ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

トランプ君はビジネスマン

2017年04月27日 | 国際・政治(欧米)

325日のブログ「習近平とトランプ会談」で「結局、会談は中国ペースで終わると思います」と書きました。

 

トランプ君は、米中会談の最中にシリアに向けてミサイルを打ち込むという意表を突く行動に出たので、習近平は虚を突かれて中国ペースというわけにはいきませんでした。しかし、これで中国はアメリカの思うように動くと思う人は甘い。

 

中国は北朝鮮カードを温存している方にメリットがある。今回の会談で、アメリカは中国による北朝鮮への強い制裁を要求したが、その見返りとしてアメリカの貿易赤字の最大の原因である中国への改善要求が弱くなった。最大の貿易赤字の原因である中国への改善要求が弱くなったということは、タナボタで日本への貿易赤字の改善要求も弱くなるはずです。

 

中国は北朝鮮カードを温存するために、これからもアメリカの言うことを聞くフリをします。しかし、北朝鮮の首を強く絞めているようなフリをするが、息は出来るようにしているので、ほとぼりが冷めると手を緩める。ただし、北朝鮮があまりに言うことを聞かないと、首を挿げ替えるかもしれない

 

しかし、今回の北朝鮮危機と言われるものは、ダラダラして緊張感が足りないですね。日本の右寄りの人は、いよいよアメリカが本気になったと期待しているようですが、そんなことは無い。

 

シンガポールにいた空母は違う方向に出航するし、中国を刺激しないように南シナ海は避けて通ったらしい。そして横須賀にいるもう一隻の空母はいっこうに出港しない。それに、最近のトランプ君は北朝鮮のことを言わなくなった。おまけに今日から安倍首相はロシアと英国に出かける。北朝鮮が危ないと煽っておきながら、自分はロシアと英国かよ。これは、直ぐには何も起きないと踏んでいるのでしょう。安倍首相が帰って来るまで、右寄りの新聞も静かになる。

 

アメリカも中国も韓国も北朝鮮も日本も、テレビも新聞も評論家も、みんな危機だ!危機だ!と言っている方が都合良い。ほとぼりが冷めると、皆さん知らん顔している。

 

アメリカの話に戻ると、トランプ君は定石通りのことをしている。

 

  • 先ずはビジネスの定石。「俺は怒っているぞ」ということを示して、相手に譲歩を迫る

 

前にも書きましたが、私の勤めていた会社とアメリカのお得意さんとのビジネス(平たく言えば、金の取り分をどうするか)の会議でのこと。十分準備をしていた私の会社の少し賢い役員が交渉を有利に進めたので、アメリカの会社が不利になりました。その時アメリカの会社のトップがドアをバタンと閉めて出ていったそうです。こういうのも、交渉のテクニックの一つらしい。仕方ないので、私の会社の役員は社長とも相談して価格で譲歩したことがあった。このような、怒っているぞ!というのを態度で表す交渉術はアメリカでは一般的らしい。アメリカ人はいつも話し合いで交渉していると思っている人は、買いかぶっているだけです。

 

トランプ君はこの交渉術を政治に応用しています。やりすぎると取り返しのつかないことになるが、トランプ君は根がビジネスマンなので、ギリギリのところで最悪の状態にならないようにする。

 

  • 次は、政治の定石。内政が上手く行かないと外に危機を作って目をそらせる

 

トランプ君の内政が上手く行っていないし、支持率も下がったままなので、シリアや北朝鮮に危機を作って、自国の国民に団結を呼びかけ、自分の政治に支持を集めるという古典的な手口をやっている。

 

ついでに言うと、安倍首相も森友問題の目をそらすために、北朝鮮危機が高まってくれた方がありがたいはずです。

 

だいたい、北朝鮮とアメリカ、中国、韓国、日本の本音を見ると先行きが分かる。

 

北朝鮮の本音:金王朝を継続したいだけ。戦争をすると金王朝は崩壊するので、戦争はしたくない

アメリカの本音:支持率の低いトランプ政権を浮上させたいだけで、戦争する気はない。戦争する金があれば、他で使いたい。

中国の本音:北朝鮮を緩衝国として存続させたい。それにアメリカとの交渉材料として使い道がある。

韓国の本音:現在の政府は保守系の候補を大統領に当選させたい。北朝鮮危機があった方が保守系に有利になる。

日本の本音:こういう危機があると、「自民党ならアメリカと上手くやってくれるはず」と考える人が多くなるので、ありがたい。

 

トランプ君は、中国に対し「北朝鮮を何とかしないと、韓国や日本を核武装させるぞ!」と言ったそうですが、アメリカだって韓国や日本を核武装させたくないので、この脅しはこけおどしです。そこらへんは、中国だってお見通しです。トランプ君、素人でもわかるような手を使っちゃだめだよ。

