<日中首脳会談>「戦略的互恵関係」確認も、修復は見通せず
毎日新聞 11月10日(月)21時15分配信
◇2年半ぶり、北京の人民大会堂で25分間会談
【北京・松尾良、石原聖】安倍晋三首相は10日昼(日本時間同日午後)、中国の習近平国家主席と北京の人民大会堂で約25分間会談した。日中首脳会談は2012年5月に当時の野田佳彦首相と温家宝首相が行って以来、約2年半ぶり。両首脳は、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海を念頭に、日中防衛当局間のホットライン設置など「海上連絡メカニズム」の運用を早期に開始することで一致した。会談では双方とも首相の靖国神社参拝には言及しなかったが、首相は「安倍内閣は歴代内閣の歴史認識の立場を引き継いでいる」と表明した。
日中両国は尖閣諸島を巡る対立などから、首脳会談を行えない状態が長く続いていた。首相と国家主席の会談としては、11年末の野田首相と胡錦濤国家主席(いずれも当時)以来、約3年ぶり。今回、両首脳は会談で「戦略的互恵関係」による発展の重要性を確認したが、互いに「関係改善の第一歩」と位置付けており、急速な関係修復は見通せていない。
首相は会談で「中国の平和的発展は国際社会と日本にとって好機だ。世界第2、第3の経済大国として協力し、地域と国際社会の平和、繁栄への責任をともに果たしたい」と表明。そのうえで「日中関係への思いは(第1次内閣の)06年10月の訪中からまったく変わっていない」として、7日に両政府が発表した合意文書を踏まえ、「今こそ戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、再構築すべきだ」と訴えた。
習主席は「戦略的互恵関係に従って、日中関係を発展させたい」と応じたが、「徐々に関係改善に努力したい」とも述べ、安倍政権との距離をなお慎重に測る姿勢をにじませた。
会談では日中が対立する尖閣諸島に関するやり取りはなかったが、首相が海上連絡メカニズムの早期運用開始を提案したのに対し、習主席も「既に合意はできている。事務レベルで意思疎通をしていきたい」と早期運用に前向きな姿勢を示した。
一方、歴史認識を巡っては、習主席は「歴史問題は13億人の中国人民の感情に関わる」と述べ、日本の過去の植民地支配や侵略を謝罪した1995年の「村山談話」にも言及して首相をけん制した。
さらに習主席は、集団的自衛権の行使を可能にした日本の7月の閣議決定などを念頭に「日本が引き続き平和発展の道を歩み、慎重な軍事・安全保障政策を取るよう望む」と述べた。これに対し、首相は「わが国は引き続き平和国家としての歩みを堅持する」と表明した。
◇「日本の求めで会談」強調
会談に先立ち、安倍首相と習主席は記者団を前に握手を交わした。首相は「こうしてお会いすることが非常にうれしい」と語りかけたが、習氏は無言のまま。習氏が一瞬、顔を背けるような仕草をする場面もあった。首脳会談の日程は開始ぎりぎりまで確定せず、関係改善の難しさをうかがわせた。
習主席はアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて訪中した約20人の各国首脳と相次いで会談したが、中国国営新華社通信は、安倍首相との会談については「求めに応じて」とわざわざ断っている。中国としては「日本側が何度も要望した」(王毅外相)と強調することで、国内の対日強硬論に配慮したとみられる。
8日の岸田外相と王外相の会談でも、王氏が冒頭の写真撮影で、握手の様子をカメラから隠すようにした。同行筋は「会談中にお互い、いっさい笑顔はなかった」と明かす。
日本側の説明によると、会談で首相と習主席は並んで着席。習主席は手元の資料を読み上げるだけでなく、首相と視線を合わせるなど、「自然体だった」(加藤勝信官房副長官)という。習氏は会談終了後、首相を含む日本側の出席者と握手した。
菅義偉官房長官は10日の記者会見で「互いにさまざまな問題を乗り越えて首脳会談を実現したことは極めて大きかった」と2年半ぶりの首脳会談の意義を強調した。
とはいえ、中国側はなお安倍政権の姿勢を見極めようとしている。習主席は会談であいさつを終えると、「先に安倍首相の考えを聞かせてほしい」と切り出した。尖閣諸島の問題や首相の靖国神社参拝には直接の言及がなかったとされるが、新華社によると、習氏は「この2年、中日関係に困難が生じた理由ははっきりしている」と指摘。二つの問題が日中関係悪化の原因と認識していることを強くほのめかした。
