夕方、所用で出かけることになったので、出勤するゴンザの車に便乗することにした。さすが土曜日とあって、幹線道路は渋滞中だ。しかし、10分ほどでなんとか隣の駅周辺を通りすぎ、そこで赤信号にひっかかった。
ちょうどそのときはブログの話に花を咲かせていた私たちなのだが、ふと、運転席側の車窓越しに何かがうごめくのに気付き、話すのをやめる...。
よくよく目を凝らして見てみれば、なんと、それは、反対車線側の歩道の植え込みに上半身が埋まっている爺さんで、爺さんは植え込みに埋まっては起き上がり、埋まっては起き上がりを繰り返しているではないか!私は、爺さんの存在にに気付いた時点でゴンザを促し、赤信号の間中、一緒に観察を続けた。そして短い協議の結果、目の前にあったスーパーの駐車場に車を停め、彼の様子を見に行くことにした。急いではいたが、沢山いる通行人は爺さんを気にしつつも、声をかける気配は一向にないように見えたし、もし具合が悪くてああしているのなら、見過ごすわけにはいかない。「酔っ払っているだけかも」とも思ったが、もし行き倒れにでもなられたら、後味が悪いことこの上ない。ともかくと、車を降りた私たちは、爺さんの元へ向かうべく、例の植え込みに向かっのだった。
すると...爺さんはその間に何とか立ちあがったらしく、私たちの方向へ信号を渡ってくる!まるで起き上がりこぼしのようになりながら、危なっかしく歩きかけ、1メートルを進むのに大変な時間をかけては、再びおきあがりこぼしになる、といった塩梅だ。
そこで、我々は意を決し、爺さんに声をかけてみた。
「大丈夫ですか?」「ぅ~らいじょ~ぶでっふ」(注訳:大丈夫です)
...しまった。やっぱ酔っ払いだ。
しかし、だからといって見捨てるわけにもいかず、おうちはどこですか?歩けますか?と訊ねてみる。
そして「すぐそこっ!すぐそこなんだよっ!」という爺さんを信用することにし、同行することにした私たちは、今にも後に転がりそうな彼の体を脇から支えて、ゆっくりと歩き始めた。
根気よく聞き出せば、爺さんの自宅は、私たちが車を停めた駐車場の奥にある、高台への入り口、十段ほどの階段を登った先であるという。しかし、階段手前で再び座り込んでしまった爺さんには、とてもそれを登る力などあるまい。仕方なく「ご家族を呼んできますから」と、何とか彼の苗字を聞きだした我々は、それがまた珍しい苗字だったこともあって、家を見つけるこは、割に楽だろうなどと、たかをくくった。それが証拠にゴンザはすぐ、爺さんが指差す方向へ走っていった。
ところが、すぐに戻るはずのゴンザは帰ってこない...。道行く人々に好奇の目で見られながら、私は仕方なく、ご機嫌な酔い方をしている爺さんの相手をする。聞けば、親戚の娘の結婚式に呼ばれ、長野県に行ってきたという話だ。併せて、朝1時(夜中か)に目が覚めたので、眠くて仕方がないこと。家で待っている奥さんは体調が悪く、自分を迎えには来れないのではないかということ。近くに、嫁に行った娘がいて、車の免許ももっているから、迎えに来てもらえないこともないのだが、電話番号が思い出せないこと...などを聞き出す。
そこでゴンザが息を切らせ、ようやく帰ってきた。が、一言目に彼が言った言葉は
「...ダメ。見つからなかった」
...か~っ、どうするよ...?
すると先刻、犬を連れ通りすぎていったご婦人が、周辺地図を持って引き返してきてくれた。
もう一人の野次馬的近所のご夫人も加わって、みんなで地図上の爺さんの家を探す。
その間も私は、ご機嫌爺さんの話相手のままだ。
しばらくして、ようやくの「あった!!!」という声に嬉々として顔をあげるも...
