今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

「犀星忌」室生犀星の忌日。

2006-03-26 | 人物
今日(3月26日)は、「犀星忌」。室生犀星(むろうさいせい)の1962(昭和37)年の忌日。
高村光太郎とともに口語自由詩を完成させたと言われており、現代詩人にも多大な影響を与えた小説家・詩人。
1889(明治22)年9月1日、石川県金沢市にて、加賀藩の足軽組頭を勤めた父と、同家の女中との間に不義の子として生まれ、生後まもなく、犀川大橋詰の雨宝院・住職、室生真乗の内縁の妻赤井ハツにもらい子にだされ、照道(てるみち)と名付けられる。 尋常小学校に入学後の7歳の時に、室生真乗の養嗣子となり、室生姓となる。
13歳 の時、義母に高等小学校を退学させられて地方裁判所の給仕として働き始める。ここで上司から俳句の手ほどきを受け、新聞への投句を始め15歳 の時に「北國新聞」に俳句が掲載され、その後、詩・短歌などにも手を染める。1910(明治43)年21歳の時文学で生きる道を志して初めて上京するが翌年生活に困窮して帰郷すぐまた再上京するなど上京、帰郷を繰り返しており、よほど、生活に困っていたようである。1913(大正2)年 北原白秋に認められ白秋主宰の詩集『朱欒(ざんぼあ)』で詩壇に登場する。また、同じく無名時代の萩原朔太郎とも親交をもつようになり、抒情詩人として活躍をはじめた。そして、翌年、萩原朔太郎・山村暮鳥と雑誌を創刊。そして、1918(大正7)年、『愛の詩集』『抒情小曲集』を自費出版し、絶賛される。翌1919年(大正8)年 、初めての本格的小説「幼年時代」が「中央公論」に掲載され、作家の道へ。1934(昭和9)年 「あにいもうと」の連載開始を期に「詩よ君とお別れする」を発表するなど詩と決別しようとし、その後、 「戦死」(第3回菊池寛賞受賞)、 「性に目覚める頃」「杏っ子」など小説を多作する。1962(昭和37)年3月26日 肺癌の為に死去。<72>従四位に叙せられ、勲三等瑞宝章を贈られる。
「ふるさとに身もと洗はる寒さかな」(室生犀星)
私生児として出生し、生まれてすぐに犀川べりの雨宝院という寺の住職のところへ、もらい子にだされ、高等小学校も3年で中退させら、13歳で金沢区裁判所に給仕として勤めた犀星。恵まれない運命と貧しい生活の中にも、金沢という城下町は犀星に、不遇な境遇をのり越えて、俳句を学ばせ、文学への道を示し、詩、小説、随筆など多彩な文学を書かせた。筆名の犀星の「犀」は、犀川の「犀」。その川から不屈の精神を汲み上げ、「星」の字に象徴されるように偉くなりたいという上昇の願望から付けられたものという。
「美しき川は流れたりその畔りに我は住みぬ」の「犀川」の詩と、犀川中流の犀星碑にも刻まれた「杏よ花着け地ぞ早やに輝け」の詩にみられるように、犀川はまさに、彼の文学の源泉であった。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや」
室生犀星の初期抒情詩を集めた『抒情小曲集』の中の作品「小景異情(その二)」。
この有名なふるさとの詩からは、21歳のときに、文人を志し、故郷を捨てて東京に出たものの生活に困窮しては帰郷していた当時の心情が、痛いほどに感じ取れる。そして、又、そこには、犀星の故郷の山河に対する深い思いとともにそこに生活する小さな弱い生き物に対する慈しみの心が感じられる。
貧しくとも、不運に見舞われようとも、けなげに、真っ正直に、あるいは、しぶとく、たくましく生きてきた日本人。喜びがあり、悲しみがあり、希望があり、絶望があった。
かって、生まれ故郷を後にした多くの人にとって、故郷は記憶の中に生きる懐かしい山河であり、生活をした町の風景であった。世紀末の今、血縁の故郷は荒れ果て、山河は荒れ果て、かっての面影も消え行くばかりである。故郷は、いつか辿り着きたいと願いながら、決して、辿り着けない幻の世界になろうとしている。
以下では、室生犀星:作詞、磯部 俶(とし):作曲「ふるさと」の素敵な曲が解説付きで聴けますよ。是非、聞いてみると良い。
室生犀星:作詞、磯部 俶:作曲「ふるさと」
(画像は、愛の詩集―室生犀星詩集。角川文庫)
参考:
室生犀星記念館ホームページ
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/bunho/saisei/index.htm
室生犀星 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%A4%E7%94%9F%E7%8A%80%E6%98%9F
室生犀星
http://www.kanazawa-city.ed.jp/nomachi-e/saisei/saisei.htm
松岡正剛の千夜千冊『杏っ子』室生犀星
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0870.html
雨宝院(金沢) : 楽天トラベル
http://kanko.tabimado.net/resource/SHIS010087/
ふるさと
室生犀星(むろおさいせい):作詞  磯部 俶(とし):作曲
http://www.geocities.co.jp/MusicHall/6654/hurusatomuroosaisei.htm