おもちゃ市場1兆円に 成長支える“キダルト”とは NHK 2024年9月10日 18時22分
このところ、おもちゃの市場が盛り上がっているのをご存じでしょうか。昨年度の市場規模は、初めて1兆円を超え、拡大が続いています。
少子化が進む中で市場が成長しているのはなぜなのか?
理由をひもとくキーワードは「キダルト」です。
(経済部記者 野中夕加)
おもちゃにも“デジタル”
8月から9月にかけての4日間、国内最大規模のおもちゃの展示会「東京おもちゃショー」が開かれました。
国内外の190あまりのメーカーから出展されたのは、およそ3万5000点。
社会のデジタル化を反映し、子どものおもちゃでも“デジタル”が1つのトレンドとなっています。
あるメーカーが出展していたのは、Wi-Fiで通信できる小型の端末です。
およそ1400種類のオリジナルの絵文字を組み合わせて、秘密の暗号のように送り合うことができます。
開発の狙いについてメーカーの担当者は、「あえて文字ではなく絵文字だけに限定することで、メールやSNSと差別化する狙いがある」と話します。
スマートフォンでメッセージを送り合うことに慣れている子どもたちにとって、“絵文字だけを送る”というのが、逆に新鮮に感じるのではないか、というわけです。
成長けん引する“キダルト”とは
少子化にもかかわらず、国内のおもちゃ市場は、拡大が続いています。
15歳未満の子どもの数は、2014年度からの10年間で12%あまり減少。
一方、同じ10年間で、国内のおもちゃ市場の規模は26%あまり増加し、昨年度は初めて1兆円を超えました。(日本玩具協会調べ)
特に成長著しいのが、「カードゲーム・トレーディングカード」です。
前の年度より18%あまり増え、全体のおよそ3割を占めるまでになっています。
子どもの数は減っているのに、なぜおもちゃ市場の成長は続いているのか。
その理由をひもとくキーワードが「キダルト」です。
子ども(キッズ)と大人(アダルト)を組み合わせた造語で、“子ども心を持ち続ける大人”という意味だといいます。
メーカー各社ではいま、“大人も遊べる”“大人も買いたくなる”そんなキダルト向け商品の開発に力を入れています。
大人向けのブランドも
都内に本社を置くメーカーは、ことし7月、ロボットやプラモデルなどのブランドを新たに立ち上げました。
最大の特徴は、ブランドの対象年齢を15歳以上としたことです。
これまでに合金を使ったロボットや、可動性を高めたプラモデルキットなど、子ども向けにはないリアルさや精巧さにこだわった9つのシリーズを発表。
対象年齢を15歳以上としたことで、幼い子ども向けの商品ではできない“とがり”のあるデザインなども採用できるようになったということです。
タカラトミー コレクター事業部マーケティング課 内藤豪さん
「キダルト向けのビジネスを拡充するにあたって、子ども向けと大人向けの商品を明確に切り分けて展開する必要があると感じていた。大人がこれらの商品を見た時に、自分の子どもの頃と比べてこんなに進化しているのかという驚きを体感してもらえると考えている。今後の需要は高まるとみていて、より細かなニーズに応えるためシリーズのラインアップを増やしていきたい」
メーカーによると、商品の予約開始以降、当初の計画を上回る注文が寄せられているといいます。
アジア圏を中心に海外からも反響があり、国内よりも海外からの注文が多い商品もあるということで、今後は中国や韓国などへの売り込みも強化する方針です。
定番商品を進化させる動きも
キダルトの需要を取り込もうと、定番の商品を進化させる動きも相次いでいます。
子ども時代に遊んだおもちゃには、親しみや懐かしさを感じる人も少なくありません。
定番の商品をリニューアルすることで、大人に再び手にとってもらおうというのが狙いです。
その1つが、別のメーカーが販売しているこちらのヨーヨーです。
このシリーズが最初に発売されたのは、1997年。
発売以来、世界で累計およそ3000万個売れた人気の商品で、新たなシリーズが投入されたのはおよそ10年ぶりです。
新たなヨーヨーは、手に持った状態でひもを引くだけで、本体を投げなくても高速回転するようになっています。
このため、初めて手にとった人でも、比較的簡単に、さまざまな“技”を身につけることができるといいます。
メーカーの担当者は、「発売当初に子どもだった人がいま親になり、子どもを持つ年代になっている。親子2世代で遊んでもらいたいという思いでこのタイミングで新たなシリーズを投入した」と話します。
おもちゃ店も変化 今後の市場は
キダルトの取り込みには、小売業界も力を入れています。
大手おもちゃ販売チェーンでは、去年10月から全国の30あまりの店舗に順次、キダルトコーナーを設けました。
特に、都心にある店舗では商品のラインナップを充実させていて、夕方以降、会社員や学生が多く訪れているということです。
日本玩具協会見本市委員会の藤井大祐専門委員は「新しい層の新しいニーズを取り込み、多様性のある商品が出てきていることが市場規模の拡大につながっている。おもちゃはすべての年齢に向けた商品になっていて、キダルトやインバウンドなどさまざまな層を取り込んでいけば、まだまだ伸びしろはあるとみている」と話していました。
少子化が進む中で、どうビジネスを成長させていくか。
ターゲットとなる層を見直すことで拡大を続けるおもちゃ市場の動向は1つのヒントとなりそうです。
(8月30日 「おはBiz」などで放送)
このところ、おもちゃの市場が盛り上がっているのをご存じでしょうか。昨年度の市場規模は、初めて1兆円を超え、拡大が続いています。
少子化が進む中で市場が成長しているのはなぜなのか?
