おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

探偵物語

2024-06-11 07:02:06 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2019/12/11は「日本のいちばん長い日」で、以下「ニュー・シネマ・パラダイス」「ニワトリはハダシだ」「人間の條件」「人情紙風船」「ヌードの夜」「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」「眠らない街 新宿鮫」「眠狂四郎 勝負」「野いちご」と続きました。

「探偵物語」 1983年 日本


監督 根岸吉太郎
出演 薬師丸ひろ子 松田優作 秋川リサ 岸田今日子
   北詰友樹 坂上味和 山西道広 清水昭博
   林家木久蔵 藤田進 中村晃子 鹿内孝 荒井注
   蟹江敬三 財津一郎 

ストーリー
女子大生の新井直美(薬師丸ひろ子)はあと一週間で父親の待つアメリカに旅立つことになっている。
ある日、直美は前から憧れていたサークルの先輩・永井(北詰友樹)に誘われた。
永井は海辺の店でペンダントを二つ買い、一つを直美にプレゼントする。
そして、いつしか二人はホテルの一室にいた。
そこに突然、直美の伯父と名乗る男が飛び込んできて永井を追い出してしまう。
この男・辻山秀一(松田優作)は私立探偵で、直美の父の元秘書・長谷沼(岸田今日子)から、彼女のボディ・ガードに雇われたのだった。
ある日、辻山の別れた妻・幸子(秋川リサ)が、彼女の愛人で岡崎組のドンの跡取りである和也(鹿内孝)がホテルのシャワー室で何者かに刺殺されたと辻山のアパートに飛び込んで来た。
ホテルは密室状態で犯行のチャンスがあったのは幸子だけだったので、警察と国崎組の目は幸子へ向かう。
国崎組の追手が迫る中、三人はどうにか脱出し、直美の家へ逃れた。
直美は幸子をかくまい辻山と二人で真犯人を見つけようと言い出す。
そして、和也の葬儀に出かけた直美は、未亡人の三千代(中村晃子)と国崎組の岡野(財津一郎)が一緒に出かけるのを見つけた。
そこに辻山も現われ後を追った二人は、三千代と岡野のベッドでの会話の録音に成功するが、国崎組に追い回される。
ある夜、辻山と幸子がベッドにいるのを見て、ショックをうけた直美は、街をさまよい見知らぬ男の誘いにのる。
その男と入ったホテルは和也が殺されたホテルであった。


寸評
典型的な青春映画、アイドル映画であり、作品としての中身はあまりない。
惜しまれながらも早世した松田優作が薬師丸ひろ子と共演していること、監督が根岸吉太郎である事で存在価値のある映画だと思う。
根岸吉太郎は日活に入社したこともあって、当初は日活ロマンポルノ作品を撮っていたが僕はそのころの作品を見ていない。
存在を知ったのは1981年の「遠雷」で、その後「ウホッホ探険隊」などを撮った後、2000年代には「雪に願うこと」「サイドカーに犬」「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」などと僕好みの作品を撮っているので僕にとっては注目すべき監督の一人となっている。
「探偵物語」はこの頃はこのような作品も撮っていたのだなと懐かしく思う作品である。

さて本作だが、アイドル映画らしく裕福な家庭のお嬢さんを探偵の青年がボディ・ガードとして雇われ、やがて二人の間に恋が芽生えるというものである。
実際に大学生となっていた薬師丸が等身大の女子大生を演じている。
1981年の「セーラー服と機関銃」が高校生の役だったので、本作では年齢に合わせて少し成長していたわけだ。

主人公の直美が先輩の永井に憧れていたが、やがてボディ・ガードの辻山に恋していくというのは青春映画としては普通の展開で驚くものではない。
しかし国崎組とのドタバタに紛れて、その恋の変遷は明確ではないし、辻山に恋心を感じるきっかけも描かれていない。
辻山の元妻とのベッドシーンを見て動揺するのがその表れなのだろうが、初めて恋していることに気がついたのか、その場面を生で見てしまったことによるショックだったのかは曖昧だ。
もちろん前者であるはずなのだが、その印象は乏しいものとなっている。
密室殺人の種明かしも平凡だし、新犯人も推理劇の常として予想外の人物と思えばある程度予測がつくものだ。
全体的にはそのような消化不良の部分が多いのだが、しかし終盤に直美が辻山に愛を告白するシーンは、お互いの気持が噛み合わない様子を表すための1カット1シーンの長回しになっていて、薬師丸はこの5分に渡る時間によく耐えたと思う。
濃厚なキスシーンによるラストはアイドル映画としては異例だが良かったのではないか。
ままごとみたいなシーンの連続なのだが、辻山と別れた妻の幸子が会話する場面だけはしっとりとしている。
二人が離婚した時のいきさつを語るシーンや、二人が釈放された後に交わす会話などは大人の世界の会話で、愛というものを感じさせ、この作品の中では少し違ったトーンで描かれていたと思う。

松田優作と共演していることは特筆ものなのだが、松田優作が持ち味を発揮していたとは言い難い。
薬師丸ひろ子のための映画であったが、父の元秘書で母親代わりとなって薬師丸の面倒を見ている長谷沼さん役の岸田今日子が一番面白かった。
父との愛情を尋ねられて「いいません、言えば減りますから」には大笑いした。
主題歌はお気に入りである。


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