猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

彼女たちの事情 。 〜R・帰る場所があるということは〜

2017年08月13日 04時53分10秒 | ルーツ

 

『怖い』を知らない怖さ。

 

 

Rの母親は『理想の家庭』の実現に、躍起になっていた。

手作りの服に手作りのお菓子。

小奇麗な家に、規則正しい生活。

優秀で従順な息子に、
スタイルが良く、美しい中学生の娘。

自身も高学歴で、
しかし、その娘Rは、あまりの窮屈さに息も出来ず、
もがくように出口を求めていた。

不自然なほど明るく、物怖じしない性格も、
それに拍車をかけて。

はっきりモノを言い過ぎることから、
集団から弾き出されたRは、
同じく、集団とは相入れない私や、
Nとつるむようになった。

その怖いもの知らずさから、
誘われればどこにでも顔を出し、
それぞれに少し持て余されながらも気にもせず、
その『世界』を楽しげに満喫する彼女に、
母親は怒り狂い、『たまり場』へ踏み込んでくること数回。

時には私の継母を引き連れて、
窓から乗り込んで来たこともあった。

ヒステリックに叫び、
なりふり構わず周囲を罵倒し、娘を引っ掴み...

「アタシが悪くなったのはerimaのせいだって、お母さんが言ってる」

だからアタシとは付き合ってないってコトにしてくれと、
R自ら、そう頼んできたこともあった。

「ああいう家庭の子だから、erimaがお前を引き込んだに決まっている」
と、母親が言っていると。

Rには悪気はなく、
単純に言われたことを私に伝えただけなので、
それはそれで「了解!」となったが、
ただ、あの母親の言ったことが、
『世間の偏見』の存在を私に教え、
それは今に至るまでの、
「世間の思う壺にはならない。
ああやっぱり、ああいう家の子だからと言われるような事は、絶対にしない」
という、意地を作ってくれた。

Rの、「erimaとはもう付き合っていない」という『嘘』に、
あの母親が騙されたのかどうかはわからないが、
熱しやすく、恋愛体質のRは、
私と同じ高校に進んでからも、
様々な「かっこいい!」人を追いかけては、学校中の噂になり、
次第に居づらくなったのか、進級前に辞めてしまった。

そして、家を出て。

その頃にはもう、詳しいことはわからなかったが、
ある日、ある筋の、情婦となって、
颯爽と、毛皮を羽織って会いに来たのを覚えている。

まだ、16か、17の頃の話だ。

次に会ったのは子供を二人産んだ後。

「違う男と遠くに逃げた」と連絡が来て、
ほとぼりのさめた頃。

結局、その後もまた、彼女は違う男と逃げて、
今はもう、何をしているかはわからないけれど、
風の噂では、実家に戻ったという話もあるから、
案外しれっと、『普通』にやっているのかもしれない。

あの、不思議なほどの、『快活さ』で。

もしかすれば、
『いつでも帰れる場所がある』ということが、
彼女の暴走をとめどないものにし、
けれど、やはり、元の場所に戻したのだろうか。

はたして。

帰る場所がない私には、わからない。

 



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