ヨミドクター 2023年5月13日 双極性障害 診断されるまでに平均4~10年…うつ病と診断されることもあるのはなぜ?
コミックエッセー「夫婦で心を病みました―優しい夫が双極性障害を発症したあの日から」(KADOKAWA)は、作者の彩原ゆずさんの夫が、双極性障害(そううつ病)になったことをテーマにした作品です。当初はうつ病と診断されていましたが、しばらくすると、買い物で使う金額が増えるなど、おかしいと思う行動が増えて戸惑ったそうです。双極性障害であっても、当初はうつ病と診断されるケースは少なくないといいます。両者の違いについて、順天堂大学精神科教授の加藤忠史さんに聞きました。(メディア局編集部 利根川昌紀)
Q:双極性障害とうつ病の違いを教えてください。
――うつ病は、理由もないのに一日中嫌な気分が続く、好きなことに興味が持てないといった状態になる病気です。これに対して双極性障害は、うつ状態とそう状態を繰り返します。双極性障害とうつ病は、全く異なる病気です。
双極性障害は、100人に1人弱の割合で発症するといわれています。診断される人は増えていると思います。20歳前半で発症する人が多いとされていますが、中学生から高齢者まで幅広い年齢の患者さんがいます。男女差はありません。
Q:両者は違う病気なのに、双極性障害の人が、うつ病と診断されてしまうことがあるのはなぜですか。
――理由の一つには、うつ状態から始まる場合が多いということがあります。医療機関を受診した時はうつ状態で、それまでに、そう状態になったことがなければ、うつ病と診断されます。うつ病と診断された人の10~20%は、後になって双極性障害に診断が変わると考えられています。
双極性障害は、I型とII型に分けられます。I型は、入院が必要なほどの、そう症状が出ます。II型では、軽そう状態(そう状態よりも程度の軽いハイな状態)になる時期がありますが、本人も周りの人も、それほど困らないこともあり、診断をより難しくしています。
双極性障害と診断されるまでに平均4~10年かかっているというのが現状です。
双極性障害で抗うつ薬を使い続けると…
Q:双極性障害とうつ病は、治療法が異なります。
――うつ病は、抗うつ薬などを使ってうつ状態の改善を図ります。双極性障害は、気分安定薬(「リチウム」など)や非定型抗精神病薬などを服用し、うつ状態とそう状態の波をなくし、安定化させることが治療の目的となります。
双極性障害の人が抗うつ薬を飲むと、うつ状態とそう状態になるサイクルが早まってしまい、症状が悪化する恐れがあります。うつ病と診断されて服薬しているのに、なかなか治らない場合は双極性障害の可能性もあり、主治医に相談してほしいと思います。
Q:薬以外の治療法はありますか。
――薬物治療のほか、心理・社会的治療も重要です。この治療の目標の一つは、患者さんが病気を受け入れることです。双極性障害と診断された時、「自分は精神疾患のはずがない」と病気を受け入れない患者さんが多くいるためです。治療をする上で、病気について理解することは重要です。
Q:治りますか。
――双極性障害であることを認識し、処方された薬をきちんと飲み続けていれば、症状は改善し、多くの場合、再発を予防でき、ふつうに生活できるようになります。
周囲の人たちが気をつけたいことは?
