バラの挿し芽をしている鉢から、
正体不明の芽が出たのはいつのことだったか。
こちら先日撮影の神代植物公園のバラ。
鳥が落し物をしていったのか、
うまく土の表面が見えている部分に頭を出したそれは、
思いのほかものすごい勢いで生長し.....
また、思った以上に葉や丈を伸ばしたので、
私はそれを引き抜くことによりも、
その正体が何なのかのほうに気をとられてしまい、
そのまま、『放置』という名の、消極的な栽培を続けてしまった。
こちら温室で見た睡蓮。
美しい。
やがて、それは小さな蕾をつけ、
気づけば非常に愛らしい、白い花を複数咲かせた。
私も、さすがにここまでくれば、その正体もわかるだろうと、
雑草図鑑にネットにと、思い当たる特徴と照らし合わせ、
そいつの名前を調べ始めたのだった。
.......と。
あっさり見つかったその植物の名は、『イヌホオズキ』だというのがわかり、
それは非常に一般的な雑草であることが判明した。
まあ、雑草であることは、その生長の途中で半ばわかっていたし、
私は雑草と呼ばれるそれらの花が結構好きだから、それは問題ないのだが、
さらに詳しい情報を追ってゆくと、イヌホオズキは全草に毒を持つ事がわかり.....
私は焦って「これはちゃあこに万が一のことでもあったら大変!」と、
すぐにそれを引き抜き、厳重に袋に入れ、廃棄せざるを得なくなった。
さて、こちらがそのイヌホオズキ。
白い可愛い花を咲かせますが、
全草にアトロピン、ソラニン、サポニンを含む毒草です。
なんでも、イヌホオズキは秋に小さな実をつけるのだそうだが、
鳥はそれが毒を持っているのを知っているので決して一度にたくさんは食べず、
それゆえ、こうして遠い場所まで確実にタネが届くらしいのだ。
なるほど......
いつのときにも、植物はしたたかで賢い。
自分の毒への耐性が、どれほどのものか知っている鳥も。
それに、そういえば毒というのは、うんと薄めれば薬になるものが多いし、
実際このイヌホオズキにも含まれている毒、『アトロピン』だって、
多く医療に用いられているという。
こちら再び神代植物公園の温室に戻って.....
これはベゴニアの一種かな?
アトロピンの名の由来は、ギリシャ神話に登場する、運命の糸を切る女神
『アトロポス』だというが。
そのアトロピンがときに薬となって人の命をつなぎ、
ときに鳥の腹におさまって、意外な場所に花を咲かせて、
また命をつなぐと思うと面白い。
自然も人間も、奥が深いなぁ。