結局、中国に日本の首相が来てくれたわけだから、挨拶ぐらいはしておかないと、という程度なんだろうな。
したがって、核心の部分については、習はいまだに疑心暗鬼。はっきりいって、安倍を信用していないってことなんだろう。
<日中首脳会談>中国世論評価二分 安倍首相に根強い不信感
毎日新聞 11月10日(月)22時12分配信
【北京・工藤哲】安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談について、中国国内では賛否が分かれている。多くの国民は会談の意義を認める一方で、会談の際に厳しい表情を崩さなかった習主席の対応を支持する声も少なくない。中国世論の動向が今後の習指導部の対日姿勢を左右する可能性もある。
「日本は隣国で、安倍首相は来客だ。長い間いがみ合っている必要はない」。日中首脳会談の報道内容を知った中国メディアの30代の男性記者は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のプレスセンターでこう語った。また香港メディアに勤務する鄭錦煥さんは「まず緊張を緩和する必要がある。しかし関係改善にはまだ数年の時間がかかる」との見方を示した。
民間交流の活発化を期待する意見もある。北京語言大学の羅家明さん(23)は「関係改善のために両国政府がしている努力を一般の人も後押しすべきだ。国民にも関係改善のムードが広がってほしい」と話した。
一方、安倍首相に対する不信感は国民の間に根強く残る。黒竜江省ハルビンの男子大学生、呉季さん(21)は「きょうの会談はまだ儀礼の範囲。真の関係改善は日本の首相が数代代わった後だろう」と淡々と語った。
中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、「中国は(安倍首相に)メンツを与えた」など、険しい表情が伝えられた習主席の対応を支持する書き込みがほぼ半数を占める。さらに安倍首相の歴史認識などに対する批判が4割ほどで、「早く両国関係が正常な関係に回復してほしい」といった期待感を示す書き込みは1割程度に過ぎなかった。反日世論がさらに強まれば、習指導部の対日政策も新たな対応を余儀なくされそうだ。
毎日新聞 11月10日(月)21時15分配信
◇2年半ぶり、北京の人民大会堂で25分間会談
【北京・松尾良、石原聖】安倍晋三首相は10日昼(日本時間同日午後)、中国の習近平国家主席と北京の人民大会堂で約25分間会談した。日中首脳会談は2012年5月に当時の野田佳彦首相と温家宝首相が行って以来、約2年半ぶり。両首脳は、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海を念頭に、日中防衛当局間のホットライン設置など「海上連絡メカニズム」の運用を早期に開始することで一致した。会談では双方とも首相の靖国神社参拝には言及しなかったが、首相は「安倍内閣は歴代内閣の歴史認識の立場を引き継いでいる」と表明した。
日中両国は尖閣諸島を巡る対立などから、首脳会談を行えない状態が長く続いていた。首相と国家主席の会談としては、11年末の野田首相と胡錦濤国家主席(いずれも当時)以来、約3年ぶり。今回、両首脳は会談で「戦略的互恵関係」による発展の重要性を確認したが、互いに「関係改善の第一歩」と位置付けており、急速な関係修復は見通せていない。
首相は会談で「中国の平和的発展は国際社会と日本にとって好機だ。世界第2、第3の経済大国として協力し、地域と国際社会の平和、繁栄への責任をともに果たしたい」と表明。そのうえで「日中関係への思いは(第1次内閣の)06年10月の訪中からまったく変わっていない」として、7日に両政府が発表した合意文書を踏まえ、「今こそ戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、再構築すべきだ」と訴えた。
習主席は「戦略的互恵関係に従って、日中関係を発展させたい」と応じたが、「徐々に関係改善に努力したい」とも述べ、安倍政権との距離をなお慎重に測る姿勢をにじませた。
会談では日中が対立する尖閣諸島に関するやり取りはなかったが、首相が海上連絡メカニズムの早期運用開始を提案したのに対し、習主席も「既に合意はできている。事務レベルで意思疎通をしていきたい」と早期運用に前向きな姿勢を示した。