理由をひもとくキーワードは「キダルト」です。
(経済部記者 野中夕加)
おもちゃにも“デジタル”
8月から9月にかけての4日間、国内最大規模のおもちゃの展示会「東京おもちゃショー」が開かれました。
国内外の190あまりのメーカーから出展されたのは、およそ3万5000点。
社会のデジタル化を反映し、子どものおもちゃでも“デジタル”が1つのトレンドとなっています。
あるメーカーが出展していたのは、Wi-Fiで通信できる小型の端末です。
およそ1400種類のオリジナルの絵文字を組み合わせて、秘密の暗号のように送り合うことができます。
開発の狙いについてメーカーの担当者は、「あえて文字ではなく絵文字だけに限定することで、メールやSNSと差別化する狙いがある」と話します。
スマートフォンでメッセージを送り合うことに慣れている子どもたちにとって、“絵文字だけを送る”というのが、逆に新鮮に感じるのではないか、というわけです。
成長けん引する“キダルト”とは
少子化にもかかわらず、国内のおもちゃ市場は、拡大が続いています。
15歳未満の子どもの数は、2014年度からの10年間で12%あまり減少。
一方、同じ10年間で、国内のおもちゃ市場の規模は26%あまり増加し、昨年度は初めて1兆円を超えました。(日本玩具協会調べ)
特に成長著しいのが、「カードゲーム・トレーディングカード」です。
前の年度より18%あまり増え、全体のおよそ3割を占めるまでになっています。
子どもの数は減っているのに、なぜおもちゃ市場の成長は続いているのか。
その理由をひもとくキーワードが「キダルト」です。
子ども(キッズ)と大人(アダルト)を組み合わせた造語で、“子ども心を持ち続ける大人”という意味だといいます。
メーカー各社ではいま、“大人も遊べる”“大人も買いたくなる”そんなキダルト向け商品の開発に力を入れています。
大人向けのブランドも
都内に本社を置くメーカーは、ことし7月、ロボットやプラモデルなどのブランドを新たに立ち上げました。
最大の特徴は、ブランドの対象年齢を15歳以上としたことです。
これまでに合金を使ったロボットや、可動性を高めたプラモデルキットなど、子ども向けにはないリアルさや精巧さにこだわった9つのシリーズを発表。
対象年齢を15歳以上としたことで、幼い子ども向けの商品ではできない“とがり”のあるデザインなども採用できるようになったということです。
タカラトミー コレクター事業部マーケティング課 内藤豪さん
「キダルト向けのビジネスを拡充するにあたって、子ども向けと大人向けの商品を明確に切り分けて展開する必要があると感じていた。大人がこれらの商品を見た時に、自分の子どもの頃と比べてこんなに進化しているのかという驚きを体感してもらえると考えている。今後の需要は高まるとみていて、より細かなニーズに応えるためシリーズのラインアップを増やしていきたい」
メーカーによると、商品の予約開始以降、当初の計画を上回る注文が寄せられているといいます。
アジア圏を中心に海外からも反響があり、国内よりも海外からの注文が多い商品もあるということで、今後は中国や韓国などへの売り込みも強化する方針です。
定番商品を進化させる動きも
キダルトの需要を取り込もうと、定番の商品を進化させる動きも相次いでいます。
子ども時代に遊んだおもちゃには、親しみや懐かしさを感じる人も少なくありません。
定番の商品をリニューアルすることで、大人に再び手にとってもらおうというのが狙いです。
その1つが、別のメーカーが販売しているこちらのヨーヨーです。
このシリーズが最初に発売されたのは、1997年。
発売以来、世界で累計およそ3000万個売れた人気の商品で、新たなシリーズが投入されたのはおよそ10年ぶりです。
新たなヨーヨーは、手に持った状態でひもを引くだけで、本体を投げなくても高速回転するようになっています。
このため、初めて手にとった人でも、比較的簡単に、さまざまな“技”を身につけることができるといいます。
メーカーの担当者は、「発売当初に子どもだった人がいま親になり、子どもを持つ年代になっている。親子2世代で遊んでもらいたいという思いでこのタイミングで新たなシリーズを投入した」と話します。
おもちゃ店も変化 今後の市場は
キダルトの取り込みには、小売業界も力を入れています。
大手おもちゃ販売チェーンでは、去年10月から全国の30あまりの店舗に順次、キダルトコーナーを設けました。
特に、都心にある店舗では商品のラインナップを充実させていて、夕方以降、会社員や学生が多く訪れているということです。
日本玩具協会見本市委員会の藤井大祐専門委員は「新しい層の新しいニーズを取り込み、多様性のある商品が出てきていることが市場規模の拡大につながっている。おもちゃはすべての年齢に向けた商品になっていて、キダルトやインバウンドなどさまざまな層を取り込んでいけば、まだまだ伸びしろはあるとみている」と話していました。
少子化が進む中で、どうビジネスを成長させていくか。
ターゲットとなる層を見直すことで拡大を続けるおもちゃ市場の動向は1つのヒントとなりそうです。
(8月30日 「おはBiz」などで放送)