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ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

iPS細胞で作った心筋の「細胞シート」で心臓病の治療

2013年07月25日 | 山中教授のノーベル賞&再生医療

最近、東京女子医科大学の岡野教授(慶応大学の岡野教授とは別人です)の作った「細胞シート」がメディアで良く取り上げられています。7月19日の日経新聞でも、取り上げられていました。

この「細胞シート」とは、培養した細胞をシート状に加工したもので、シート状にする時に岡野教授のアイデアが使われています。

しかし、この「細胞シート」はもっと基礎研究するべきという印象です。

 

今月、京都大学iPS細胞研究所の山下教授の講演会を聞きました。

山下教授は、iPS細胞を使って、心筋の「細胞シート」を作り、心臓の患部に貼りつけて亜急性の心筋梗塞の患者の治療を行うことを目的としています。4年後には人への適用を目指しています。

 

この山下教授の講演によると、心臓に貼りつけた心筋の「細胞シート」は、そのまま心臓の細胞の一部になるのではなく、しばらくすると周りの細胞に吸収されるそうです。ではなぜこの心筋の「細胞シート」に効果があるかと言うと、この心筋の「細胞シート」から何かの物質が出て来て、心機能を改善するということです。

 

当然、講演の後で質問が出ました。心筋の「細胞シート」がどういう物質を出すか、効果をもっと調べて、患者にその物質を投与した方が良いのでは?と言うものでした。回答は、心筋の「細胞シート」が出す物質を探し、その効果を確かめていくよりは、「細胞シート」の検討を進めた方が、実用化が早いというものでした。

 

確かに、この回答に一理はあると思いますが、心筋の「細胞シート」がどのような機能を果たしているのかを突き詰める基礎研究の必要もあると思うのですが・・・

 

2013.07.25


山中教授のノーベル賞を喜ぶ その6 ~臓器再生~

2013年01月04日 | 山中教授のノーベル賞&再生医療

iPS細胞で臓器を作れるの?

23年前にNHKTVで、東京女子医科大学の岡野教授(慶応大学でiPS細胞を研究している岡野教授とは違います)が、心筋細胞をシート状にして心臓に張り付けて、心臓の機能を回復するという研究の紹介番組をやっていました。その中で将来のアイデアとして、心筋シートを多数重ねると心臓になると言っていました。

 

その12か月後に、京大の中辻憲夫教授の講演がありました。

中辻教授は、山中伸弥教授が京大再生医科学研究所に移って来た時の所長だった人です。再生医科学研究所はES細胞の研究を行っており、山中教授が京大に移って来た理由の一つに、ES細胞の研究を行っていることを挙げていました。ただ、ES細胞の研究は、倫理上の問題からなかなか進まなくて、「当てが外れた」とも言っていました。中辻教授は、ES細胞の研究者です。

この講演で、中辻教授は、「分かる人には分かると思うが、私は損な役回りだ」とぼやいていました。さらには、「人の胚盤胞の使用において、日本は倫理上の制約が多く、BS細胞の研究では米中韓に先行されている」とぼやきづめでした。

 

この講演の後の質問のところで、あるシニア(TV番組を見ていた人)から、「心筋シートを重ねると心臓になるのか?」という質問が出ました。

回答は、言い難そうに「心臓は、心筋だけでなく、血管が張り巡らされている。そういうことはありえない」と明確でした。言われてみると当たり前ですが、心臓は心筋だけで出来ているわけではない。心筋に栄養を補給することも必要だし、心筋を制御する神経も必要では?

というわけで、iPS細胞やES細胞で臓器を作るのは、かなり難しいということが分かりました。

それで、豚を使って、人間の臓器を作る研究も行っているのですね。

 

2013.01.04

 

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山中教授のノーベル賞を喜ぶ その5 ~分化~

2012年10月27日 | 山中教授のノーベル賞&再生医療

iPS細胞から、各細胞への分化はどうするの?

皮膚細胞などに4つの遺伝子を入れることで、細胞が初期化し、iPS細胞になります。

そこから神経細胞や心筋細胞、網膜細胞などに分化させて、目的とする細胞を作り、創薬や細胞移植に使うことを考えているわけです。

ところでiPS細胞の作り方は分かったけど、iPS細胞から作りたい細胞に分化させるきっかけはどうするのでしょうか? iPS細胞から各細胞に分化するきっかけは何なのか、これは細胞の初期化と同じくらいに重要で、かつ生命の不思議を感じる現象だと思います。 何らかの化学的なショックを与えて、各細胞に分化するのを助けていると思うのですが、今までの講演会やTV番組で明らかにされたことはほとんど無いと思います。

 

本日1026日の新聞に「ヒトESiPS細胞から臨床応用に適した心筋分化誘導法を開発」という記事が出ていました。これは、昔からES細胞を研究してきた京大の中辻教授のグループの成果ということです。従来から、「小分子化合物」でES細胞を心筋細胞に分化させてきたが、「心筋分化を促進する化合物を約10,000種の化合物から選び出し」、これからさらに、従来より「効果の強い小分子化合物を発見」ということだそうです。

結局、やってみたら出来た!ということでしょう。まだまだこの分野で解明すべき現象は多いと実感します。

 

2012.10.27

 

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山中教授のノーベル賞を喜ぶ その4~プレッシャー~

2012年10月23日 | 山中教授のノーベル賞&再生医療

 

l プレッシャー

NHK10日夜7時半からの「クローズアップ現代」に出演した山中教授が、国谷キャスターの「プレッシャーがきついと思いますが、どのように克服しているのか?」という質問に、「好きなジョギングをしながら、ビリー・ジョエルの「プレッシャー」という曲を聴いている」と答えて、国谷キャスターが苦笑していました。

山中教授は講演において、どこかで笑いを取りに行くのですが、この「プレッシャー」という曲を聞いてみると、笑いを取りに行っただけではなく、本当にこの曲を聴いて「プレッシャー」に耐えているのかなと思いました。それくらい、歌詞と音楽が山中教授の境遇にぴったりでした。

 

 

l iPS細胞研究所の成果は?

2008年に前身のiPS細胞研究センターが出来て、2010年にiPS細胞研究所に改組されました。開設されてから4年になり、総勢200名ほどが在籍しているようです。しかし、慶応大学や理研の神戸などの成果と比較して、われわれ一般人がすごいと思う成果や論文がiPS細胞研究所から出たという話は聞かないです。この点に関しては、一部の新聞も指摘していたと思います。

ノーベル賞の受賞決定で研究予算の見通しもやっと立ったようですので、次の重点はここだと思います。山中教授がプレッシャーを一番感じているのはこのiPS細胞研究所かなと思います。

 

2012.10.23

 

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山中教授のノーベル賞を喜ぶ その3~万能細胞?~

2012年10月22日 | 山中教授のノーベル賞&再生医療

 l心変わり?

iPS細胞は、induced pluripotent stem cell のことで、pluripotentは多能性という意味らしいです。当初からメディアでは、iPS細胞のことを「万能」細胞と言っていましたが、山中教授は、「万能細胞」ではなく、控えめに「多能性」細胞と言っていました。ところが、最近では山中教授も「万能細胞」と言っているので、「あれ?」と思いました。そういえば最近iPS細胞で卵子や精子を作って、マウスを作る時代になったので、「万能」と言っても良いのではと思いました。

 

pluri-とは、辞書によるとmanyの意味だそうで、そうするとiPS細胞では適当でないような・・?

 

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