 

2017.04.27


蒲蒲線は実現しない! のまとめ その4 ~JR東の羽田空港アクセス線はどうなる~

2017年04月23日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

蒲蒲線は実現しない! のまとめ その3」の続きです。

「蒲蒲線は実現しない!」とさんざん言ってきたけど、その競合相手のJR東の羽田空港アクセス線はどのようなルートなのか、検証しました。なお、JR東は開業予定を延期しました。

 

JRの羽田空港アクセス線案は、国交省の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」の平成28年4月20日付の答申に書かれています。

 

「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)(PDF形式:2.6MB)」

http://www.mlit.go.jp/common/001138591.pdf

 

JR東の羽田空港アクセス線の課題は

(1)東京モノレールをどうするか?

(2)羽田空港アクセス線のルートをどうするか?

が大きいところです。しかし、(1)は上記答申には全く書かれていません。

 

(1)東京モノレールをどうするか?

 

蒲蒲線は実現しない! のまとめ その3」で書いたように東京モノレールの乗降客数は漸減しているし、乗降客数は京急の方が多い。

 

東京モノレールの羽田空港各駅を合計した1日の乗降客数

2008年:69,993人

2013年:66,225人

また、京急の羽田空港各駅を合計した1日の乗降客数は

2015年:103,899人

 

乗降客の比率は、京急:東京モノレール=6:4と京急の方が多い。

昔から言われている話ですが、東京モノレールの起点の浜松町駅は、山手線と京浜東北線しか停車しない。地下鉄は都営浅草線大門駅が近くにあるが、荷物を持って移動するにはちょっと厳しい。

 

もともと東京モノレールは新橋駅まで建設する予定でしたが、金が尽きたので浜松町駅までになったとか。東京モノレールは、当初運行していた会社の経営が悪化したので、東京モノレールの車両を製作していた日立製作所の孫会社になって長い間やっていましたが、近年JR東の子会社になっています。

 

ところで、東京モノレールの1日の乗降客数(2013年)は、

起点駅の浜松町駅:66,225人

羽田空港各駅の合計:108,134人

と羽田空港以外の目的で東京モノレールに乗っている人がかなりいます。これは昔、東京モノレールの経営が悪化した時に、途中駅の利用を促進したことが効いていると思います。鉄道線に転換する場合、これら途中駅の利用客をどうするかが大問題です。

 

仮に東京モノレールと同じ経路に鉄道を敷いたとしても、東京モノレールと同じ間隔で駅を作ることは無理です。それに東京モノレールには急勾配と急カーブがあり、そもそも同じ経路に鉄道は作れない。

 

東京モノレールの開業は、前回の東京オリンピックの年の1964年なので、既に53年経っています。施設の改修は行ってきましたが、全体的に老朽化しているので、根本的に改修するか、設備を全く新しくするか、鉄道線に転換するか、決める時が近い将来に来ます。その時に向けて準備しなきゃならない。私は鉄道に転換するしかないと思います。

 

次は、鉄道線を作った場合の課題です。

 

(2)羽田空港アクセス線のルートをどうするか?

 

羽田空港アクセス線のルート経路は、前述の答申に書かれています。

 

既存の路線からの接続は、以下の3ルートから持って来る

 

(1)埼京線方面

りんかい線の鮫洲付近で分岐して、東京貨物ターミナル北端まで線路を新設する

 

(2)宇都宮線・常磐線方面

東海道貨物線の休止区間(田町-東京貨物ターミナル)を利用し、宇都宮線や常磐線の電車を直通させる。

 

(3)京葉線方面

りんかい線の八潮にある車両基地への出入庫線を利用して、りんかい線の新木場から京葉線を直通させる

 

このように3方向から電車が羽田空港へ直通するので、非常に効率的な路線になる。

 

金がかかりそうなのが、東京貨物ターミナルから羽田空港への乗り入れで、前記答申には

⑥東京貨物ターミナル付近から羽田空港へ直接向かう

とあります。

 

まず、各ルートの説明から。

 

第1図(品川ふ頭付近の地図)

 ①連絡線

りんかい線の鮫洲付近から分岐して、東京貨物ターミナル北端まで線路を新設する

 

第1図で①の経路です。新設する線路の距離はGoogleで測定して約1.1㌔㍍。

りんかい線に直通する埼京線からのルートで、山手線の西側のエリアからの利便性が高まります。

 

分岐する地点は海底ではなく、広い道路の地下なので障害物は無さそうですが、近くに運河を超える橋の橋脚が建っているのが気になる。先日、目黒に向かうメトロ南北線を途中で分岐させて、品川新駅へ向かわせられないかという新聞記事が出ていましたが、メトロの回答は工事が難しいというものでした。南北線と同じ構造かわかりませんが、こちらはどうでしょうか?