なんと!爺さんの家は「すぐそこ」ではなく、目の前の階段を上がり、さらに高台を100M以上登った、遥か先...。
こりゃ絶対、歩いて帰るなんて無理だ。かといって、「車で送って行きますから」と言っても、爺さんは固辞する一方で、解決法は見つからないまま。
時間は無情に流れてゆくし、ゴンザは遅刻決定、私も人を待たせたまま。電話だけは入れて事情は説明済みだが、それでも...どーするよ?警察を呼ぶわけにもいかんしな。
爺さんの自宅電話番号は聞き出して電話済みだが、耳も不自由だという奥さんは出ず、万事休す。
しかしただ困っているわけにもいくまい。ダメモトでもう一度爺さんにアタックしてみるか、と、「娘さんの電話番号を思い出せないかな~」と言ってみる。
すると、しばらくモゴモゴ言ってた爺さん。何がしかの数字を口にし始めた...。
それが本当に娘の電話番号か。酔っ払いの、前後不覚の爺さんが言っていることだから、甚だ疑問ではあったが、それこそダメでもともとだ。ゴンザはすぐに爺さんのいう電話番号を押し、発信ボタンを押す...
ん?押さない?なんで私の顔を見るの?
「ねぇ...新手の振り込め詐欺だと思われたらどうしよう...」
って、あんた!
そりゃ私もゴンザも怪しい風体だけどさ...。
少々の不安を残しつつ、恐る恐る電話をかけてみた我々。
しかし、なんと爺さん!あんたの覚えていた電話番号、ぴったりビンゴだったよ。
なかなかやるね!
娘の婿だという、その電話の相手は、5分もしないうちに車で駆けつけ、爺さん無事に植え込みの一部となることなく、引き取られていきました。...ちっ、新種植物の発見かと思ったのに。(笑)
ひたすら謝る娘の婿に「おとうさん眠いそうですからすぐに寝かせてやって下さい。さっき聞き出したんですけど、引き出物も荷物も、全部忘れないで持って来たらしいです。安心していいみたいですよ。あっ、それから、ご機嫌なんであんまり怒らないでやって下さいね!それじゃ、おとうさん、おやすみ~」と、早口でまくし立てては手を振り、先を急いだ我々。
ん?爺さん?爺さんは最後までご機嫌でしたとも。
「俺はもう83歳だからよ~」なんて、去り際に年齢までカミングアウトしていたし...って爺さん!
あんた83歳だったのか。ますますやるね!
パワフルご機嫌爺さんに散々振り回され、疲労困憊の我々ではあっても、最後に少しだけ格好つけさせてもらって結構満足。
「お名前は...」と訊ねる婿に
「いえ、名乗るほどの者ではありませんから...」く~っ、格好いいっ!
一度言ってみたかったんだ~(笑)
しかもほら、ブログのネタにもなったしね!
ちょうどそのときはブログの話に花を咲かせていた私たちなのだが、ふと、運転席側の車窓越しに何かがうごめくのに気付き、話すのをやめる...。
よくよく目を凝らして見てみれば、なんと、それは、反対車線側の歩道の植え込みに上半身が埋まっている爺さんで、爺さんは植え込みに埋まっては起き上がり、埋まっては起き上がりを繰り返しているではないか!私は、爺さんの存在にに気付いた時点でゴンザを促し、赤信号の間中、一緒に観察を続けた。そして短い協議の結果、目の前にあったスーパーの駐車場に車を停め、彼の様子を見に行くことにした。急いではいたが、沢山いる通行人は爺さんを気にしつつも、声をかける気配は一向にないように見えたし、もし具合が悪くてああしているのなら、見過ごすわけにはいかない。「酔っ払っているだけかも」とも思ったが、もし行き倒れにでもなられたら、後味が悪いことこの上ない。ともかくと、車を降りた私たちは、爺さんの元へ向かうべく、例の植え込みに向かっのだった。
すると...爺さんはその間に何とか立ちあがったらしく、私たちの方向へ信号を渡ってくる!まるで起き上がりこぼしのようになりながら、危なっかしく歩きかけ、1メートルを進むのに大変な時間をかけては、再びおきあがりこぼしになる、といった塩梅だ。
そこで、我々は意を決し、爺さんに声をかけてみた。
「大丈夫ですか?」「ぅ~らいじょ~ぶでっふ」(注訳:大丈夫です)
...しまった。やっぱ酔っ払いだ。
しかし、だからといって見捨てるわけにもいかず、おうちはどこですか?歩けますか?と訊ねてみる。
そして「すぐそこっ!すぐそこなんだよっ!」という爺さんを信用することにし、同行することにした私たちは、今にも後に転がりそうな彼の体を脇から支えて、ゆっくりと歩き始めた。
根気よく聞き出せば、爺さんの自宅は、私たちが車を停めた駐車場の奥にある、高台への入り口、十段ほどの階段を登った先であるという。しかし、階段手前で再び座り込んでしまった爺さんには、とてもそれを登る力などあるまい。仕方なく「ご家族を呼んできますから」と、何とか彼の苗字を聞きだした我々は、それがまた珍しい苗字だったこともあって、家を見つけるこは、割に楽だろうなどと、たかをくくった。それが証拠にゴンザはすぐ、爺さんが指差す方向へ走っていった。
ところが、すぐに戻るはずのゴンザは帰ってこない...。道行く人々に好奇の目で見られながら、私は仕方なく、ご機嫌な酔い方をしている爺さんの相手をする。聞けば、親戚の娘の結婚式に呼ばれ、長野県に行ってきたという話だ。併せて、朝1時(夜中か)に目が覚めたので、眠くて仕方がないこと。家で待っている奥さんは体調が悪く、自分を迎えには来れないのではないかということ。近くに、嫁に行った娘がいて、車の免許ももっているから、迎えに来てもらえないこともないのだが、電話番号が思い出せないこと...などを聞き出す。
そこでゴンザが息を切らせ、ようやく帰ってきた。が、一言目に彼が言った言葉は
「...ダメ。見つからなかった」
...か~っ、どうするよ...?
