ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

味方になってくれますか

2014-07-27 08:14:16 | Weblog

「味方になってくれる?」7月22日
 特集ワイドで、『とりあえず政治の話をしてみよう』という見出しの特集が掲載されました。集団的自衛権を巡り、政治無関心派が多い現状への危機感から組まれた特集です。私は、集団的自衛権行使可能という解釈改憲にはには大反対の立場で、記事を書かれた小国綾子記者と同じ思いを抱いている者ですが、その中で、学校における政治についての学習について書かれた内容には納得できませんでした。
 特集ワイドは、専修大教授の岡田憲治氏の、『都立の学校では教育委員会通知により教師は職員会議で挙手も採決もできない。教師が自由にモノを言えない空間で、子供が政治に関心を持てますか?』という発言を紹介しています。また、『岡田さんには忘れられない授業がある。1972年2月、小学3年の時だ。「浅間山荘事件の日、担任教師は「今日は下校までテレビをずっと見ます」とだけ言った。価値観を一切押し付けず、黙って映像を見せ続けた」』という体験を好意的に報じています。さらに、東洋大助教の林大介氏の『日本では教育の中立性を理由に模擬選挙を嫌う管理職や教育委員会がまだ多い』という「批判」も紹介されています。
  岡田氏の都立高における挙手と採決を巡る発言の誤りは、以前にもこのブログで指摘しているので繰り返しません。意思決定機関ではない職員会議において、採決をしないことが発言を封じていることを意味するのでないことは自明の理です。
 また、浅間山荘事件に関わる岡田氏の発言からすると、「何も言わずに1日中テレビを見せる」授業に問題はないということになります。岡田氏は、「自分の価値観を押し付けず」と言っていますが、ある特定の番組を見せられるということ自体が、教員の価値観に影響されることなのです。例えば、靖国の英霊を讃え、特攻隊員を美化した番組を見せ続けた教員がいたとしたら、岡田氏がその取り組みを賞賛したとは思えません。生中継と編集された番組は違うという方がいるかもしれませんが、生中継といっても、テレビ朝日とフジテレビでは、違う切り口や解説の放送になるのです。公立学校において、多くの教員が、それぞれの価値観に基づいて好ましいと考える放送を何時間も見せ続けることを、国民の多くが支持するとは思えません。
 さらに、林氏は、「中立性を理由に~」と述べられていますが、だからどうしろというのでしょうか。教委も学校も、別に自己保身のために模擬選挙を取り入れた授業を避けているわけではありません。それが「民意」だからなのです。「偏向教育だ」という声が住民団体から上がり、議会で追及され、左右どちらかかのメディアから叩かれるという状況を避けるための対応なのです。これは保身ではありません。こうした騒動が学校教育全般に及ぼす悪影響を考えてのことなのです。保護者が賛成派と反対派に分かれていがみ合い、メディアの記者が校門前で待ち構えている、副校長は全国各地からの苦情電話と激励電話の対応で時間を費やし、校長は連日教委と善後策を話し合い、教育長は首長に呼びつけられる、そんな状況下で正常な授業は行えないのです。
 私は社会科の研究に教員人生にほとんどを費やしてきました。特に「政治単元」と言われる我が国の政治を扱う6年生を数多く担任してきました。子供に討論させる授業も数多く行ってきました。それでも、自分の行為が自校全体を、その地域の各学校を混乱させることへの恐れは払拭できませんでした。
 林氏も岡田氏も、ある学校のある教員が集団的自衛権について質疑を行う国会中継を1日中見せ続けたとき、その学校の合う地域に出向き、批判する住民やメディア、政治家に対し、教員擁護の論陣を張ってくれるのでしょうか。教委や学校、教員にだけ蛮勇を求められても困ってしまいます。社会が変わらなければ、学校も変われないのです。まして、今後、政治家である首長が教育行政の権限を握るようになれば、益々首長の意向に逆らうことは難しくなります。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 人をつくる | トップ | 早く気付いて »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事