ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

近鉄のフリーゲージ・トレインは成功するか? ㊤買収された奈良電とJR奈良線の悲哀

2020年06月14日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

これから、近鉄奈良線(大阪-奈良)、近鉄京都線(元は奈良電、京都-奈良)、JR奈良線(京都-奈良)とややこしい線名が出て来るので、混乱しないように。

 

近鉄は、京都駅から奈良県南部の吉野駅まで直通するフリーゲージ・トレインを開発すると2018年に発表しました。これは近鉄のニュース・リリースにも載っています。

 

フリーゲージ・トレインは線路幅の異なる線路を直通出来る車両のことです。これには線路幅に合わせて車輪が左右に動く技術が必要になり、素人でも難しそうな技術だとわかる。

 

JRはフリーゲージ・トレインをあきらめた

 

JRは長崎新幹線や北陸新幹線(線路幅は標準軌と呼ばれる1435mm )と在来線(線路幅は狭軌と呼ばれる1067mm)を直通するフリーゲージ・トレインを開発していたが、両線ともあきらめた。

 

京都から吉野へ直通できない

 

2018年以前から、近鉄は在来線のフリーゲージ・トレインを開発するという話が出ていた。在来線だけなら、新幹線と在来線の直通より技術の壁が低くなる。

 

現在、京都駅から吉野駅に行くには、京都駅から大和西大寺駅までは近鉄京都線(標準軌の1435mm)、大和西大寺駅から橿原神宮前駅までは近鉄橿原線(標準軌の1435mm)、橿原神宮前駅から吉野駅までは近鉄吉野線(狭軌の1067mm)なので、電車は直通出来ない。近鉄内で線路幅が異なる路線があるのは、近鉄がいろいろな私鉄を買収したから。

 

近鉄の路線図(「狭軌」と表示のない線は全て標準軌)

 

弱小私鉄奈良電(今の近鉄京都線)の悲哀

 

京都駅から大和西大寺駅までの近鉄京都線の前身は奈良電(正式には奈良電気鉄道)という弱小私鉄でした。対抗するJR奈良線が単線非電化でクネクネと寄り道しているのに対し、奈良電は複線電化しており線路が真っ直ぐなのでスピードと便利さで優っていた。奈良電の悲哀は、大和西大寺駅の手前で近鉄奈良線(大阪の難波から来る線)と平面交差で合流して近鉄奈良駅に到達すること。つまり、近鉄の大和西大寺駅-近鉄奈良駅間は、近鉄の線路を借りていた。(昔読んだ本によると、近鉄は奈良電が奈良駅に到達するのを邪魔したらしい)

 

近鉄に買収される前の奈良電(現近鉄京都線)に乗った時の話です。京都駅から奈良電に乗ってスイスイ来たのは良いけれど、大和西大寺駅の手前で待つこと待つこと。近鉄のもともとは、大軌(大阪電気軌道)と言っていた近鉄奈良線で近鉄の正統な路線。したがって近鉄奈良線が優先で、弱小奈良電なんかに線路を開けてくれない。信号待ちで5分くらい待っていたかな? この平面交差は、奈良電が近鉄に買収された後も現在まで変わらずに存在する。

大和西大寺駅周辺の地図

大和西大寺駅の平面交差

 

JR奈良線の悲哀

 

話が脱線しますが、近鉄京都線と競合するJR奈良線は、しばらく前まで全線非電化の単線でした。現在のJR奈良線は全線電化されたが、複線化率は2割ほど、2023年にやっと6割になる。それに旧東海道線の線路の一部を利用しているので迂回していたり、昔京都南部に存在した巨椋池(おぐらいけ、淀川の遊水池のような役目、今はほとんどが干拓されている)を避けていたり、宇治の方へ迂回していたりするのでやたらと時間がかかる。それで奈良へ行く時にJR奈良線を利用する人は周遊券を持った事情を知らない観光客くらいでした。一方の奈良電は創業時から複線電化で田んぼの中を突っ切っていたのでJRより速いが、いかんせん京都から奈良に行く人は少ない。

京阪奈の地図

 

ところでJR奈良線は京都駅から木津駅までで、木津駅から奈良駅までは関西本線(大阪の天王寺駅と名古屋駅を結ぶ線)ですが、JR奈良線の電車は奈良駅まで直通している。

 

奈良駅に到達するのに、奈良電(現近鉄京都線)もJR奈良線も他の路線の線路を使うのは、弱小線の悲哀です。

 

2020.06.14

続きは「近鉄のフリーゲージ・トレインは成功するか? ㊥吉野へ行くには標準軌と狭軌を通る

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