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実効性「ほとんどゼロ」の現実…5年ぶり発令の「Jアラート」

2022-10-05 11:22:40 | 安倍、菅、岸田、石破の関連記事


北朝鮮の弾道ミサイル発射により4日、5年ぶりに全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令された。とはいえ近年、北朝鮮はひんぱんにミサイルを発射しており、今年だけで今回を含め21回目。いわば「ミサイル発射慣れ」もあった中でのJアラートだった。あらためてこの警報はどう出されるのか、どう受け止めればいいのか、実効性はあるのかを考えてみる。(特別報道部・中山岳、岸本拓也)

◆青森「落下物がないか心配した」
 「Jアラートが鳴ったのは、ちょうど子どもたちの登校時間帯だった。ミサイルは上空を通過したようで落下物がないか心配になった」。ミサイルが通過した4日、青森県弘前市教育総務課の菅野洋課長はこう話す。
 青森県にJアラートが発令されたのは4日午前7時29分。弘前市はただちに市立小中学校や保護者にメールで知らせ、被害がないことを確認。通常通り授業を実施した。菅野さんは「今年は北朝鮮のミサイルが多く、慣れてしまっている面もある。具体的に対策を取るのも難しい」と悩ましげだ。
 青森より2分早くJアラートが出た北海道では、JR北海道の在来線が一時ストップ。道は緊急会議を招集し、市町村などからの情報の確認に追われた。根室市の根室漁協指導部の担当者は「今朝は海がしけ模様だったので漁船は出ておらず、よかった」と胸をなでおろした。
◆伊豆大島「青森と北海道と同じって?」
 Jアラートは北海道、青森から600キロ以上離れた東京都の島嶼とうしょ部にも出た。伊豆諸島の三宅村では、小中学校の授業開始が2時間遅れた。
 伊豆大島(大島町)で民宿を経営する60代女性は、携帯電話の「グワッグワッ」という緊急速報で気づいた。「青森や北海道と同じように出るって、どういうこと? ミサイルがどう飛んでくるか、正確には分からないってことなのでしょうね」と話した。
 この民宿では4日朝の宿泊客はいなかったが、女性は「現実にミサイルが飛んでくれば、『建物の中や地下に避難』と言われても、うちの民宿は普通の家と変わらないような造りで周りに地下室なんてない。どうすればいいのか」と戸惑う。
◆東京の島嶼部では結果的に「誤報」
もっとも、東京の島嶼部へのJアラートは結果的に「誤報」だった。
 内閣官房によると、Jアラートは午前7時27分に北海道と東京の島嶼部に発令。同29分に青森と東京の島嶼部に変わり、同42分には北海道、青森と再変更された。「原因は確認中」(内閣官房)という。ミサイル発射から日本上空到達までは数分しかないにもかかわらず、Jアラートの対象地域が二転三転するようでは住民避難に役立つのか不安も残る。
 北朝鮮のミサイル発射によるJアラートは、2017年9月以来5年ぶりで、5回目。17年の弾道ミサイルは北海道上空を通過後、襟裳えりも岬の東約2200キロの太平洋に落下した。今回は飛距離は4600キロで、過去最長とみられる。
 防衛省によると、北朝鮮は今年に入り、4日までに20回を超え、計42発のミサイルを発射。18年以降では、19年(25発)を大きく上回り、突出して多い。
 5年間の合計は81発に上るが、全てにJアラートが発令されたわけではない。内閣官房のホームページによれば、日本の領土・領海に落下したり、通過したりする可能性があれば発令される。ただし、具体的な発射角度や速度、推定飛距離など、どのような発射なら発令するかついて、詳細な基準は示されていない。
◆Jアラートの仕組みとは
