猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

彼女たちの事情。〜Oの『登場』〜

2017年08月15日 13時35分45秒 | ルーツ

 

越えてはいけない一線を越えた者たちの『事情』は、私には解らない。

 

「おじさん、あたし見てんの?」

そのセリフだけを、強烈に憶えている。

ブロック塀をぶち壊し、
空き地に乗り上げた、盗難車に集る野次馬に紛れて、
Oは一人の男性に、そう声をかけた。

およそ中学生には見えない、その容貌は、
高そうな、大人びた、真っ白なロングコートや、
念入りな化粧、丁寧に染められた髪のためだが、
なぜ、その現場を、彼女や私が見に行ったか。

その理由は『お察し』である。

ただ、その犯人は後に、相応の報いを受けた、と、私は思う。

理由にも何もならないが、時代は荒れていて、
まだまだ、未開だった頃の話だ。

Oがあの時、男性に声をかけたのは、
彼女が身につけている、
様々なものを買う資金を得るための、カモを探していたからだろうが、
彼女が『売った』もの。

買ったもの。

『払った』代償がどれほどのものなのか。

二、三度顔を合わせただけの私にはわからない。

ただ、あのセリフのせいで、あの場面が、
写真のように、脳裏に焼き付いている。

男性が目を背けるとOは、弾けるように笑った。

『たまり場』には文字通り、
様々な『事情』がたまり、
蠢いては、去っていった。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 彼女たちの事情。 〜Aの半年〜 | トップ | 彼女たちの事情 〜K・『不運... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ルーツ」カテゴリの最新記事