ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

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2024-08-31 07:22:52 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「お断り」8月25日
 ノンフィクション作家河合香織氏が、『広がる名前非公表 信頼こそカスハラ防ぐ』という表題でコラムを書かれていました。その中で河合氏は、『昨今、SNSに職員の名前や顔写真をさらされる、ストーカー行為をされるなど、利用者による迷惑行為「カスタマーハラスメント」対策の一環として、名前の表示を控える動きが広がってきている』と指摘なさっています。そう言えば、私の母がお世話になっていたグループホームもそうでした。
 さらに河合氏は『名前を開示しない方針は、医療界にも広がっている』ことを紹介し、『医療現場でのカスハラは深刻である』と述べていらっしゃるのです。私が注目させられたのは、その対策についての記述の中の一文でした。
 『百貨店やコンビニなど小売業では、悪質な場合は来店を拒否できるという基本方針が発表されている。しかし、医療界では問題はもっと複雑だ。なぜなら、医師には医師法による応召義務があり、診療拒否ができないと考えられてきたからだ(略)実際には、医療機関と患者間の信頼関係が破綻している場合には、緊急性がない限り、医師は診療を拒むことができるという通知を19年に厚労省が出している』。
 へぇーそうなんだ、と驚きました。不勉強でした。学校においても、保護者からの「カスハラ」はあります。しかし、学校も教員も我慢し耐えるばかりでした。それは、学校は子供への教育・指導を拒否することは許されないと考えているからです。執拗なカスハラを繰り返す保護者に対し、「あなたとは信頼関係が壊れているので、あなたのお子さんの受け入れは拒否します」とは言えないということです。
 しかし、学校と同じだと考えていた病院が、診療拒否ができるのであれば、学校も同じような権利を有するべきと考えてもおかしくありません。医師の場合は、緊急性のある場合という例外規定が設けられているようですが、学校においては、緊急性が生じるケースは想定できません。今すぐこの学校で、授業を受けなければならないというケースはないはずです。他所の学校でも、明日でも明後日でも、同じ内容の指導を受けることは可能ですから。
 そうであれば、管轄の教委などとも十分に相談連携した上で、保護者に通告するという「武器」を学校側がもつことによって、カスハラを減らし、対立する保護者との妥協点を探る契機とすることができるのではないかと考えるのです。
 いじめ問題などで、保護者の側から「この学校は信用できない」という趣旨の訴えがあり、転校を認めるというケースは少なくありません。私も指導室長時代に何件も対応しました。それを学校側からも訴える権利を認めるということは検討されて然るべきです。もちろん、安易な権利行使は厳に慎むべきですし、教委が弁護士などで構成する委員会を設けて、通告の是非について検討するというような手続きを整える必要がありますが、十分に検討されるべき課題だと思います。

 

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