 

②東海道貨物線の休止区間(田町-東京貨物ターミナル)を利用する。

 

第1図で②の経路です。宇都宮線や常磐線など北方から来る電車はこの線路を利用できる。

 

休止中の路線なので、一部でレールを外している部分もあるようですが、高架や鉄橋などの施設は整備するとまだまだ使えるし、一部を除いて複線なのでそのまま利用出来る。

 

④りんかい線の八潮にある車両基地(東京貨物ターミナルに沿う細長い土地)への入出庫線(品川ふ頭のトンネル内で本線から分岐している)を利用して、りんかい線の新木場方面からの電車を直通させる

 

第1図、第2図で④の経路です。この経路は、りんかい線を介して京葉線から直通出来る。

 

この入出庫線は、国鉄時代に京葉線用として掘ったもので、使用されることなく放置されていたトンネルを入出庫線に転用している。現在入出庫線として使用している線路は単線ですが、もともと複線でトンネルは掘ってあるので、現在使われていないトンネルを改修すれば複線として使える。

 

この入出庫線の運行頻度はそれほど多くないので、容易に営業線として使用可能(なはず)です。現在のりんかい線は新木場で京葉線に直通していないけど、線路は繋がっているので、直通させることは可能です。

 

これら、②休止区間の東海道貨物線、④りんかい線の入出庫線の二つは、東京貨物ターミナルの北端付近で地上に出ているし、鮫洲からの①連絡線も地上に出して、3線を合流させるのは容易でしょう。

 

第二図(大井ふ頭付近)

 

第三図(空港付近)

 

③東海道貨物線(東京貨物ターミナル-羽田空港付近)を利用できるのか?

 

第2図、第3図で③の経路です。このルートは上述の審議会の資料には書かれていません。しかし、この路線③東海道貨物線を使用できれば、第3図の⑤の路線(Google地図で測定して約3.4㌔㍍の距離)を新規に作るだけで、新規に掘るトンネルの長さを短くできる。

 

しかし、③東海道貨物線は羽田付近からさらに横浜方面に伸びており、頻度は多くないが貨物列車が行き交っている現役の線路です。東海道貨物線の時刻表を見ると、この付近を運行している貨物列車は、おおよそ1時間に1~2本程度と少ないが、貨物列車の性質上、下りは23時台に6本、上りは朝の6~7時台に2~3本と特定の時間に多い.

 

この混雑時間帯以外なら、1時間に4本程度なら何とかなるかもしれないが、もっと多くの電車を走らせる場合は、遅い貨物列車の合間を縫うので、ダイヤ編成が難しそうです。

 

⑥東京貨物ターミナル付近から羽田空港へ直接向かう

 

上で見てきたように、⑤東海道貨物線の利用は難しそうなので、⑥の羽田空港へ直接向かう案を採用するしか無さそうです。この区間の距離はGoogleで測定して約5.1㌔㍍。東海道貨物線から分岐する⑤の路線の約3.4㌔㍍と比較しても、それほど長くならない。他に大きな障害物は無さそうですが、埋め立て地なので地盤は軟弱と思われ、金はかかりそうです。

 

この線の課題は、空港ターミナルの利便性の良いところに駅を作れるかどうか。今の東京モノレールの駅のように180度回転は出来ない。

 

(まとめ)

3ルートが合流するこのJR案は、今まで乗り換えの必要だった各地域からの電車が空港に直通するので利便性が向上し最強です。ただし、貨物ターミナル駅から羽田空港間のトンネルはかなりの工事費がかかりそうです。

一言言っておきたいのは、使われていない貨物線跡や京葉線用トンネル跡の遊休資産がこれだけ残っているのは、ラッキーということより、いかに国民の金を使って無駄遣いをしたかということです。

 もう一つ気になるのは、臨海部の地上に開いたトンネルや地下駅の津波対策はなされているかどうかです。

 

(参考資料)

入出庫線に関して、下記のサイトを参考にしました。

・八潮車両基地入出庫線(概説) - りんかい線東臨トンネル(31)

・八潮車両基地入出庫線(現地写真) - りんかい線東臨トンネル(32)

 

2017.04.23

 

 


蒲蒲線は実現しない! のまとめ その3

2017年04月17日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

蒲蒲線は実現しない! のまとめ その2」の続きです。無謀にも金の計算をしてみます。

 

