競艇界の伝統を誇るSGタイトル戦、第53回全日本選手権優勝戦が29日、福岡競艇場で行われた。
進入は断然人気の1・松井繁、2・吉川元浩、3・魚谷智之がスロー域、4・中村有裕、5・重野哲之、6・坪井康晴がダッシュ域となった。
スリットは松井が遅れ気味となって捲り勢が有利な展開となり、中村が絞りに出ようとするも魚谷がブロッキング。そして吉川の捲り、さらに大外から重野がブン捲りに出るもいずれも流れて、魚谷がズバッと捲り差し。
魚谷はこのまま独走。2番手も同じ兵庫支部の吉川が重野のアタックを抑えて確保。ついに46年ぶりに兵庫支部からSGタイトルホルダーが誕生することになった。
ついに1号艇、1コースのSG優勝記録は途絶えた。そしてその流れを食い止めたのは久しくSGホルダーを出していなかった兵庫支部というよりも、「尼の選手」である魚谷だった。
魚谷は新鋭時代から思い切ったダッシュ戦を試みていて、将来性十分な選手だと思っていたし、また当時トップクラスだった星野政彦や松本勝也を抑え、瞬く間に尼の選手としてはトップの選手にのし上がった。
ただ、SGへの道のりとなるといささか険しいものがあった。
2年前のグランドチャンピオン決定戦優勝戦において、魚谷は大外の6コース回りながらも抜群のタイミングの出で、この時点でついに尼から久々にSG優勝者が出たと思った瞬間、痛恨のフライングコール。栄光かと思ったらそうではなくて奈落の底へ。この後、魚谷は1年間、SG出場をフイに。
だがその悔しい経験を今回の大一番で生かした。
住之江と双璧の「メッカ」を標榜する尼にとって、「住之江にあって尼にないもの」と再三言われ続けられたのがSG優勝者であった。
今回の魚谷は、日刊スポーツ紙上において、
「今回は何かやれそうな気がする」
とコメントしており、調子は非常にいいものと受け止められた。
準優勝戦では6コースから出ての逆転勝ち。そして今回は、中村の絞り捲り、はたまた吉川の捲り、さらには重野のブン捲りといった捲り合戦を退けての優勝なだけに、勝利の価値も大きいといえる。
これで賞金王決定戦出場を大きく手繰り寄せたが、出場となった暁には、今回のような思い切った競走を見せてほしいものだ。
吉川も果敢に攻めての2着だけによく頑張ったといえる。1マークで捲ったときには吉川にももちろん優勝のチャンスがあったが、わずかに流れてしまって同胞の魚谷にSGタイトルを先んじられてしまった。
しかし、ともすれば「負け犬根性」がしみついていた尼の選手の意識を払拭させたのはこの吉川である。
今後も魚谷とともに、いや、この2人以外にもSGをいつでも奪取できる選手がゴロゴロいる兵庫支部を牽引していってもらいたいものだ。
ただ全体的にはイン逃げでしか勝てない選手がまだまだ多いのも事実。
本格的な捌きを持った新たな常勝選手が出てこない限り売り上げダウンは止まらないでしょうね。
…やっぱりどの競技も常識を変えるスターを渇望しているものだと改めて実感したダービーでした。
魚谷もいささか展開に恵まれた感がしないでもなかったですし、確かに、本格的な捌きを持った選手が現れない限りは、またぞろ、
「1号艇、1コースでしか優勝できない」
なんてことになりそうですね。
しかしながら松井ってSG優勝戦で1号艇、1コースに入るケースが結構あるんですが、取りこぼしているケースが結構目立ちますね。
そのあたりが、こういったチャンスをことごとくモノにしていた野中あたりとは違うところなのかもしれません。