囲気の原因の一つでもある。
そして、必死に前を向いて歩こうとする優奈の姿が、これまた静かに描かれることで、自然の中に溶け込んで心に響いてくる。

優奈が卒業時期のコンサートで別れの島唄を歌いきるところは感動的。
方言で歌われる島唄の意味が表示され、この歌の中に島との別れや家族との別れと共に、愛情に対する感謝の気持ちと、少女時代に対する決別の決意が込められていて、僕は涙が流れてしかたがなかった。
「天然コケッコー」の夏帆も良かったが、この作品の三吉彩花も実にいい。

ラストでは一年前と同じように、新たに高校生になり島を離れる子供たちを乗せた船と、それを見送る島の大人たちが映し出される。
一年前には少女だったのに、まるで大人の女性になったような旅立ちなのだが、彼女は島に戻ってくるのだろうかと思ってしまう。
離島の現実をまざまざと見せつけているのだが、見終わって温かな気持ちになれた。
成長する若者を描いた青春映画はいい。
それがドラマの世界だと分かっていても「がんばれ!」と声をかけたくなってしまうのだ。


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