 そもそもJアラートで警告する内容を決めるミサイルの発射方向や角度はどのようにして把握されているのか。英軍事情報誌の東京特派員で国際ジャーナリスト高橋浩祐氏は「ミサイルが発射されると、まず米国の衛星がその熱源を探知して米国経由で日本に情報を送る。それを受けて、国内の地上レーダーなどでミサイルの動きを追尾して軌道や落下地点を計算する流れだ」と解説する。
 計算の結果、ミサイルが日本の領土・領海に落下する恐れがある場合や、上空を通過する恐れがある場合は、防衛省から内閣官房に情報が伝わり、Jアラートを発出。消防庁のシステムなどを通じて、対象の地域住民のスマートフォンに発射情報を通知したり、地方自治体の防災無線などで避難を呼びかけたりする。
◆実は「間に合わないことになる可能性が高い」
 しかし、今回のように日本のはるか上空を飛び越える軌道ならわざわざ警報を出す必要はあるのか。軍事ジャーナリストの前田哲男氏は「発射直後の短い時間で完全に軌道を見極めるのは困難。予防的に警報を出すこともやむを得ないと政府は考えたのでは」との見方を示す。
 逆に今年になって20回も発射され、日本海側に落ちたミサイルの方が、もし射程や高度が想定以上に延びていたら日本国民にとって危険だった気がするが、Jアラートは出なかった。軍事評論家の田岡俊次氏は「弾道ミサイルが水平線上に出るまでレーダーで捕捉できないので、そもそもアラートを出す判断が間に合わないことになる可能性が高い」と指摘する。
 迎撃はできないのか。日本海にはイージス艦による迎撃態勢があり、弾道ミサイルを撃ち落とす仕組みになっている。ただ今回も迎撃はしなかった。その理由を前田氏は「高度1000キロという領空のはるか上を通過しており、明らかに日本を狙ったものではないと判断されたのだろう。また、現在の技術では、1000キロも上空のミサイルを破壊することは難しい」と説明する。
 住民の立場からみると、最も困るのはJアラートで出される避難内容だ。内閣官房は、頑丈な建物や地下に逃げ込むようにと呼びかけるが、現実には難しい。田岡氏は「北朝鮮から日本に向かう中距離弾道ミサイルの発射から着弾まで7~8分。アラートが出されるまで数分かかるとすると、逃げる時間はほぼない。実効性はほとんどゼロだ」と指摘する。実際に2017年にJアラートが発出された北海道や青森県など12道県の住民を対象にした国の調査では8割以上が「避難しなかった・できなかった」と回答している。
◆上空の大気圏外通過に警報を出さなかった台湾
 現実問題として、北朝鮮のミサイルを迎撃システムでどうにかするのは難しく、Jアラートで警告は出ても住民の避難は事実上困難となれば、結局は「撃たれる前に撃て」という敵基地攻撃論の声が高まりそうだ。とはいえ、敵基地攻撃論は際限ない軍備拡張や、先制攻撃という現行憲法の専守防衛体制の大転換につながりかねない。
 前出の高橋氏は危機管理の強化は必要としつつ、8月に中国が台湾上空を通過する弾道ミサイルを発射した際、台湾国防部は主な飛行経路は大気圏外で地上の広い範囲に危険性はなかったなどとして警報を発令しなかった点を挙げ、こう指摘する。
 「日本ではJアラートの対象地区が二転三転したりして不安を助長した。国は『ミサイルの最高高度は1000キロに達し、大気圏外を通過。日本領土に危害を加える恐れはなく、ご安心ください』などと事実に基づく安心材料を国民に伝える努力をすることも必要ではないか。暴挙と言うことも重要だが、こういうときこそ冷静さを失ってはいけない」
◆デスクメモ 飛来の恐れがないのなら…
 防衛省は今回、「わが国に飛来する恐れがない」として自衛隊法に基づくミサイルの破壊措置をしなかった。飛来の恐れなしとの判断があるなら、なぜJアラートを出して緊急避難を呼び掛けるのだろうか。むやみに不安をあおらないような、合理的なシステムへと見直しが必要では。(歩)
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