おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

毎日かあさん

2023-03-28 07:17:31 | 映画
「毎日かあさん」 2011年 日本


監督 小林聖太郎
出演 小泉今日子 永瀬正敏 矢部光祐 小西舞優 正司照枝
   古田新太 大森南朋 田畑智子 光石研 鈴木砂羽
   柴田理恵 北斗晶 安藤玉恵

ストーリー
今日もサイバラ家に、嵐のような朝がやってきた。
仕事場の机で寝てしまったサイバラリエコを大声で起こす母トシエ。
息子のブンジは6歳になってもまだオネショのクセが治らない。
ブンジと4歳の娘フミを保育園に送り届けるが、サイバラのママ友でもある麦田さんが5人の息子たちを体育座りさせ点呼をしたり、子供たちが走り回ったりとそこは戦場のような世界。
そんな保育園を後にして、ようやく忙しい朝は一段落するが、締め切りに追われる人気漫画家のサイバラは休む暇もなく仕事開始し、優秀なアシスタントの愛ちゃんと共に夜遅くまで働くのだった。
だが仕事が終わると、次は子供たちを寝かせる時間だ。
一日の終わりのひと時の楽しみは、子供たちは絵本、母は酒。
一方、元戦場カメラマンの夫カモシダは、アルコール依存症で病院に入院中。
ところがある日、勝手に退院してきた彼は、作家になると宣言したものの原稿も書かずにまた酒に手を伸ばしてしまう。
やがてカモシダの心は日に日に混乱し、妄想がひどくなり、とうとうサイバラは彼に離婚届けを渡す。
失ったものの大きさに気付いたカモシダは、完全隔離された病院に転院することを決意。
しかし克服どころかますます悪くなる一方で、ついにサイバラは離婚を決意する。
時は流れ、子供たちも父親の不在に寂しさを募らせる中、遂にカモシダが依存症を克服、サイバラは元夫を家族として再び迎え入れる。
しかし、喜びも束の間、今度はカモシダのガンが発覚・・・。


寸評
人気漫画家・西原理恵子が日々の出来事を綴った同名エッセイ漫画を原作としているが、ちょっと前にダンナであった鴨志田氏のエッセイを原作とした「酔いがさめたら、うちにかえろう。」が撮られている。
元夫婦の永瀬正敏と小泉今日子が夫婦役で共演するとのことで、話題性は断然こちらの作品が勝っていたが、映画の出来栄えとしては断然「酔いがさめたら、うちにかえろう。」の方が面白かった。
鴨志田目線と西原目線の違いもあるし、西原さんの描き方も違っているが、東陽一監督の「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」の方がペーソスがあったと思う。

本作は西原と鴨志田の切っても切れない関係と言うより、家族とそれを取り巻く人々を多数登場させ、西原一家のバカバカしくも微笑ましい日常を活写している。
ママ友たちとのバカ話シーンもふんだんに登場する。
子供たちも主演級で、特にブンジという息子が強烈キャラでサイバラを振り回し、小泉今日子もそれに負けない肝っ玉かあさんぶりを熱演しているが、これだけ子供が登場するとそちらに目が行ってしまう。
映画の世界では子供と動物には勝てないなという感じである。

キャスティング面において、群を抜く話題性を誇る作品といえる。
離婚する夫婦の役を、離婚した夫婦に演じさせるのは、ほとんどいやがらせのようなキャスティングだ。
妻が一方的にアル中の夫をののしるシーンの迫力はすさまじいもので、まるで実生活における一場面の再現じゃないかと思わせるリアリティを感じさせた。
それはもちろん小泉今日子の演技力のたまものに違いない。
しかし実際に別れた夫婦の演技だけに素直に笑えないものがある。
話題性では成功していても、作品内容的にはそれが邪魔をしていたようにも感じるのだが…。

漫画家で二児の母でのあるサイバラリエコは、6歳の息子や4歳の娘に振り回され、大忙しの毎日を送っている。
戦場カメラマンの夫カモシダはアルコール依存症でろくに仕事もせず、さらに悩みを大きくさせる存在だ。
しかも彼の病状は悪化の一途をたどっていたという中での物語である。
アル中の夫との格闘というよりも、この映画は子育ての大変さとともにその幸福感を上手に描いている。
カモシダを中に挟んだ、母親と子供たちの愛情物語とも換言できる内容である。
子育てに疲れるほど「毎日かあさん」をやっている女性たちが見れば勇気をもらえるのではないか。
やっかいな子供に手を焼きながら悪戦苦闘しているのは私だけではないのだという気持ちであり、こんなにおおらかに子育てってできるのだなあという感覚である。
鑑賞者である僕は男目線で見ていたが、虐待や幼いわが子殺人などが少しでも無くなるのではないかと思ったりしたのである。
アニメを使ったり、想像の世界を描いたりもするのだが、少々てんこ盛りすぎたのではないかとも感じたのであるが・・・。
内容の割には軽い作品である。