公営競技はどこへ行く

元気溢れる公営競技にしていきたい、その一心で思ったことを書き綴っていきます。

今度は46年ぶり

2006-10-31 00:00:18 | 競艇

魚谷智之が、兵庫勢としては1960年、平和島・モーターボート記念において、井上一二郎(いのうえ・かずじろう)が優勝して以来実に約46年半ぶりにSG優勝者となった。

桐生・MB記念を優勝した中村有裕が滋賀勢としては48年ぶりのSG優勝者であったが、今回の魚谷の優勝も何か、競艇の歴史というものを感じさせずにはいられない。

兵庫支部、つまり私などはよく、「尼の選手」といっているけど、この「尼の選手」が井上一二郎のあと、SGを狙える選手がいなかったのか、といえば決してそんなことはなかった。

一番惜しかったのは1973年の住之江・全国地区対抗戦の脇辰雄。翌年から「笹川賞」の新設に伴い、全国地区対抗戦としては最後の大会となった大会の優勝戦で、大本命の1コース、彦坂郁雄をスリットで完全に封じて捲り切って先制し、2周2マークまでは独走状態。普通に考えれば脇の「勝ち」である。

ところが3周1マークで大ハプニングが。なんと凍結防止用・温水循環パイプが外れ、その隙につけて回っていた井上弘に逆転されてしまった。

何とか脇は外れた循環パイプを元に戻して2着は確保したものの、悔やんでも悔やみきれない敗戦。結局、G1は数多のタイトルを手にしていた脇も、とうとうSG優勝はならなかった。

これをまさに、「脇の悲劇」というのであろうか、以後、尼の選手は決して住之江勢に勝るとも劣らない選手が少なくないにもかかわらず、住之江勢とは違ってSG優勝は遠く離れるばかりだったわけである。

他にも懐かしい名前では、元スポニチ大阪の評論家だった大北勝之、花田稔、野口徳三、石野美好らがいたし、今も元気な水野要に加え、SG・G1戦線でも活躍する星野政彦、松本勝也、吉川元浩など、これらの名前を見ると、これまで、SGを優勝していないのが不思議なくらいの顔ぶれである(ちなみに、かつては三国とほぼ交互開催となっていた近畿地区選手権においては、尼の選手の優勝者が圧倒的に多い)。

なぜ尼の選手が住之江の選手と比較してSGタイトルで大きく差をつけられる羽目になったかといえば、尼の選手には、SGを勝ってやるという気概のムードになかったことが挙げられる。

これが住之江だったら、例えば、野中VS長嶺だとか、はたまた、野中VS常松といった様相の他、今なら松井VS田中VS太田VS倉谷というように、お互いがしのぎを削る展開に今でもなっている。

それに対して尼の選手の場合、どうも地元で勝つことに主眼が置かれすぎ、つまり、地元で勝てれば客は満足してくれるだろう、というような一種、「甘え」のようなものがはびこっていたという他ない。それはつまり、ほっといても地元戦で「お山の大将」に君臨できていれば、必然的に客も喜び、また、売上げも上がってくれるといったことに甘えていたという他ないように思えたわけである。

しかし、1967年の全日本選手権優勝戦において大量フライング(5艇フライング・不成立)を発生させてしまった尼崎競艇場はその後20年間もSG開催を剥奪されてしまった。ということは、せっかく地元の水面を熟知していても、SG開催は全くめぐってくるわけがなく、ひいてはG1優勝者を多数輩出しながらも、SG戦線では苦戦を強いられる羽目になっていったわけである。

滋賀の場合は野崎進や守田俊介以外にこれといった選手が出てこなかった背景が強いが、尼は決してそんなことはなかった。だが、後一歩何かが足りない「イマイチ」状態から脱しきれていなかったわけである。

そんな「イマイチ」状態から抜け出しを試みたのが吉川元浩。「番外SG」ながらも、5年前の賞金王シリーズにおいて、2周2マークまではトップだったにもかかわらず濱野谷憲吾に逆転され、「番外」であってもSGを優勝できないというもどかしさが感じられた。

しかし吉川はそれにめげずにG1もこのあと何回か優勝しているし、SGも今回の全日本選手権を含めて何度となく優出している。つまり、尼勢の現在の活躍の源は、吉川に因るところがかなり大きい。

そして、その吉川を地元ではすっかり凌ぐ実力者にのし上がったのが魚谷である。

その魚谷も、2年前のグランドチャンピオン決定戦ではこれまた、ほとんど勝利決定のターンかと思われた矢先に痛恨のフライング。本当にこの時点までは、「脇辰雄の悲劇」がまだ続いているのかとさえ思われたものである。

しかし、今年は尼勢のG1初優勝ラッシュ。

4月常滑周年で山本隆幸、7月の多摩川周年で向所浩二、9月の大村周年で星野政彦、10月の下関周年で金子龍介がいずれも果たし、あとは待望のSG覇者が誕生するだけ、といった様相にはなっていた。

そして今回、魚谷優勝、吉川2位とワンツーを決めたことで、さらに層に厚みが増してきそうな兵庫支部、いや「尼の選手」の活躍ぶりが楽しみである。


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