犬の散歩

見たこと、聞いたこと、感じたこと、思ったこと

びっくりした

2013-08-23 07:46:47 | 日記


 5時過ぎに散歩に出発する。東の高い所に木星が西の高い所に十六夜の月が。空は暗いがそれでも青みがかっているのは分かる。
 自然の物もその価値は時代によって変わってきている。照明がなかった時代、夜道を行く人は月を頼りにしたことであろう。そんな昔でなくとも、自分が子供の頃でもそうだった。田舎道を行くに街灯といっても、木の電柱に傘の付いた裸電球が付いているだけである。それは暗いし、足下の狭い範囲を照らすだけである。そういう時、月が出ていると、満月に近いと尚更であるが、電球による影よりも月による影の方が濃かったことを覚えている。その影は自分の足から生えて地面に伸びており、歩くと共に離れることなく付いて来た。何だか神秘的というか不思議を感じていた。そういう言葉をまだ知らなかった時分のことだから、感動を覚えたことは確かであるが、言葉では表現できず現象をそのままに記憶し、年を経て、それを後で獲得した言葉で表わすようになったという体験である。つまり、言葉は用意されていたのである。先人が用意していたのだ。言葉は人と人をつなぐものであるが、それは同時代の人である必要はない。言葉は過去の人、未来の人との懸け橋になるのだ。

 木星が見えなくなった。雲のせいか。或は空が明るくなったためか。また、見えたので雲が隠していたのだと分かった。それでも、いずれすぐに空が明るくなるため見えなくなるだろう。

 いつものコースを行く。国道を渡り、川沿いに行って踏切を渡り、更に川沿いに東に進む。左に折れ水田の間を進む。T字路で犬は腹這いになった。さっきから自分の行きたい方へは行かせてもらえないので臍を曲げたのだろう。リードを短く持ってこちらがリードしてきた。待つならいつまでも待つよという余裕のある心持になった。向こうでイタチが道路を横切って水田の方へ入って行った。犬はそれを見ていて、サッと立ち上がりそこまで駆けた。行った先をじっとしばらく見つめていた。勿論、もう姿を見ることはない。首が長く、茶色で尻尾が細いのでイタチに違いない。テンなら尻尾がもっとふさふさしているはずだ。
 それからは順調に歩いた。
 シラサギ、アオサギ、スズメ、カラス、ウ、ツバメ、キジバトを見たが、いずれも太っているように見えた。たくさん食べたということである。そうでなければ生きていけない。

 丘陵の頂を過ぎ、川に至る。その手前の水路の土手にキバナコスモスが列をなして咲いていた。これまで全然気が付かなかった。どうしてか。こちらへはしばらく来なかったから?ここではいつも他所を向いていたから?例えば北の山の方とか。
 川の中を見ると小魚が湧いていた。海でアジ等が水面近くに集まると波立ちそれを湧いたと言う。小鮒か。水面に寄って横になったりして銀鱗を輝かせる。
 水中からカワセミが飛び出し、近くに止まってすぐに下流の方へと逃げた。カワセミは久し振りだ。川沿いに逃げるのかと思ったら、木立の中に隠れた。カワセミは最近増えてきていると聞いたことがある。

 駅裏に出て 市の施設の敷地に入ろうとした。すると駅の陸橋の下に人が横たわっていた。階段から転がり落ちたのだろうと思った。
呼びかけると意識はかすかにあるようだ。脈も呼吸も確認しなかった。こちらも動転しているのだ。上りの益田行のヂーゼルの人が気が付かなったとしたら、それ以後に発生したことになる。次の下りの客がホームからこちらの様子を見ていた。詳細は避けるがカメラ用の携帯で119番する。場所、状況等を簡単に説明する。こちらの携帯番号を尋ねられが覚えているわけがない。そんなことより早く出動しないかと少し苛立った。8分くらいして救急車が到着した。踏切で手間取ったりしていた。近付いて来たので私は手を高く挙げた。
 倒れた人に近付いた救急隊員にそれまで座っていた犬がヴァウと吠えたのでこらと言って抱え込んだ。犬は落ち着いてずっと座っていたが守っている気持だったのだろうか。
 搬送する段階になったので断ってそこを去った。あの陸橋を渡ったことがあるが、同じ間隔のステップを踏んでいると進んでいるようでも、そうでもないような気になりちょっと眩暈を感じたことがあった。走らなければ良いのだろうが、犬と一緒なので。

 市の施設を出て踏切を渡り国道に出る。救急車はどこへ行ったのだろう。あの倒れていた人は大事無ければよいが。
しかし、世間から見れば、ある一点での事故。大勢に変化がない。そういうものなのだ。関係者はごくわずかなのだ。私にしても点での接触に過ぎない。人はそれぞれ自分の役割があるのだ。

 いつもより少し遅く家に到着した。
 家の雨樋の下が扇型にわずかに濡れていた。路面は濡れていなかったが。屋根の露を集めてのことなのか。いや、晴れていないので、少し雨が降ったのかもしれない。

 歳をとるとびっくりすることが少なくなるが、今朝はいろいろ程度の差があるがいろいろびっくりした。
 家に帰ってしばらくすると雨が少し降った。季節が変わっているのだ。