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南海トラフ臨時情報の疑わしさ:「科学的にあまり意味はない」

2024-08-16 14:26:59 | 災害情報
©東京新聞



南海トラフ臨時情報の疑わしさ…地震学者が語る「科学的にあまり意味はない」とデータごちゃまぜの内実 東京新聞 2024年8月15日 16時30分

<南海トラフ臨時情報を問う①>
 南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」の呼びかけは、政府の発表から1週間が経過した15日、終了した。幸いにも、期間中に巨大地震は起きなかった。だが、お盆休みと重なったため観光地では予約のキャンセルなど大きな影響が出た。臨時情報に問題はなかったのか。南海トラフ地震を巡り科学と政治の密接な関係を取材し、著書「南海トラフ地震の真実」で菊池寛賞を受賞した東京新聞社会部の小沢慧一記者が、臨時情報のあり方を3回にわたって問う。(続編は後日公開します)

◆根拠があまりに薄弱
 「この程度の情報を社会に出す意味が本当にあるのか」。2016~17年に臨時情報を作る上で地震学者たちが地震予測の可能性を検討した調査部会。部会を終えた委員の一人は当時そう話していた。
 「不確実な情報を防災に生かす」として議論が重ねられた臨時情報。社会に大きな影響を与える情報にもかかわらず、それを支える根拠があまりにも薄弱なことから、2019年に運用が始まってからも、専門家からは同様の疑問の声が上がっていた。
 科学的にどこがおかしいのか。名古屋大の鷺谷威教授(さぎや・たけし、地殻変動学)に聞くと、臨時情報の根拠となっている統計がそもそも問題だという。「内閣府が検討のために寄せ集めたデータ。学術的意義はほぼない」
◆古すぎるデータ、信ぴょう性に疑問
 南海トラフ地震臨時情報巨大地震注意(注意情報)の統計とは、1904~2014年に発生した世界の地震データで、マグニチュード(M)7の地震後、7日以内にM8以上の地震が起きた例は1437回中6回としている。
 だが、これらの事例は南海トラフのような「海溝型」だけでなく、内陸での地震などさまざまなメカニズムの地震を含んでいる。観測精度の信ぴょう性の疑問もある。データに一定の質が担保されるのは、一般的に1970年代以降だとされるからだ。
 鷺谷教授は「気象庁がまとめたごちゃまぜのデータで学術論文としては通らないだろう。この統計から言えることは大きな地震が起きやすいという地震学の常識を表しているに過ぎない」と語る。
◆「科学的にはやりすぎ」と専門家
 臨時情報は想定震源域の中で地震が起きたか否かを発表の基準とするが、この想定震源域自体にも科学的な問題があるという。現在の想定震源域は2011年3月の東日本大震災後の2012年に見直されたものだが、「想定外恐怖症」という空気の中で策定されたもので、当時から専門家からは「科学的にはやりすぎ」と批判があった。
 東日本大震災後は想定を出すための前提が「歴史上最大(ありえる最大)」から「考えられる最大」に変わった。「科学的に否定できないものは採り入れる」という方針のもと、否定できない×否定できない×否定できない…と、03年に比べ範囲は2倍、想定死者数は13倍に増加した。
 「過去にこのサイズの地震が起きた記録はなく、『東日本大震災が南海トラフで起きた』場合を当てはめた」。検討委員だった橋本学・元京都大防災研究所教授は振り返る。政府は地震学者の委員たちに発生頻度を出すよう求めたが、「どう考えても出せない」と拒否した。そのため、「1000年に一度かそれより発生頻度が低い」という表現に抑えられたという経緯がある。
◆日向灘の地震が南海トラフに影響を与えたとする研究はない
 8月8日に起きた地震の震源域である日向灘の西側はこうして広げられたエリアにある。京都大防災研究所の西村卓也教授によると、過去の日向灘の地震が南海トラフに影響を与えたとする研究はない。「広げたのは南海トラフが起きたときに日向灘に影響を与える可能性が否定できないことが主で、逆はあまり考えられていない」と説明する。
 鷺谷教授は「想定震源域自体あまりしっかりした根拠がない。その線の内側か外側かだけで南海トラフ地震の発生可能性を判定しても、科学的にあまり意味はない」と指摘する。
 注意情報の南海トラフで想定するM7の後に、M8が実際に起きたケースは知られていない。だが、東日本大震災では3月9日にM7.3の前震が起き、その2日後にM9の地震が発生した。安政地震(1854年)や、昭和東南海地震(1944年)では、注意情報より一段警戒度が高い「巨大地震警戒」のケースが発生している。
◆防災的な判断と科学は別
 こうした教訓から備えを再確認する意義はある。だが、それはあくまで防災的な判断だ。臨時情報は政府が情報を出すだけの立場で、対策を講じたことによって実際に生じるコストや損失は自治体、企業、個人が責任を負う。
 だからこそ「科学に基づいた確度の高い情報ではない」ということもセットで伝えることは、それぞれの主体が的確な判断をする上で不可欠だ。
 小沢慧一(おざわ・けいいち) 2011年入社。横浜支局、東海報道部(浜松)、名古屋社会部を経て東京社会部。2020年の連載「南海トラフ80%の内幕」は、同年に「科学ジャーナリスト賞」、2023年に「第71回菊池寛賞」をそれぞれ受賞。