第一期の工事費1260億円を金利ゼロ(なんて、ありえないが)で30年かけて支払うとすると、年間42億円返済する必要がある。運賃収入を適当な仮定を置いて計算します。

(総額の1/3とか1/2の補助金が出れば、もっと少ない支払いで済む)

 

私の試算

 

年間:365日

一日の運行時間:朝5時から深夜1時までの20時間

一時間の運行本数:15分おきの4本(単線ならこんなもん)

電車:10両連結(メトロからの直通)

1両の乗車人員:50人(座席が埋まっている感じ)

両蒲田駅間の運賃:200円(バスとおなじくらい)

そうすると

1日の乗客数は

50人×10両×4本×20時間=40,000人

逆方向にも同数乗るとして乗降客数は80,000人

1年の売り上げは

200円×80,000人×365日≒58億円 

42億円を返済に回すと残りは16億円

これだけあれば、運行経費はそこそこ賄える、かな?

(私は鉄道屋ではないので、どの程度の経費が必要か、詳細はわかりません)

 

京急線と東京モノレールの乗降客数

 

ところで、上の計算で想定した蒲蒲線の1日の乗降客数8万人を京急と東京モノレールの乗降客数と比べてみます。(元のデータが京急で2015年、東京モノレールで2013年と異なりますが、他に信頼性のある数字が無いのでそのまま比較します)

 

京急の羽田空港国際線ターミナル駅と羽田空港国内線ターミナル駅を合わせた1日の乗降客数は約103,899人(2015年度)

 

一方、東京モノレールの羽田空港第1ビル駅 ・羽田空港第2ビル駅 ・国際線ビル駅を合わせた1日の乗降客数は約66,225人(2013年度)。

 

8年前の2005年は69,993人と昔の方が多い。ここには載せていませんが毎年のデータを見ると漸減しています。(2005年当時は国際線ビル駅が無いので含まない)

 

参考までに、2013年度の浜松町駅の乗降客数は108,134人。浜松町駅の乗降客数と羽田空港全駅の乗降客数の差は、途中駅で乗降した人と仮定します。

 

これでわかることは、

・京急と東京モノレールの利用者の比率は、6割が京急、4割が東京モノレール

・京急の羽田空港全駅での乗降客は1日で10.4万人

・東京モノレールの羽田空港全駅での乗降客は1日で6.6万人

・東京モノレールの乗客数は漸減している

・浜松町から東京モノレールに乗降する人のうち、羽田空港を利用する人は6割

 

東京モノレールは、やはり不利ですね。起点となる浜松町は、山手線と京浜東北線が停車するが、東海道線や横須賀線は停車しないし、地下鉄の駅も少し離れているので不便。それに東京モノレールのホームに上がるのがしんどいし狭い。

 

それに比べて、新幹線、東海道線と横須賀線、山手線と京浜東北線が停車する品川駅や、東海道線と横須賀線、京浜東北線、横浜線が停車し、相鉄、横浜地下鉄の駅がある横浜駅で、JRから京急に乗り換えるのは比較的楽。(楽なのは、あくまで比較の話。ついでに、川崎駅でのJRと京急の乗り換えは止めた方が良い。結構離れている)

 

私が適当に想定した1日の乗降客数8万人は、京急と東京モノレールの中間くらいで、蒲蒲線には多すぎる。

 

仮に、蒲蒲線の1日の乗降客数を、東京モノレール羽田空港全駅での1日乗客数66.225人と想定すると、1年の売り上げは

200円×66,225人×365日≒48億円

42億円を返済に回すと、残りは6億円。

これは厳しいので、運賃を50円値上げして250円にすると

250円×66,225人×365日≒60億円

42億円を返済に回すと、残りは18億円

これで何とかなるかな?

 

じゃあ、蒲蒲線が東京モノレールの66,225人を達成できるかを考えると

・JR蒲田駅という京浜東北線しか停車しない駅で乗り換えてくれるか?

 浜松町とおなじくらい不便なので、あまり期待できない

 

・東横線を経由して蒲蒲線に直通するメトロ副都心線・西武池袋線・東武東上線から乗客を集められるか

 JRの空港アクセス線ともろに競合するので、利便性による

 

・目黒線を経由して蒲蒲線に直通するメトロ南北線・都営三田線から乗客を集められるか

 メトロ南北線は、JR空港アクセス線とあまり競合しないので期待できる。(埼京線と重ならない地域なら)

 都営三田線は、三田駅で京急に直通する都営浅草線に乗り換えられるので期待薄。

 

・東急沿線から集客できるか

 東横線・目黒線は期待できるが、それ以外の線は乗り換えが多くなり期待薄。

 

・南蒲田駅から京急蒲田駅間150㍍の乗り換えがスムーズにできるか

 京急の協力が得られないと乗り換えが大変。

を考えると、難しいと思う。

 

大田区の試算

 

ところで、大田区作成の2015年1月の資料には、1日の乗降客数を4.2万人とさらに少なく想定しています。東京モノレールの66,225人より少ないのでこちらが妥当かもしれない。

これだと、運賃を250円にして

250円×42000人×365日≒38億円

これでやっていけるのかなあ? 

