両親の不仲に心を痛める少女クレムは、屋根裏で見つけた子猫にルーと名前を付け、その子猫と暮らす事で笑顔を取り戻す。小さなルーを可愛がり、家に居る間はひと時もルーから目を離すことなく暮らす彼女。
別荘に行くにもルーを連れていく家族だが、森に迷い込んだルーが戻ってこない事でストーリーは全く別の方向に進んでいく。ただ猫を可愛がるだけの毎日から、動物が人間と一緒に暮らすということ、動物が動物として生きていくということに向き合う映画になっていくのだ。
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階段を一人で上り下りするのもおぼつかないような子猫の姿から、少しずつ意志を持って家族に接し、クレムや家族の中でのびのびと暮らすルーの様子を非常にそばから見つめる前半。その一挙手一投足、その動く姿は猫好きにはたまらない時間だ。
そして雰囲気が変わる後半。私の家は昭和の時代に猫を放し飼いで飼っていたので、後半の葛藤を少しではあるが分かるような気がした。
学校の前に捨てられていた目も開いたばかりの子猫を拾ってきて飼う事になった。自力でミルクも飲めないような小さかった猫が運よく大きくなり、自分でご飯も食べられるようになり、家の中でノンビリ過ごし、飽きると外に出て自宅の周りをパトロールし、余所の猫と縄張り争いし怪我を負い、時にはすずめを殺めてその成果を見せに家に戻って来る。
ただ小さかった頃の可愛らしく動くぬいぐるみのような姿から、大きくなり生物らしい姿を見せるようになる様子をそばで見ていた。その姿は家の中だけで飼っていたなら見る事のない姿だったと思う。
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映画は、子猫が猫になっていく姿を厳しくも温かい目で追いかける。生物と一緒に暮らすにはその生きざまに向き合わなければならないのだ。
『ルー、パリで生まれた猫』メイキング _猫たちの演技について動物トレーナーが語る【9/29(金)全国順次公開】