ビーチ閉鎖、電車減速…どこまで必要だった? 南海トラフ臨時情報、対応は「受け手まかせ」の大問題 東京新聞 2024年8月16日 06時00分

政府は15日午後5時、宮崎県で震度6弱を観測した8日の地震を受けて続けていた南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に伴う防災上の呼びかけを終了した。「不確実な情報を防災に生かす」として始まった臨時情報の初の発表は、その伝え方に課題が浮かんだ。(小沢慧一)
◆首相が検証を指示、指針見直しへ
 岸田文雄首相は15日、一連の対応の検証を松村祥史防災担当相に指示。検証結果に基づき、臨時情報を受けて国民や企業などが取るべき対応を示した指針を見直す方針だ。松村氏は会見で「情報発信の内容を国民の皆さんにわかりやすく、また日頃からの経済団体との連携も必要不可欠だと改めて感じた」と話した。
臨時情報は、地震予知を前提とする大規模地震対策特別措置法(大震法)の「警戒宣言」の代わりに設けられた。地震予知が不可能となり、統計を基に予測し不確実さをはらむ。政府は情報を出すが、具体的な対策の判断は自治体、企業、個人に委ねている。
◆伝わらなかった「社会活動継続」
 気象庁と内閣府は15日の記者会見で、地震に備えて社会活動を継続させるという趣旨が8日の発表時にしっかり伝えられていなかったのではと指摘され、担当者は「今回(しっかり伝えるというオペレーション)はなかった。次回以降、検討したい」と述べた。
8日の発表時に前面に立ったのは、政府の担当者ではなく、地震学者で「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の平田直会長だった。「地震学的には数倍高くなったことは極めて高い確率です」と強調した一方、対策について「日頃からの地震への備えを再確認して」「避難経路を確認すれば海水浴をしても問題ない」と控えめな対応にとどまっていた。
 今回の呼びかけ終了時、検討会は開催されず、平田氏の会見もなかった。呼びかけは何もなければ、1週間で終了と決まっている。
◆不確実な根拠…コスト試算も必要
 関西大社会安全学部の林能成教授は、「情報を出す効果と『空振り』になるリスクをてんびんにかける必要がある」とする。注意情報を受け、旅行のキャンセルが相次いだり、鉄道各社が減速運転をしたりと、さまざまな影響が出た。政府は過去には東海地震の「警戒宣言」が外れた場合の経済的損失を「1日数千億円」と試算したが、臨時情報に関しての試算はない。
 林氏は「防災でコストを考えることはタブーだった。臨時情報は不確実な根拠を使った防災的な行動のため、効果と副作用を検証する必要がある」と指摘した。
 南海トラフ地震 駿河湾から日向灘沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って発生する地震。政府はおおむね100〜150年間隔で起き、マグニチュード(M)8〜9級の地震が30年以内に起きる確率は70〜80%としているが、科学的な根拠は乏しい。政府は2012年、最大32万3000人が死亡するとの想定を公表している。