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(補足 2017.04.19

この4.2万人という数字は、東急蒲田地下駅の同一ホームで東急と京急線を乗り換えるという従来の大田区案が前提の数字のはずです。

蒲蒲線は実現しない!のまとめ その1」の2番目の図を参照。

 そうすると、南蒲田駅と京急蒲田駅で乗り換えることになる2017329日の新聞記事の案の場合は、乗り換えの手間と時間が余計にかかるので、4.2万人よりさらに少なくなるはずです。

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この乗降客数は、補助金が少なくとも1/2出るなら何とかなるという想定でしょうね。

仮に補助金が1/2出ると年間21億円を返済すれば良いので、残りは17億円。これで、何とかなる。

 

一方の東急はいくら儲かるか?

東急の1年間の売り上げの増加分は、蒲蒲線を利用する人の1/2が渋谷-蒲田間を利用すると仮定(ザックリし過ぎているかも?)して、渋谷-蒲田間が(目黒-蒲田間も)現在220円なので

220円×42,000人×0.5×365日≒17億円。

増収分がこれだけか、案外少ないなあ。東急は設備の改修が多いと思うので、これだけではねえ。

 

ここで、渋谷→羽田空港間の現在の運賃を、蒲蒲線経由と京急経由で比較して、どちらが得か計算します。JRの空港アクセス線の運賃は全く分からないのでやりません。

 

東急・蒲蒲線経由:

渋谷→(東急¥220)→東急蒲田→(蒲蒲線¥200と仮定)→南蒲田→(徒歩)→京急蒲田→(京急¥340)→羽田空港 :計¥780

 

JR・京急線経由:

渋谷→(JR¥170)→品川→(京急¥410)→羽田空港 :計¥580

 

蒲蒲線の運賃¥200の差が出ていますが、2つの運賃はビックリするような差ではない。空港線が¥340は高いと思うけど。

 

 

ここで、乗降客数のまとめ。

京浜急行の羽田全駅:10.4万人

蒲蒲線の私の適当な試算:8万人

東京モノレールの羽田全駅:6.6万人

蒲蒲線の大田区の試算:4.2万人

 

結論は、「その1」と同じで蒲蒲線は非常に厳しい。可能性があるとすれば、蒲蒲線の利便性を向上させて、競合になるJRの空港アクセス線に対して魅力あるような路線になるかどうかです。

 

(参考資料)

京急ハンドブック(2016~2017)

東京モノレールデータブック(2015~2016)

 

次回はJRの空港アクセス線について

 

2017.04.17


蒲蒲線は実現しない! のまとめ その2

2017年04月14日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

蒲蒲線は実現しない!のまとめ その1」の続きです。

蒲蒲線の課題(繰り返しになる項目もあります)を整理します

 

20173月の記事の第二期工事では、東急と京急は線路幅が違うので、そのままでは直通出来ない

 

(第一期工事では直通しないので線路幅の問題は無いが、京急蒲田駅への乗り換えのために約150㍍以上歩き、地下23階と地上23階の間を移動する)

 

東急の線路幅は1067㍉㍍、京急の線路幅は1435㍉㍍なので、直通は出来ない。対案は四つ。

1)途中駅で乗り換え

 1260億円以上の高い金をかけて作ったのに、乗り換えとは! JRより利便性が落ちると客が来ないよ

2)三線軌条にして、両方の電車が走れるようにする

 三線軌条は難しい技術ではないし、日本中にある。ただし、京急の協力が必要。

3)フリーゲージ・トレイン

 線路幅に応じて、車輪の間隔を変えられるシステム。日本にはこの技術が無い。

4)空港までもう1本、1067㍉㍍の線路幅の線路を新設する

 そこまで金を掛けたくないし、国は認可しない

 

赤線は蒲蒲線の第一期工事区間、ピンク線は第二期工事区間

Google地図を加工

 

JR/東急蒲田駅と京急蒲田駅の間は家屋やビルが密集し、地下でも線路を作るのが困難

 

1)現在ある2車線の道路(一方通行)の地下を通す

大田区案の京急蒲田駅の南150㍍のところを通るのなら、上のGoogleの地図で赤線を引いている道路になります。この道は2車線(一方通行)の幅しかなく複線は無理。単線なら何とか。大田区案では単線になっている。

 

2)民家を買収して4車線の道路を作り、その地下(または高架)に線路を作る

時間と金がかかる

 

JR東の計画している空港アクセス線との競争に勝てるか?

