猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

彼女たちの事情。 〜Mの場合〜

2017年08月10日 03時27分59秒 | ルーツ

 

『普通』であることの、どれだけ難しいことか。

 

 

私が中学生だった頃。

友人Mの家はシングルマザーの母親と、歳の近い妹二人という家族構成で、
小さな、二間のボロアパートに住んでいた。

階下には、太った性格の悪い夫婦が住んでいて、
これがまた、私の継母と仲が良かったものだから厄介なのだけれど、
とにかく少しでも物音をたてれば、
彼らが下から天井を棒でガンガン突いてきて、
挙句の果てに、怒鳴り散らしにくるのだと、
Mを含めた三姉妹は怯えるように暮らしていた。

母親はめったに帰って来ず。

ときおり在宅の際に顔を合わせれば、
髪を真っ赤に染めた、気のいい、陽気な人なのはわかりはしても、
色々と、世間に溶け込むにはアレな人なのかなぁと、
14歳の私にも感じさせるような、独特の雰囲気を纏っていた。

そんなこともあってか、三姉妹はいずれも、
中学生時代から男と同棲を始め、
次々に母親のボロアパートから、旅立っていったのだった。

...旅立ったとは言っても、
やはりその先もボロアパートで。

時代はまだバブルを迎えていなかったから、
皆、似たようなものではあったけれど、
少なくとも彼女らの未来が明るいものとは、
お世辞にも思えない状況だった。

肉体労働者が住むアパートや、
工場従事者の寮が多く集まった町で。

それでも片親家庭は、まだ珍しかった時代の話だ。

Mと、Nと、私とR。

つるんでは遊び、それぞれの家庭の歪みを、
寄せ集めるように、増幅させていった仲間だったが、
子供たちの非行に、怒り狂う親たちの中でも、
変わらず、Mの母親だけは、無関心で、
家にも帰らない様子だった。

MはMで、少々だらしなく、お世辞にも頭が良いとは言えなかったが。

カラカラと陽気に笑う、コロコロと太った少女で。

大らかに人を受け入れる、そんな明るさを持っていた。

高校には進まず、男との同棲を続けたMとは、
16の時以来、顔を合わせていないが。

人伝に聞いた話では、どういう経緯か、風俗嬢になったようだ。

その後、どうしているのか、今は知る由もないけれど。

母親が若くして、亡くなってしまったことも、
同じく人伝に聞いた。


 

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