千葉 林に土砂を搬入し無断で占拠か 産廃処理業者の社長ら逮捕 NHK 2025年4月2日 16時37分
千葉県内で、空き地や山林に建設残土などが不法に積み上げられるケースが相次いでいます。木更津市でも林の木が伐採されて土砂が積み上げられているのが見つかり、警察は、所有者に無断で土地を占拠したとして市内の産業廃棄物処理業者の社長らを逮捕しました。
木更津市によりますと去年、市内にある林で、広範囲に木が伐採され大量の土砂が運び込まれているのが見つかりました。
警察によりますと付近の住民からの通報で警察が捜査した結果、このうち2000平方メートル余りの範囲については、市内にある産業廃棄物処理業者が木の伐採や土砂の搬入を行ったとみられることが分かったということです。
このため警察は、去年7月までのおよそ1年間にわたって所有者に無断で土地を占拠したとして、業者の社長の高山嵐士容疑者(28)ら3人を不動産侵奪の疑いで逮捕しました。
警察は捜査に支障があるとして認否を明らかにしていません。
土砂には建設残土が多く含まれているとみられ、警察が詳しいいきさつを調べています。
千葉県では、多古町の空き地に土砂を無許可で運び込んだとして、去年茨城県の業者が摘発されるなど、空き地や山林に不法に土砂が積み上げられるケースが相次いでいます。
千葉県内 危険な「盛り土」後絶たず
千葉県によりますと、県内には1990年代ごろから首都圏各地で出た建設残土などが多く持ち込まれるようになり、危険な「盛り土」となっている場所も少なくないということです。
背景には高速道路で結ばれて比較的 距離も近く、起伏が少ない千葉が許可を得ないまま投棄するには「手ごろな場所」と見なされていることがあるとみられています。
県は無計画な土砂の搬入によって土壌汚染や崩落のおそれがあるとして、1997年に都道府県としては全国で初めて一定の広さ以上の盛り土や埋め立てには許可が必要とする条例を制定しましたが、その後も不法な盛り土や埋め立ては後を絶ちませんでした。
千葉県が4年前に行った点検では、必要な手続きや災害を防ぐ対策が取られていないなど、何らかの是正措置が必要な「盛り土」が県内で329か所見つかり、全国で確認された数のおよそ3割を占めました。
指導や摘発も撤去につながらない点が課題
不法な盛り土や埋め立ては、土砂を搬入した側が行政指導を受けたり摘発されたりしても、そのことが撤去につながらない点が課題です。
千葉県では、多古町で町の許可を得ずに積み上げられ高さが30メートルほどになった盛り土が2021年6月に崩れて県道に流れ込みました。
土砂が流れ出たすぐ下の住宅の住民にけがはありませんでしたが、1年5か月にわたって避難生活を余儀なくされ、流れ出た土砂は町が行政代執行で撤去しました。
しかし、積まれた土砂のほとんどはそのままの状態で今も放置されています。
町は、その後も土砂を撤去するよう行政指導したり、措置命令を出したりしていますが、運び込んだ業者は従っていません。
毎日、崩落の兆候がないかなど見回っているということですが、この間に、土地の所有者は変わり、さらに別の業者が上に太陽光パネルを設置するなど不法な「盛り土」を前提とした利用が進んでいます。
崩落の際に避難せざるをえなくなった秋山文江さんは「土の量を見ると撤去は難しいと思うので、少しでも崩れないように対策を取ってもらいながら、何とか折り合いを付けて生きていくしかない。きょうも何事もなく生きられてよかったと思う」と話しています。
一方、同じ多古町では、建設残土などが無許可で高さ30メートル以上積み上げられた別の場所をめぐって去年、運び込んだ業者が摘発されましたが、この現場でも不法な盛り土は撤去されていません。
不法な盛り土が複数確認されている多古町生活環境課の木内輝芳課長は、「撤去を求めても資金繰りや受け入れ先がないことを理由に先延ばしされている。一度持ち込まれてしまうと次々と盛られて撤去させるのは難しく、住民と連携を取りながらいち早く把握してそれ以上持ち込ませないことが重要になってくると思う」と話していました。
専門家「開発事業者が責任を持つ仕組みに」
不法な盛り土をめぐっては、2021年に静岡県熱海市で起きた土石流をきっかけに国が規制強化に乗り出し、おととし「盛土規制法」と呼ばれる法律が施行され、盛り土となる残土を搬入する処理業者や、運び込まれる土地の所有者に対して罰則が規定されるなどしました。
しかし、建設残土の問題に詳しい専門家は、この法律では残土を出す側は規制されず、不法な盛り土を根絶するには実効性が十分ではないと指摘しています。
桜美林大学の藤倉まなみ教授は、「開発事業者が処分費用を抑えることが不法な投棄につながっている。どこでどのように処分されたかまで責任を持ち相応の負担をすべきだ。開発事業者がきちんと責任を持つ仕組みに変えなければ負の遺産がどんどん増えてしまう」と話しています。
また、すでにある不法な「盛り土」の撤去については、「撤去は費用がかかるうえ処分場を探す必要もあり、規模によっては現実的に難しいこともある。早めに発見し、土砂を排出した事業者にも責任を問うことが必要だ」と指摘しています。