 

JR東は埼京線と繋がるりんかい線(東京臨海高速鉄道、JRとは経営が異なる)の途中から分岐して羽田空港に向かう鉄道を新たに建設する構想を持っており、これが競合路線になる。埼京線など、この路線に直通する電車は、羽田空港まで乗り換えなしで直接乗り入れるので、蒲蒲線より利便性が良い。大田区案の蒲蒲線のように乗り換えがあると客は敬遠する。

 

そうすると、東急東横線と繋がるメトロ副都心線や西武池袋線、東武東上線の沿線の客の取り合いになり、JR東の空港アクセス線のほうに客が流れる可能性がある。

 


④東急線の課題

 

  • 東横線と目黒線

既に書いていますが、相鉄と接続する東京都心直通線(工事中)を経て、東横線や目黒線に相鉄線から電車が直通してくる。これは既に書いているので、下記ブログ参照。

 

2016617日のブログ「「相鉄・東急直通線」のまとめ」

 

これによると、東横線で4本、目黒線で6本、相鉄線からの電車が増える(現在は菊名止まりの電車を相鉄への直通に転用?)と推測しています。

 

蒲蒲線に直通する電車は、南蒲田駅に乗り入れる部分は大田区案では単線なので、1時間に4本程度が妥当。そうすると、東横線から2本、目黒線から2本直通すると仮定します。

 

東横線は、相鉄線からの電車4本に加えて、蒲蒲線の電車を2本増発することは、東横線の混雑は今でも厳しいので難しいのでは? 目黒線なら相鉄線からの電車6本に加えて、蒲蒲線に乗り入れる電車を2本は増発できるかも?

 

ところで、電車を増発できたとしても、現在の渋谷駅の混雑はさらに増える。渋谷再開発後の高層ビルや地下空間は何回も雑誌などで紹介されているが、東横線や田園都市線の混雑緩和の取り組みは皆無です。狭い渋谷駅の混雑を何とかしないと、事故が起きるよ。メトロ銀座線の改良だけではどうしようもない。

 

  • 田園都市線と大井町線

この沿線の人たちにとって、蒲蒲線は便利だろうか? 田園都市線沿線の人たちが蒲蒲線を利用しようとすると、大井町線に乗り換える必要がある。大井町線から東横線に乗り換えるには、自由が丘駅で乗り換えになり、これで乗り換えが2回目。それだったら、田園都市線と大井町線沿線の人たちは、大井町線の終点の大井町駅まで行って、JRの空港アクセス線(計画中で現在はありません。現在はりんかい線だけが走っています)に乗り換えると、これから先は乗り換えが無いので、楽です。といっても、地上の東急大井町駅から、すぐ横の道路の深い地下にあるりんかい線のホームまで、結構な距離を移動しますが、それでも第1期蒲蒲線の終点の南蒲田駅から京急蒲田駅間より短いと思います。

 

  • 多摩川線

現在は3両編成のワンマン電車が多摩川駅と蒲田駅間の地上を各駅停車(途中5駅)で走っています。駅のホーム長は34両分しかなく、急行を避ける待避線も無く、踏切は多い。したがって、8両または10両連結の電車は多摩川駅(東横線と多摩川線が分岐する駅)と東急蒲田地下駅間をノンストップで走るしかないが、3両の電車と運行ダイヤを調整できるのかどうか? 普通に考えると、途中駅に待避線が必要になるが、3両分なら何とでもなるか。


2017.04.15追加)

多摩川駅は、東横線と目黒線が高架で、地下に12線の多摩川線ホームがあります。線路は隣の田園調布駅方面へ続いており、田園調布駅の手前で目黒線に合流しています。この多摩川線ホームは810両分の長さは無く、延長できる余裕があったかどうか? 延長できないと、蒲蒲線直通の電車は多摩川駅にも停車できない。それに、3両の多摩川線の電車は、多摩川駅の12線のホームで折り返すので、蒲蒲線に直通する810両の電車とのダイヤ調整は難しそうです。駅の構造を変える必要があるかも?



⑤第二期事業は可能か、そして京急の協力は得られるか?

 

上でも書いたように、蒲蒲線が出来ると京急本線の乗客が減少するリスクがある。少なくとも、乗客が増える理由は無い。自らに減収リスクのある事業に民間鉄道事業者が金を出すわけがない。

 

京急が協力する可能性としては、JR東の空港アクセス線が出来る時。JR東の空港アクセス線が出来ると、京急の乗客も減少する可能性があるので、東急と協力して対抗する方策があればよいが、思いつかないなあ。

 

⑥蒲蒲線の採算は合うか?

