おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

セブン

2021-04-28 07:47:59 | 映画
「セブン」 1995年 アメリカ


監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ブラッド・ピット
   モーガン・フリーマン
   グウィネス・パルトロー
   ジョン・C・マッギンレー
   リチャード・ラウンドトゥリー
   R・リー・アーメイ

ストーリー
雨降りしきる大都会でまた新たな殺人事件が発生し、退職まであと1週間のベテラン、サマセットと血気盛んな新人ミルズの両刑事が現場に急行した。
被害者は極限まで肥満した大男で、死因は食物の大量摂取による内蔵破裂。
そして現場には、犯人が残したものと思われる〈GLUTTONY=大食〉と書かれた文字が残されていた。
まもなく弁護士のグールドが、高級オフィスビルの一室で、血まみれになって殺される事件が発生。
そして現場には血で書かれた〈GREED=強欲〉の文字が……。
サマセットは、犯人がキリスト教における七つの大罪に基づいて殺人を続けていることを確信し、ミルズにあと5人殺されるだろうと告げる。
「強欲」殺人の現場を再検証した2人は、壁の絵画の裏に指紋で書かれた「HELP ME」の文字を発見。
その指紋は前科者の通称ヴィクターのもので、ヴィクターの部屋に急行した捜査陣は、舌と右腕を切られた上、ベッドに縛りつけられて廃人同様となったヴィクターを発見。
部屋には彼が衰弱していく様を撮影した写真と〈SLOTH=怠惰〉と書かれた紙が残されていた。
グールドの部屋の指紋は、ヴィクターの切り取られた右腕で付けられたものだった。
捜査は振出しに戻り、サマセットはFBIの友人の協力を得て、犯罪者に利用される恐れのある要注意図書リストの「七つの大罪」に関する図書館の貸出記録から、容疑者を割り出そうとした。
ほどなくジョン・ドウという男が浮かび、半信半疑のまま2人は男のアパートを訪ねたのだが・・・。


寸評
キリスト教の“七つの大罪”になぞらえた連続殺人事件を描いた刑事物だが、定年まじかの刑事モーガン・フリーマンと若手刑事のブラッド・ピットの人物対比が面白い。
最初の殺人事件までは刑事二人の性格描写が丁寧に描かれる。
モーガン・フリーマンは退職まであと1週間のベテラン刑事で沈着冷静、几帳面な男であるサマセット刑事である。
一方のブラッド・ピットは直情型で、新たにこの町に赴任してきた妻がいる若手刑事である。
ブラッド・ピットのミルズ刑事がセルピコだと名乗るシーンがある。
セルピコと言えばアル・パチーノが演じた刑事の名前ではないか。
僕はシドニー・ルメットへのオマージュかと思ったりしたのだが、どうもセルピコは警察官としてアメリカでは有名な人物であるらしいことによるものなのだろう。

七つの大罪とは「虚栄」、「嫉妬」、「怠惰」、「怒り」、「強欲」、「貪食」、「淫蕩」である。
第一の殺人事件が起きる。
被害者は極限まで肥満した大男で、汚物にまみれ、食材のスパゲティの中に顔を埋めた恰好で死んでいた。
猟奇事件の発生を思わせるに十分な状況が描かれてサスペンスの始まりを感じさせる。
それを決定付けるのがサマセットが発見する〈GLUTTONY=大食〉と書かれた文字だ。
そして凄腕で名高い弁護士グールドが、高級オフィスビルの一室で血まみれになって殺され、現場には血で書かれた〈GREED=強欲〉の文字が書かれているのだが、この二つの事件を短時間で描き、観客を一気に映画の世界へ誘い込む。

第三の殺害者が発見される経緯もスピーディで、この小気味よさがこの手の作品には必須だ。
サマセットは金を渡してFBIの友人の協力を得るのだが、これは記者が事件現場に素早く駆け付け写真を撮った時に、警察内部の者が情報を提供して金を貰っているとサマセットが言っていたことが伏線となっている。
そしてこの伏線は更に大きな事を含んでいたことが分かる展開もいいと思う。
FBIが図書館の貸出記録情報を取得していて、どの人物がどのような本に興味を持っているかを把握していると思われるので、サマセットはFBIの友人にその情報提供を依頼している。
確かに、爆弾作りに興味を持っているとか、ナチスの狂信者であるらしいとか、殺人行為に興味がありそうだなどという個人情報をFBIならば秘密裏に取得しているだろうなと思わせる。
僕たちも知らず知らずのうちに個人の詳細情報を権力者によって把握されているのかもしれない。

犯人が判明して出会う場面もなかなか緊迫感がある。
ミルズが殺されそうになるが、これも大きな伏線となっている。
第4の殺人〈LUST=肉欲〉として娼婦が殺され、第5の殺人〈PRIDE=高慢〉として顔を切り裂かれて悲観した美人モデルが自殺している事を描く時間もテキパキしていてサスペンスを盛り上げている。
第6の殺人動機の〈ENVY=嫉妬〉も納得できるし、第7の殺人もよくできている。
サイコ・サスペンスとして「羊たちの沈黙」という傑作があったが、「セブン」はそれに迫るものがある力作である。