6時25分に犬ん散歩に出掛ける。今日は火曜日。
山陰本線を跨ぐ新しい道を歩くコースを行く。空は曇っている。
縁石で、石ではなくコンクリートだが、車道と区切られた歩道を歩いていると向こうから赤いビニール袋を手にした人がやって来た。今日は燃えるごみを出す日だ。道を譲って車道の端を歩く。渋面のように見えたその人がすれ違う時、急に笑顔になって体をこごめて犬に向かって大きな声でおはようございますと言った。私の判断、行動と犬の存在が笑顔と挨拶を生んだような気がした。犬は勿論、知らん顔である。自分に向かって声を掛けられたことは分かってはいるだろうが。意味は理解できなかったようだ。
曲がり角で犬は糞をした。つい今しがた空き地のそばでしたばかりである。一遍でしてもらいたいな、ビニール袋が底を尽きそうだ。処理をして歩き始めると黒いトイプードルを連れた人と出会った。その人は片手に花の入ったビニール袋を持っていたので墓参の帰りだろうと思った。併せて花を替えたのだろう。
双方の犬は近寄って行った。どちらも尻尾を振っている。大丈夫だろう。鼻を付け合った。
相手の人は嬉しそうに言った。まあ、とても優しい犬ですね。まだ、産まれたばっかりで4ヶ月ですとのこと。
犬の親子を引き離すのは生後何日以上たってからとその期間が長くなったはずである。3ヶ月位だったか。
小さい頃から犬同士の接触を経験しておけば他の犬の向かって無用に吠えることはなくなる。
我が犬は突然、右に飛び退いた。よく見られる行動だ。そして、その意味が今やっと分かった。よし、挨拶は済んだので一緒に遊ぼうよという誘いなのだ。しかし、相手は驚いただけで実際には遊ぶことなくそれっきりで別れたのだが。
歩いていると道の勾配がよく分かる。交番の前の信号機まで緩やかな登りである。信号を渡ってアーチ状の新しい道を歩く。上り下りの勾配は一層はっきりしている。こんなことに気付くのは足腰が弱って来ているからだろうか。
住宅地の中の道を歩いているとヂーゼルの行く音が聞こえ、車が続いてやって来た。踏切の遮断機が上がって待っていた車が動き出したのだ。踏切が見える所に来たら自転車に乗った中国人の研修生が数名、自転車でこちらの方にやって来た。今日は大人しいなと思った。黙々と自転車を漕いでいる。朝が早いものだと思った。自転車置き場の所にも数名の研修生がいたが何か大きな声で喋っていた。
国道に出た。黄色づくめの交通指導員がいたので挨拶をする。今日は30日だが。1の付く日に立つはずだが。そうか、秋の交通安全週間か旬間なのだ。これまで会わなかったのはここを通らないコースだったり、7時よりずっと前に通ったからだ。
7時10分に帰着。
昨夕の散歩について
5時15分前に犬の散歩に出掛ける。
犬はばったり浜へ下りようとしなくなった。これまで公園もグラウンドも通過地点で目的地は浜乃至突堤の先のように思っていたのだが、そうではなくなったようだ。
海辺のカフェの駐車場用の横の出入り口は昨夕同様無視して歩くし、階段からの出入り口も立ち止まって海岸を見たけれどもさっと先に進んだ。犬はそこは収穫が少ない、或はにおうものが殆どないと判断して行く気がしなくなったのかもしれない。
犬も伊達に生きているのではない。ちゃんと学習して次の戦略を立てているのだ。
犬も私もつくづく利己主義的だと思う。こちらのが犬にうつったのか、犬のがこちらにうつったのか知らないが、同時発生的に生じたのかもしれないし、お互い触発されながら昂進したのかもしれないし、兎に角、双方共、責任は問われないと思う。根は持っていたのだ、私も犬も。何らの事前の了解なしに納得できるところに問題の本質は現れている。
利己主義が誤解されるのは困ったものだ。自分の利己主義を認め、人の利己主義をそれに応じて理解する。みんなが利己主義ならそれは原理というものだろう。それで立ちいかなくなったらその都度、修正すれば良いことだ。
みんながそれぞれよりよい生き方をするのが生命の真骨頂であろう。それは自分の内側の声を聞くことだ。基準は自己の外にはない。
他のものに頼るようでは生きている甲斐はない。他のもののまねをしても仕方のないことだ。
例えば、ダイコンはコオロギを齧るようになり、トンボはイチゴを食するようになり、空は森のように緑色になり、太陽は独楽のようにぐるぐる回るようになり、星は暗闇のように光るようになり、死者は甦って生者のように口をきくようになったらどうだろう。
他者との協調や協力や共感は各々が自分を生きるしかないと納得した時に自然に生じる関係だろう。
5時20分に帰着。
門の前の小花壇に水をやる。ナデシコ、マリーゴールド、リンドウ、ダイアンサス、ガーベラなどが植わっている。
溝に捨てられたゴミや路上のたばこのフィルターを火ばさみではさんでゴミ袋に入れる。蚊が急に増えたような気がする。今日は気温がかなり上がって来た。
中庭のカキの木は今年は豊作のようだが木の下の地面に丸い黒い幼虫の糞がたくさんあったので見上げるとアオイラガの幼虫が柿の葉を食べていた。駆除する。それで犬に餌をやるのが少し遅れた。犬は待ちきれずワンワン吠えていた。こちらもまだ食べていないのだから少しは我慢せいと思った。