無謀にも「その3」は、こちら

 

2017.04.14


蒲蒲線は実現しない! のまとめ その1

2017年04月11日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

蒲蒲線について、今まで下記の4件を書いています。これらのブログは書いてから時間が経っていますが、今でもかなり読まれているようです。しかしながら、大田区案を詳細に読む(下記のブログの4件目)と、大田区の意図を見誤っていたことに気付きました。したがって、それまでのブログを読むと誤解を受けそうなので4回に分けて書き直します。思ったより量が増えました。

 

今までの蒲蒲線についてのブログは

20150410日の「蒲蒲線は実現しない!」、

20160107日の「蒲蒲線は実現しない!~続き~

20160115日の「蒲蒲線は実現しない!~JRはどうする?~

20160215日の「蒲蒲線の大田区案を見る

です。参考までに

20160115日の「「**線」、外には言えない本音の話」

というのもあります。参考まで。

 

と思っていたら、2017329日の新聞に、大田区は2017年度中に蒲蒲線の地下部分や線路など設備を作る第三セクターを設立するという記事が載っていました。

 

  • 大田区が「新空港線(通称蒲蒲線)」の整備事業を発表

 

(蒲蒲線と京急本線が交わる地点は、大田区のホームページの20151月の資料によると、京急蒲田駅から南に150㍍離れた南蒲田駅(京急線にそういう名の駅は無い)です。今回20173月の発表では、蒲蒲線が京急本線と交わる地点がこの南蒲田駅なのか、別の場所なのか、明確に書いてないので、ここでは従来通り南蒲田駅と想定します。したがって、蒲蒲線南蒲田駅で降りて京急蒲田駅に行くには、水平方向に最低150㍍移動し、南蒲田駅の地下2階3階から、京急蒲田駅の空港線ホームのある地上2階3階まで移動する必要があります)

 

新聞記事によると、第一期工事(下図で赤線)では、東急多摩川線の矢口渡駅付近から分岐して地下に入り、JR/東急蒲田地下駅を通り、南蒲田駅の地下に乗り入れる構造です。当然ですが、第一期の蒲蒲線の線路幅は東急と同じ1067㍉㍍です。(京急は1435㍉㍍)

 

第二期(下図でピンク線)は、南蒲田駅の地下からさらに線路を伸ばし、京急空港線糀谷駅の次の大鳥居駅付近で京急に乗り入れます。20151月の資料には、事業費は第一期と第二期を合わせた総額が約1080億円でしたが、今回は第一期だけで、1260億円と大幅に増えています。

 

赤線は蒲蒲線の第一期工事区間、ピンク線は第二期工事区間 (Google地図を加工)

 

20151月の大田区案(下の図では「従来」)を見ると、東急多摩川線はJR/東急蒲田地下駅に乗り入れる一方、京急空港線は大鳥居駅付近で分岐して地下に潜り、南蒲田駅を通ってJR/東急蒲田地下駅に乗り入れて、東急と京急の電車を同じホームで乗り換える構造でした。

 

 

20151月の大田区案(上の図では「従来」)では、京急分の線路の方が長いので、京急が負担する費用も東急より多かったはずで、京急にしては納得がいかない構成でした。今回20173月の発表を見ると、第一期では逆に東急が南蒲田駅の地下に乗り入れています。京急が乗り気でないので、こうせざるを得ないでしょう。

 

ホームページに記載されている株主向けの資料を見ると、「東急ファクトブック」にはちゃんと「新空港線」が載っているが、「京急ファクトブック2016」には、蒲蒲線のことは全く何も記述がない。東急と京急の力の入れ方の差が歴然と分かります。

 

  • 大田区の思惑

 

大田区は、約800㍍離れたJR/東急蒲田駅と京急蒲田駅を蒲蒲線で結んで、両蒲田駅付近の活性化を図るつもりと当初私は思っていました。しかし、蒲蒲線の大田区案を詳細に見ると、そうではないということに気がつきました。

 

20151月の大田区案では、蒲蒲線と京急が交差するところは、京急蒲田駅から150㍍ほど南に離れた駅(以前の大田区案では「南蒲田駅」)で、大田区産業プラザが近くにあるが、他にこれといった施設は無く、JR/東急蒲田駅と鉄道で繋がってもどうってことない。

 