  ◇  ◇  
◆専門家「地震は前触れなしに起きる」
 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に基づく、政府による警戒度の高い防災対応の呼びかけが終わった。東北大の遠田(とおだ)晋次教授(地震地質学)は、臨時情報への住民の認知度が高まったとする一方で、「巨大地震の発生前には必ず臨時情報が出ると勘違いする人が出てくる恐れがある。地震は前触れなしに突然起こることの方が断然多い」と備えの継続を訴えた。
時情報を受け、海水浴場の閉鎖や花火大会の中止などの対応が取られた。遠田教授は「過剰な対応だったのでは」と指摘し、「1週間たてば、巨大地震の発生の可能性がなくなるわけではない。普段から地震時にどこに避難するかを考えて行動することが大事になる」と話した。
◆要支援者と健常者では対応も変わる
 気象庁の「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の委員を務める小原一成・東京大地震研究所教授(観測地震学)は「台風は進路を予測できるが地震は起こる確率が低く、(1週間のうちに)巨大地震が起きなくても『空振り』ではない」と強調する。
 今回の臨時情報について「地震に即時対応できるよう備えを確認する『素振り』と考えてほしい」とする。今後の課題として「注意の情報を受け、自治体などがどう具体的に対応したらいいかあまり明確でなかったかもしれない。高齢者ら避難行動要支援者と健常者では、対応の仕方も変わってくる。情報の出し方を検証し、よりきめ細かい対応が必要」と指摘した。(増井のぞみ、榊原智康)



「巨大地震注意」の期間に起きていた「短期的ゆっくり滑り」と「深部低周波地震」 気象庁「異常ではない」 東京新聞 2024年8月16日 06時00分

日向灘でマグニチュード(M)7.1の地震が発生し、南海トラフでの「巨大地震注意」の臨時情報が発表された8日から15日にかけて、紀伊半島などで「深部低周波地震」と呼ばれる微小な地震活動と、それに伴いプレート境界が緩やかにずれる「短期的ゆっくり滑り」という地殻変動が起きていた。気象庁によると、過去にも同様な現象が繰り返し起きており、特に異常な状況ではないという。(宇佐見昭彦)
◆プレートの境界がゆっくり滑ったとみられる
 今回の変動をとらえたのは三重県熊野市、津市、愛知県田原市、西尾市などに気象庁や産業技術総合研究所が設置したひずみ計や傾斜計。地下数十キロの深さで、フィリピン海プレートと陸側のプレートの境界がゆっくり滑ったとみられる。
 紀伊半島で最も大きく滑った領域(9〜10日に観測)では、モーメントマグニチュード(Mw)と呼ばれる指標で表す「滑りの規模」がMw5.9と見積もられた。14〜15日には愛知県北東部から長野県南部にかけての領域でも、Mw5.5程度の滑りが見られた。
これらの短期的ゆっくり滑りとほぼ同時に、紀伊半島の地下では8日以降、深部低周波地震(揺れの周期が長い地震)が多数発生。地震活動や滑りの発生領域は、奈良・三重県境付近から伊勢湾、さらに長野県南部へと北東に場所を移しながら続いた。
◆「これまでの範疇から外れていない」と気象庁は説明
 こうした現象は、数カ月〜1年ほどの間隔で繰り返し発生しており、近年では2021年の終わりごろや23年半ばにも、西側から北東側へ移動しながら続く一連の活動が起きていた。
気象庁の担当者は「短期的ゆっくり滑りの規模がこれまでより大きくなるとか、起きる場所が違うなどすれば別だが、今回の現象はこれまでの範疇(はんちゅう)から外れていない。Mw6台の前半ぐらいまでは従来の範疇だ」と説明した。
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