Q:周囲の人は、どのように接すればよいですか。
――そう状態の時は、ご家族の方から「体が心配」と言って、受診を促してほしいです。これは家族にしかできないことです。一方、症状が落ち着いている場合、職場などの人には、病気を発症する前と同じように接してほしいと思います。患者さんにとって必要なのは、「ここの病院に行くといいよ」といったアドバイスではなく、周囲の人たちがいつもと同じように接してくれることです。
Q:発症を予防するために日常生活で気をつけたいことはありますか。
――ストレスは、病気を誘発することにつながります。無理をせず、ストレスをためないよう心がけてほしいです。生活リズムを守ることも大切です。たった一晩の徹夜で、急にそう状態になってしまうこともあります。
調子が良くなってからが治療の本番です。薬の必要性について、主治医とよく話し合ってください。
Q:受診の目安はありますか。
――一日中嫌な気分である、何事にも興味を持てない、という状態が2週間ずっと続くようであれば、うつ病や双極性障害の可能性があります。そうした場合は精神科などを受診してほしいと思います。
コミックエッセー「夫婦で心を病みました―優しい夫が双極性障害を発症したあの日から」(KADOKAWA)は、作者の彩原ゆずさんの夫が、双極性障害(そううつ病)になったことをテーマにした作品です。当初はうつ病と診断されていましたが、しばらくすると、買い物で使う金額が増えるなど、おかしいと思う行動が増えて戸惑ったそうです。双極性障害であっても、当初はうつ病と診断されるケースは少なくないといいます。両者の違いについて、順天堂大学精神科教授の加藤忠史さんに聞きました。(メディア局編集部 利根川昌紀)
Q:双極性障害とうつ病の違いを教えてください。
――うつ病は、理由もないのに一日中嫌な気分が続く、好きなことに興味が持てないといった状態になる病気です。これに対して双極性障害は、うつ状態とそう状態を繰り返します。双極性障害とうつ病は、全く異なる病気です。
双極性障害は、100人に1人弱の割合で発症するといわれています。診断される人は増えていると思います。20歳前半で発症する人が多いとされていますが、中学生から高齢者まで幅広い年齢の患者さんがいます。男女差はありません。
Q:両者は違う病気なのに、双極性障害の人が、うつ病と診断されてしまうことがあるのはなぜですか。
――理由の一つには、うつ状態から始まる場合が多いということがあります。医療機関を受診した時はうつ状態で、それまでに、そう状態になったことがなければ、うつ病と診断されます。うつ病と診断された人の10~20%は、後になって双極性障害に診断が変わると考えられています。
双極性障害は、I型とII型に分けられます。I型は、入院が必要なほどの、そう症状が出ます。II型では、軽そう状態(そう状態よりも程度の軽いハイな状態)になる時期がありますが、本人も周りの人も、それほど困らないこともあり、診断をより難しくしています。
双極性障害と診断されるまでに平均4~10年かかっているというのが現状です。
双極性障害で抗うつ薬を使い続けると…
Q:双極性障害とうつ病は、治療法が異なります。
――うつ病は、抗うつ薬などを使ってうつ状態の改善を図ります。双極性障害は、気分安定薬(「リチウム」など)や非定型抗精神病薬などを服用し、うつ状態とそう状態の波をなくし、安定化させることが治療の目的となります。
双極性障害の人が抗うつ薬を飲むと、うつ状態とそう状態になるサイクルが早まってしまい、症状が悪化する恐れがあります。うつ病と診断されて服薬しているのに、なかなか治らない場合は双極性障害の可能性もあり、主治医に相談してほしいと思います。
Q:薬以外の治療法はありますか。
――薬物治療のほか、心理・社会的治療も重要です。この治療の目標の一つは、患者さんが病気を受け入れることです。双極性障害と診断された時、「自分は精神疾患のはずがない」と病気を受け入れない患者さんが多くいるためです。治療をする上で、病気について理解することは重要です。
Q:治りますか。
――双極性障害であることを認識し、処方された薬をきちんと飲み続けていれば、症状は改善し、多くの場合、再発を予防でき、ふつうに生活できるようになります。
周囲の人たちが気をつけたいことは?
Q:周囲の人は、どのように接すればよいですか。
――そう状態の時は、ご家族の方から「体が心配」と言って、受診を促してほしいです。これは家族にしかできないことです。一方、症状が落ち着いている場合、職場などの人には、病気を発症する前と同じように接してほしいと思います。患者さんにとって必要なのは、「ここの病院に行くといいよ」といったアドバイスではなく、周囲の人たちがいつもと同じように接してくれることです。
Q:発症を予防するために日常生活で気をつけたいことはありますか。
――ストレスは、病気を誘発することにつながります。無理をせず、ストレスをためないよう心がけてほしいです。生活リズムを守ることも大切です。たった一晩の徹夜で、急にそう状態になってしまうこともあります。
調子が良くなってからが治療の本番です。薬の必要性について、主治医とよく話し合ってください。
Q:受診の目安はありますか。
――一日中嫌な気分である、何事にも興味を持てない、という状態が2週間ずっと続くようであれば、うつ病や双極性障害の可能性があります。そうした場合は精神科などを受診してほしいと思います。