千葉県内で、空き地や山林に建設残土などが不法に積み上げられるケースが相次いでいます。木更津市でも林の木が伐採されて土砂が積み上げられているのが見つかり、警察は、所有者に無断で土地を占拠したとして市内の産業廃棄物処理業者の社長らを逮捕しました。
木更津市によりますと去年、市内にある林で、広範囲に木が伐採され大量の土砂が運び込まれているのが見つかりました。
警察によりますと付近の住民からの通報で警察が捜査した結果、このうち2000平方メートル余りの範囲については、市内にある産業廃棄物処理業者が木の伐採や土砂の搬入を行ったとみられることが分かったということです。
このため警察は、去年7月までのおよそ1年間にわたって所有者に無断で土地を占拠したとして、業者の社長の高山嵐士容疑者(28)ら3人を不動産侵奪の疑いで逮捕しました。
警察は捜査に支障があるとして認否を明らかにしていません。
土砂には建設残土が多く含まれているとみられ、警察が詳しいいきさつを調べています。
千葉県では、多古町の空き地に土砂を無許可で運び込んだとして、去年茨城県の業者が摘発されるなど、空き地や山林に不法に土砂が積み上げられるケースが相次いでいます。
千葉県内 危険な「盛り土」後絶たず
千葉県によりますと、県内には1990年代ごろから首都圏各地で出た建設残土などが多く持ち込まれるようになり、危険な「盛り土」となっている場所も少なくないということです。
背景には高速道路で結ばれて比較的 距離も近く、起伏が少ない千葉が許可を得ないまま投棄するには「手ごろな場所」と見なされていることがあるとみられています。
県は無計画な土砂の搬入によって土壌汚染や崩落のおそれがあるとして、1997年に都道府県としては全国で初めて一定の広さ以上の盛り土や埋め立てには許可が必要とする条例を制定しましたが、その後も不法な盛り土や埋め立ては後を絶ちませんでした。
千葉県が4年前に行った点検では、必要な手続きや災害を防ぐ対策が取られていないなど、何らかの是正措置が必要な「盛り土」が県内で329か所見つかり、全国で確認された数のおよそ3割を占めました。
指導や摘発も撤去につながらない点が課題
不法な盛り土や埋め立ては、土砂を搬入した側が行政指導を受けたり摘発されたりしても、そのことが撤去につながらない点が課題です。
千葉県では、多古町で町の許可を得ずに積み上げられ高さが30メートルほどになった盛り土が2021年6月に崩れて県道に流れ込みました。
土砂が流れ出たすぐ下の住宅の住民にけがはありませんでしたが、1年5か月にわたって避難生活を余儀なくされ、流れ出た土砂は町が行政代執行で撤去しました。
しかし、積まれた土砂のほとんどはそのままの状態で今も放置されています。
町は、その後も土砂を撤去するよう行政指導したり、措置命令を出したりしていますが、運び込んだ業者は従っていません。
毎日、崩落の兆候がないかなど見回っているということですが、この間に、土地の所有者は変わり、さらに別の業者が上に太陽光パネルを設置するなど不法な「盛り土」を前提とした利用が進んでいます。
崩落の際に避難せざるをえなくなった秋山文江さんは「土の量を見ると撤去は難しいと思うので、少しでも崩れないように対策を取ってもらいながら、何とか折り合いを付けて生きていくしかない。きょうも何事もなく生きられてよかったと思う」と話しています。
一方、同じ多古町では、建設残土などが無許可で高さ30メートル以上積み上げられた別の場所をめぐって去年、運び込んだ業者が摘発されましたが、この現場でも不法な盛り土は撤去されていません。
不法な盛り土が複数確認されている多古町生活環境課の木内輝芳課長は、「撤去を求めても資金繰りや受け入れ先がないことを理由に先延ばしされている。一度持ち込まれてしまうと次々と盛られて撤去させるのは難しく、住民と連携を取りながらいち早く把握してそれ以上持ち込ませないことが重要になってくると思う」と話していました。
専門家「開発事業者が責任を持つ仕組みに」
不法な盛り土をめぐっては、2021年に静岡県熱海市で起きた土石流をきっかけに国が規制強化に乗り出し、おととし「盛土規制法」と呼ばれる法律が施行され、盛り土となる残土を搬入する処理業者や、運び込まれる土地の所有者に対して罰則が規定されるなどしました。
しかし、建設残土の問題に詳しい専門家は、この法律では残土を出す側は規制されず、不法な盛り土を根絶するには実効性が十分ではないと指摘しています。
桜美林大学の藤倉まなみ教授は、「開発事業者が処分費用を抑えることが不法な投棄につながっている。どこでどのように処分されたかまで責任を持ち相応の負担をすべきだ。開発事業者がきちんと責任を持つ仕組みに変えなければ負の遺産がどんどん増えてしまう」と話しています。
また、すでにある不法な「盛り土」の撤去については、「撤去は費用がかかるうえ処分場を探す必要もあり、規模によっては現実的に難しいこともある。早めに発見し、土砂を排出した事業者にも責任を問うことが必要だ」と指摘しています。