「「教育」問題?」9月25日
社会部東京グループ深津誠記者が、『「公」教育の機能強めよ』という表題でコラムを書かれていました。以前もこのブログで何回か取り上げた、『難関大に合格する東京圏の高校出身者が増え、地方にある高校の出身者が減る「受験格差」が広がっている』ことに焦点をあてたコラムです。
現状の詳細は重複するので避けます。ただ、気になる記述がありました。『保護者が子供を地元から出したがらない風潮もある(略)そのまま就職して古里に戻らないことが多いからだ』という記述です。
深津氏は、我が国の公教育財政支出がOECD加盟国の中で最低レベルであることを指摘し、予算拡充を主張なさっています。その主張には賛成です。しかし、いくら予算を拡充しても、東京圏優位は覆らないと思います。それは、先に指摘したとおり、「大都会にそのまま就職」という実態があるからです。
私のつれあいは、N県の人口10万人の市の出身です。受験して教員資格を取り、都の公立校に就職、校長を務めて退職しました。つれあいの母は、東京で就職すると言ったとき、「帰ってきて、こっちで就職すればいいじゃないか」「こっちで就職すれば、クルマも買ってやるし、海外旅行の費用も出してあげる」「田舎に戻るのが嫌なら、せめて高崎あたりで就職してくれないか。それなら一時間で会いに行ける」などと言い、東京での就職に反対し続けたそうです。
つれあいが生まれた当時、子供は3人くらいいるのが当たり前でした。実際、つれあいの弟は、生家に戻り、義父が経営する会社を継いで義父母、弟夫婦、3人の孫と幸せな大家族を形成していました。我が子と共に過ごすことができていたのです。それでもなお義母は、「○○子(私のつれあいのこと)が側にいてくれたらねぇ」と亡くなるまで言い続けていました。話し相手になる女の子が欲しかったのでしょう。
現在は、少子化が進み、一人っ子が増えています。親にしてみれば、たった一人の子供が大都会に出ていって戻らなくなってしまえば、老後はさみしいですし、家や田畑、墓までも、不要の、いやむしろ邪魔な存在になり打ち捨てられてしまう、そう考えてしまうのは自然なことです。
難関大で学んだ経験を生かした好条件の就職先が東京圏にしかない、という状況を解消しない限り、いくら公教育に予算をつぎ込んでも、事態が大きく改善することはないと考えます。受験格差の問題は、学校教育行政だけで解決することは難しい問題なのです。教育行政だけに対応を押し付けるのではなく、全行政がそれぞれの分野で問題解決に関わるという体制が求められているように思います。