私の推測ですが、大田区の第一の目的はJR/東急蒲田駅と羽田空港を鉄道で結ぶことで、二つの蒲田駅を結ぶことではない。JR/東急蒲田駅付近は大田区で一番の繁華街で区役所もあるけど、羽田空港へは1時間に数本の京急バスが走っているだけ。こういう状況を改善して、羽田空港からのアクセスを便利にし、この地域を発展させる起爆剤にしたいのでしょう。

 

  • 京急の思惑

 

京急は、羽田空港への空港線の改良工事を完成させたばかりです。これにより、通行量の多い第一京浜を横切っていた空港線の踏切を廃止し、京急本線から空港線へスムーズに電車を導けるようになった。

 

それなのに、羽田空港からJR/東急蒲田駅まで線路を引くと、京急本線を利用せずに、JRや東急を使って京急空港線だけを利用する乗客が増える。ということは、京急空港線より乗車距離の長い京急本線の乗客が減少する可能性があり、結局は京急に減収のリスクがある。

 

高い工事費をかけて減収のリスクがある新線を民間の鉄道会社がやるわけがない。こんな簡単なこと、23年前は誰も書いていませんでした。マスコミは気がつかないし、大田区や鉄道ライターは知らんふりしていたのでしょう。

 

  • 東急の思惑

 

前述の「東急ファクトブック」を見ると、東急は蒲蒲線をやる気満々です。蒲蒲線で一番得をするのが東急ですから。東急蒲田駅に至る東急多摩川線、多摩川線と直通する東横線、東横線と繋がるメトロ副都心線、メトロ副都心線と繋がる西武池袋線・東武東上線からの乗客が増える可能性がある。しかし、メトロ副都心線・西武池袋線・東武東上線は、JRの空港アクセス線に直通する(と想定される)埼京線と競合する。

 

また東急多摩川線へは、東急目黒線(元は同じ目蒲線ですから)と線路が繋がっているので、東急目黒線からも電車が直通可能です。そうすると、東急目黒線と繋がるメトロ南北線と都営三田線からの乗客が増える可能性がある。ただし、都営三田線の乗客は三田駅で、京急に直通する都営浅草線に乗り換えられる(乗り換えに階段しかないのが不便ですが)ので、遠回りになる目黒線を利用するかどうか? 一方のメトロ南北線は、競合が少ないと思われます。

 

 

本家本元の東急沿線からの客は増えるでしょうか? 東横線・目黒線以外の東急沿線、すなわち田園都市線・大井町線・池上線(図には書いていません)から多摩川線へのアクセスが悪いので、東横線・目黒線以外の東急沿線からの客はあまり当てにできないと思う。

 

一番の問題は、東急は現在相鉄と東京都心直通線を作っていて、この線が完成すると相鉄からの電車が東横線と目黒線に直通してくる。今でも東横線は目一杯の電車が走っているのに加えて、相鉄から電車が乗り入れて来ると、もう線路に余裕が無い。相鉄との東京都心直通線の話が出た時点で、蒲蒲線はありえない。第二東横線を作れば別ですが、沿線の人口減少が見えているので、東急はそんな金のかかることはしない。

 

相鉄線の電車は目黒線にも直通してくるけど、目黒線は未だ余裕があるはずなので、こちらなら蒲蒲線への直通は可能かもしれない。

 

東急にとって本当に好ましいルートは、上図を見るとわかるように、JR/東急蒲田駅の地下を経由せず、環八の地下をそのまま進んで京急と接続することです。この方が費用も少なく、工事期間も短い。しかし、大田区はJR蒲田駅と空港を結ぶのが目的なので、この環八ルートは認めない。

 

結論は、いくら大田区がやる気になっても、京急は減収のリスクがあるし、東急は物理的に電車の増発は困難。それに、競合のJR東の空港アクセス線に伍していくには、蒲蒲線が本当に使いやすい路線になる必要がある。そのために京急の全面的な協力が必要ですが、それが見えていない現状ではJRに負けてしまう。ということで、蒲蒲線は実現しない。無理に作れば、採算が取れない。

 

長くなったので、続編の「蒲蒲線は実現しない! のまとめ その2」では、蒲蒲線の乗り越えるべき大きな問題点(繰り返しになる項目もあります)を整理します。

 

2017.04.11

 

(追加) 蒲蒲線は環八経由?

 本屋で「2030年日本の鉄道 未来予想図」という雑誌のような本を見ていたら、「えっ!」と思いました。そこには、蒲蒲線が環八経由と書かれていました。まさか、「俺、間違えたかな?」と慌てて確認しましたが、環八経由なんてこの本以外はどこにもそんなこと書いてない。

 例えば、国交省の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申)」や大田区のホームページをもう1回確認しても、環八経由なんてどこにもない。ビックリさせないで欲しいよ。

2017.04.18

 

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