ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

オートファジー

2016-10-05 16:35:05 | 日記
オートファジー。この言葉を初めて聞いた。今年のノーベル医学生理学賞を受
賞した研究者の、その受賞理由になった研究テーマがこの「オートファジー」
のメカニズムの解明だという。さっそくググってみると、次のように説明され
ていた。

「人体に数十兆個あると言われる細胞ひとつひとつの中でも、古くなったタン
パク質や異物などのゴミを集めて分解し、分解してできたアミノ酸を新たなタ
ンパク質合成に使うリサイクルシステムが働いている。このリサイクルシステ
ムのうち分解に関わる重要な機能がオートファジーだ。
オートとは自分、ファジーは食べるという意味で、名前のとおり、自分自身を
食べる(分解する)。」(東洋経済ONLINE)

話は細胞単位の働きのこと、どうにもピンと来ないが、私が真っ先に思い浮か
べたのは、カマキリの交尾である。交尾中にメス・カマキリは、オスを殺して
食べるという。交尾中にメスがオスを食べるのは、より多くの卵を産むためだ
という説がある。交尾中、メスはオスと一体になり、オスを自分の一部と感知
すると見れば、これもオートファジー、自食作用の一種だと言えなくもない。
メスによって殺され、食べられるオスは、子孫を残すためなのだから、本能の
なせる業とはいえ、これに抵抗することはない。

そういえば、悠久の時間に生きる樹々も、自食作用によって生命を営んでいる
と言えるだろう。不要になった葉っぱを落とし、土に返し、その腐葉土を養分
にして生き永らえる。

人間はどうか。人間の場合は、子孫を残すためにメスがオスを殺して食べるな
どということはない。それどころか、この万物の霊長の世界には、無益な殺生
ばかりが横行する。元カレが元カノのストーカーになって、追いかけ殺害するという事件が、きょうもあったばかりだ。

しかし、そんな人類でも、人が困っている姿を見れば、そこに己の窮状を重ね
合わせて、「助けなければ!」と思い、自己犠牲をも顧みずに救助に駆けつけることがある。いわゆる利他的行動、キリスト教の言葉でいえば、隣人愛の行為だということになるが、こうした行為には、メスの食餌にあえて自己を供するオス・カマキリの趣きがある。こうした利他的情動は、オートファジーの機能を持つ人体の細胞が、我々の脳細胞に刻みつけた古い古い記憶の、その幽かな残像によるものなのかも知れない。
コメント
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