共同通信は「北朝鮮が今年5~9月に発射したミサイルのうち、日本海側で警戒中だった海上自衛隊イージス艦や日本の航空自衛隊レーダーが探知できない事例が2回以上あった」と伝えています。この報道は共同通信しか伝えていない(私が見た範囲なので他紙が記事にしているかも)ので、真偽はわからない。
ところで、GSOMIAが北朝鮮ミサイルの迎撃に効果あるのかないのか、そもそも情報交換の枠組みなのか、疑問ではないですか? それで下記の二つの報道A)とB)を比較してみました。
A)韓国の中央日報が報じた日本の共同通信の記事
B) 時事ドットコムニュースの2019年9月12日の記事より、金沢工業大学虎ノ門大学院教授で元海将の伊藤俊幸氏の話。
下記の表は、A)とB)からピックアップした内容です。
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時事(金沢工大 伊藤教授) |
共同通信(中央日報) |
GSOMIAの役割 |
第三国への漏えい防止を約束した条約で「情報交換枠組み」ではない |
情報を両国が交換する日韓GSOMIAはミサイル探知に有効 |
北朝鮮ミサイルの探知 |
まず発射は ①米軍の早期警戒衛星で探知 次いで ②日本や韓国の対空レーダーで探知 |
・日本や韓国の対空レーダーで探知 ・テレメトリ(*)(遠隔測定信号装置)信号も韓国軍の有力な情報源(#) |
韓国は北朝鮮ミサイルの探知データを日本に連絡するのか? |
無し。そもそもGSOMIAの目的ではない。韓国のレーダー情報を共有する枠組みはない。 |
明確に示されていないが、韓国からの情報を得られると読める。 |
(#)元自衛艦隊司令官香田洋二氏の話を引用している
(*)テレメトリ(遠隔測定信号装置):ミサイル飛行データや位置情報を知らせるために発信する信号電波
この表のように、共同通信の記事と時事(伊藤教授)の記事が食い違っている。これでは、一般人の我々が判断しようが無い。
それで、共同通信の伝えた記事をさらに詳しく見ると、
・北朝鮮が今年5~9月に発射したミサイルのうち、日本海側で警戒中だった海上自衛隊イージス艦や日本の航空自衛隊レーダーが探知できない事例が2回以上あった
・日本が北朝鮮ミサイルの軌道探知に失敗した理由は、ミサイルの大部分が通常よりも低い高度の60キロメートル以下で飛行し、かつ変則的な軌道のため
・韓国軍はミサイル探知に成功したとみられる
(探知方法が、レーダーなのか、テレメトリ(遠隔測定信号装置)信号の傍受なのか、書いていない)
共同通信の記事には、北朝鮮ミサイルが発射されてから着弾までの間、GSOMIAを使った日韓間の情報交換が有るのか無いのか明確に書いてないのに、GSOMIAの破棄は日本の安全保障に影響が及ぶと書いている。実際に、ミサイルが発射されたという韓国からの情報があっても、ミサイル着弾まで短時間なので、日本の自衛隊がミサイルを撃ち落とすことができるのかなあ?
日本の自衛隊が探知できないのに韓国軍が探知できたのは、韓国軍の防空レーダーではなく、テレメトリ(遠隔測定信号装置)信号を傍受したから? これもよくわからん? 疑問符が付く話ばかりで、これでは余計に混乱する。
「海上自衛隊イージス艦や日本の航空自衛隊レーダーが探知できない事例が2回以上あった」のは正しい情報としても、だからといって韓国とのGSOMIAに全面的に依存するのもどうかと思うよ。非常時に韓国を信用できるのかな?
それに、この共同通信の記事のネタ元に疑問がある。この記事は、「GSOMIAを破棄して困るのは日本だよ。『破棄しないで!』と韓国にお願いして当然だよ」と言っているようなもの。もしかして、この共同通信の記事のネタ元は韓国かもしれないし、その可能性が高いと思う。その共同通信の記事を韓国メディアが引用すると、目的の一つは達したことになる。
2019.09.26
(追加)SLBM発射の時、イージス艦はいなかった 2019.10.05
10月2日に北朝鮮がSLBMを発射した時、速報では2発を発射したと日本政府は発表したが、後に1発と訂正した。韓国は1発と言っていた。報道によると、日本はイージス艦を引き上げていて、日本海にイージス艦がいなかったとか。イージス艦がいなかったので、発射本数を間違えたかどうかは不明だけど。