ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

理系と国力

2023-05-10 08:01:23 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「教育と国力」5月5日
 『「18歳まで数学必修」激論』という見出しの記事が掲載されました。『英国のスナク首相が、イングランドの18歳までの全児童・生徒を対象に数学を必修化する方針を打ち出している』ことについて報じる記事です。記事ではその背景として、『「英国は先進国の中で、最も数字に弱い国の一つだ」と指摘。人口6700万人の英国で「800万人以上の大人が、9歳児に期待される計算能力を下回っている」と述べ~』としています。
 我が国に当てはめて言うと、1600万人の成人が、分数や少数の四則計算ができない、というイメージになります。成人の7人に1人です。信じがたい数字です。何か根拠があるのか、疑いたくなってしまいます。
 ただ、考えさせられたのは、別の部分の記述です。『79ヵ国・地域の15歳を対象とした「数学的リテラシー」のテストで、英国は18位。欧州ではドイツ(20位)、フランス(25位)より上だったが、エストニア(8位)、オランダ(9位)、ポーランド(10位)などには及ばなかった(略)2位はシンガポール、3位はマカオ、4位以下は香港、台湾、日本、韓国と続き~』です。
 我が国では、学校教育について、国力に結びつけて考える傾向があります。特に、科学技術に直結する理系の学力については。そして理系のあらゆる分野の基盤になるのが数学なのです。近年、我が国では、国力(科学技術力)の衰えが指摘され、その要因の一つとして科学技術力の定価があげられています。その指摘が正しいとすれば、科学技術の基盤となる数学的リテラシーも低いはずです。そう考えたとき、今回の記事の記述は「?」です。
 ドイツ・英国・フランスという数学的リテラシーが劣った国は我が国より国力が劣っているのでしょうか。人口が違いますからGNPは我が国が上でも、近年の経済成長率や国民1人当たりの所得の伸びは、我が国の方が下です。「?」です。我が国の低迷を科学技術の低迷、理系の低迷とする見方には問題があるのではないでしょうか。
 また、スナク氏は、計算能力に言及していますが、我が国では計算能力は軽視されています。計算能力は数学的リテラシーには関係が薄く、計算などは電卓で行えばよい、という主張が力をもっているのが我が国の現状なのです。
 我が国では、9歳児並みの計算ができない成人など、おそらく数%にすぎないはずです。つまり、計算能力は英国に比べて圧倒的に高い、そして、数学的リテラシーは、欧州先進国より上、ということは、電卓など使わずに計算をきちんとコツコツさせることが実は数学的リテラシー向上に意味があるのではないかという疑問が浮かんできます。
 我が国の現在の数学教育、評価はどうあるべきなのでしょうか。

 

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