すると先刻、犬を連れ通りすぎていったご婦人が、周辺地図を持って引き返してきてくれた。
もう一人の野次馬的近所のご夫人も加わって、みんなで地図上の爺さんの家を探す。
その間も私は、ご機嫌爺さんの話相手のままだ。
しばらくして、ようやくの「あった!!!」という声に嬉々として顔をあげるも...
なんと!爺さんの家は「すぐそこ」ではなく、目の前の階段を上がり、さらに高台を100M以上登った、遥か先...。
こりゃ絶対、歩いて帰るなんて無理だ。かといって、「車で送って行きますから」と言っても、爺さんは固辞する一方で、解決法は見つからないまま。
時間は無情に流れてゆくし、ゴンザは遅刻決定、私も人を待たせたまま。電話だけは入れて事情は説明済みだが、それでも...どーするよ?警察を呼ぶわけにもいかんしな。
爺さんの自宅電話番号は聞き出して電話済みだが、耳も不自由だという奥さんは出ず、万事休す。
しかしただ困っているわけにもいくまい。ダメモトでもう一度爺さんにアタックしてみるか、と、「娘さんの電話番号を思い出せないかな~」と言ってみる。
すると、しばらくモゴモゴ言ってた爺さん。何がしかの数字を口にし始めた...。
それが本当に娘の電話番号か。酔っ払いの、前後不覚の爺さんが言っていることだから、甚だ疑問ではあったが、それこそダメでもともとだ。ゴンザはすぐに爺さんのいう電話番号を押し、発信ボタンを押す...
ん?押さない?なんで私の顔を見るの?
「ねぇ...新手の振り込め詐欺だと思われたらどうしよう...」
って、あんた!
そりゃ私もゴンザも怪しい風体だけどさ...。
少々の不安を残しつつ、恐る恐る電話をかけてみた我々。
しかし、なんと爺さん!あんたの覚えていた電話番号、ぴったりビンゴだったよ。
なかなかやるね!
娘の婿だという、その電話の相手は、5分もしないうちに車で駆けつけ、爺さん無事に植え込みの一部となることなく、引き取られていきました。...ちっ、新種植物の発見かと思ったのに。(笑)
ひたすら謝る娘の婿に「おとうさん眠いそうですからすぐに寝かせてやって下さい。さっき聞き出したんですけど、引き出物も荷物も、全部忘れないで持って来たらしいです。安心していいみたいですよ。あっ、それから、ご機嫌なんであんまり怒らないでやって下さいね!それじゃ、おとうさん、おやすみ~」と、早口でまくし立てては手を振り、先を急いだ我々。
ん?爺さん?爺さんは最後までご機嫌でしたとも。
「俺はもう83歳だからよ~」なんて、去り際に年齢までカミングアウトしていたし...って爺さん!
あんた83歳だったのか。ますますやるね!
パワフルご機嫌爺さんに散々振り回され、疲労困憊の我々ではあっても、最後に少しだけ格好つけさせてもらって結構満足。
「お名前は...」と訊ねる婿に
「いえ、名乗るほどの者ではありませんから...」く~っ、格好いいっ!
一度言ってみたかったんだ~(笑)
しかもほら、ブログのネタにもなったしね!