一方、歴史認識を巡っては、習主席は「歴史問題は13億人の中国人民の感情に関わる」と述べ、日本の過去の植民地支配や侵略を謝罪した1995年の「村山談話」にも言及して首相をけん制した。
さらに習主席は、集団的自衛権の行使を可能にした日本の7月の閣議決定などを念頭に「日本が引き続き平和発展の道を歩み、慎重な軍事・安全保障政策を取るよう望む」と述べた。これに対し、首相は「わが国は引き続き平和国家としての歩みを堅持する」と表明した。
◇「日本の求めで会談」強調
会談に先立ち、安倍首相と習主席は記者団を前に握手を交わした。首相は「こうしてお会いすることが非常にうれしい」と語りかけたが、習氏は無言のまま。習氏が一瞬、顔を背けるような仕草をする場面もあった。首脳会談の日程は開始ぎりぎりまで確定せず、関係改善の難しさをうかがわせた。
習主席はアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて訪中した約20人の各国首脳と相次いで会談したが、中国国営新華社通信は、安倍首相との会談については「求めに応じて」とわざわざ断っている。中国としては「日本側が何度も要望した」(王毅外相)と強調することで、国内の対日強硬論に配慮したとみられる。
8日の岸田外相と王外相の会談でも、王氏が冒頭の写真撮影で、握手の様子をカメラから隠すようにした。同行筋は「会談中にお互い、いっさい笑顔はなかった」と明かす。
日本側の説明によると、会談で首相と習主席は並んで着席。習主席は手元の資料を読み上げるだけでなく、首相と視線を合わせるなど、「自然体だった」(加藤勝信官房副長官)という。習氏は会談終了後、首相を含む日本側の出席者と握手した。
菅義偉官房長官は10日の記者会見で「互いにさまざまな問題を乗り越えて首脳会談を実現したことは極めて大きかった」と2年半ぶりの首脳会談の意義を強調した。
とはいえ、中国側はなお安倍政権の姿勢を見極めようとしている。習主席は会談であいさつを終えると、「先に安倍首相の考えを聞かせてほしい」と切り出した。尖閣諸島の問題や首相の靖国神社参拝には直接の言及がなかったとされるが、新華社によると、習氏は「この2年、中日関係に困難が生じた理由ははっきりしている」と指摘。二つの問題が日中関係悪化の原因と認識していることを強くほのめかした。
結局、中国に日本の首相が来てくれたわけだから、挨拶ぐらいはしておかないと、という程度なんだろうな。
したがって、核心の部分については、習はいまだに疑心暗鬼。はっきりいって、安倍を信用していないってことなんだろう。
<日中首脳会談>中国世論評価二分 安倍首相に根強い不信感
毎日新聞 11月10日(月)22時12分配信
【北京・工藤哲】安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談について、中国国内では賛否が分かれている。多くの国民は会談の意義を認める一方で、会談の際に厳しい表情を崩さなかった習主席の対応を支持する声も少なくない。中国世論の動向が今後の習指導部の対日姿勢を左右する可能性もある。
「日本は隣国で、安倍首相は来客だ。長い間いがみ合っている必要はない」。日中首脳会談の報道内容を知った中国メディアの30代の男性記者は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のプレスセンターでこう語った。また香港メディアに勤務する鄭錦煥さんは「まず緊張を緩和する必要がある。しかし関係改善にはまだ数年の時間がかかる」との見方を示した。
民間交流の活発化を期待する意見もある。北京語言大学の羅家明さん(23)は「関係改善のために両国政府がしている努力を一般の人も後押しすべきだ。国民にも関係改善のムードが広がってほしい」と話した。
一方、安倍首相に対する不信感は国民の間に根強く残る。黒竜江省ハルビンの男子大学生、呉季さん(21)は「きょうの会談はまだ儀礼の範囲。真の関係改善は日本の首相が数代代わった後だろう」と淡々と語った。
中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、「中国は(安倍首相に)メンツを与えた」など、険しい表情が伝えられた習主席の対応を支持する書き込みがほぼ半数を占める。さらに安倍首相の歴史認識などに対する批判が4割ほどで、「早く両国関係が正常な関係に回復してほしい」といった期待感を示す書き込みは1割程度に過ぎなかった。反日世論がさらに強まれば、習指導部の対日政策も新たな対応を余儀なくされそうだ。