ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

メタンハイドレート、南海地震の震源域で商業生産できる?

2013年04月21日 | 科学・技術

現在ほとんどの原発が停止しており、原発以外のエネルギー、太陽光・風力、LNG(液化天然ガス)、シェールオイル・ガスなどに関心が集まっています。

このような状況下で、先日、渥美半島~志摩半島沖の海底下の地層から、メタンハイドレートの海洋産出試験が行われ、メタンハイドレートのガス採取が大きく報道されました。

 

メタンハイドレードは、深海底のような「低温・高圧」では固体で、地上では-80℃以上になると、気体になります。その主成分は天然ガスと同じメタンです。

 

メタンハイドレートは、海底や海底下の地層に存在します。

 

海底表面に塊で露出、あるいは海底下の地層に塊で存在している。

 ⇒現時点で、コストに見合う採取法が無い

 

海底下の砂層中に固体で存在している。南海トラフ付近はこの形態。

⇒ガス化して取り出せるなら、扱いが比較的容易


②の砂層中からの採取には次のような方法が試みられています。

 

・(加熱法)温水注入によって、加熱しガス化する →エネルギーを食いすぎで実用的で無い

 

・(減圧法)圧力を低くしてガス化する →カナダの陸上部で採取実験済み

 

今回試験を行った渥美半島~志摩半島沖は、この減圧法でガス化して採取した。

ということで、当面は南海トラフ付近で減圧法を用いて試験採取することになります。メ
タンハイドレートの「産出試験」としては、これで良いと思います。

ところで南海トラフは、紀伊半島や四国の沖、100150Kmにあって、深さは4000m程度です。南海トラフ(あまり深くないので、「海溝」では無く「トラフ」と呼ぶ)では、陸側のユーラシアプレートの下に海側からフィリピン海プレートが潜り込んでいます。

タンハイドレートは、南海トラフと紀伊半島や四国などの陸地との間に分布し、ほぼ南海地震の想定震源域付近の海底です。

 

そうすると、疑問が浮かびます。メタンハイドレートを掘削し生産する海上施設を、陸地から数十Km沖に設置すると、南海地震が発生したらこの施設は地震動と津波の影響を大きく受けるはずです。そうすると、メタンハイドレートの生産施設の安全は確保できるのでしょうか?ほとんど震源域の真上ですよ。(メタンハイドレートの採取が南海地震を誘発しないと思いますが、そのうちきっと「誘発する」と主張する人も出てきます。)

 

タンハイドレートは、大地震が発生する可能性の低い海域で、採取可能な地層を探すしか無いと思います。南海トラフ付近でのタンハイドレートの商業生産はありえないです。

 

2013.04.21

 

下記の情報を追加しました。

lタンハイドレート(MH)の日本周辺の分布は、下記の「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称:MH21)」のサイトで見られます。

http://www.mh21japan.gr.jp/mh/03-2/

 

このページの一番下です。メタンハイドレートが一番多く分布しているのが、南海トラフ付近とは!

 

l        南海トラフ、および南海地震想定震源域は、地震調査研究本部のサイト

http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/kaiko/k25_nankai.htm

で見られます。

 

2013.05.08


国際線形加速器ILCの日本誘致より、原発対策を!

2013年04月21日 | 科学・技術

ILCInternational Linear Collider)を日本に誘致する話があります。

 

現在、ジュネーブ近郊の地下100mにある周長27Kmの円形加速器が、世界最高の性能を誇っています。この加速器は国際協力で出来たもので、最近ではヒッグス粒子が存在するという証拠を見つけたという発表がありました。

しかし、この加速器でも性能的に不十分なので、次は円形ではなく、直線で約30Kmの加速器を地下100mに作る計画があります。日本は、佐賀県の背振山地(福岡市中心部から南約20Kmの佐賀県側)と岩手県の北上山地(盛岡市と三陸海岸の間)が候補地として名乗りを上げています。誘致場所は、活断層が無く、固い岩盤があるという条件があり、いずれの場所も適地であるということです。他に手を挙げた国は、アメリカ、欧州などですが、アメリカ・欧州は手を下したそうです。

 

費用

このILC計画も国際協力で建設するので、各国は分担金を支出することになるわけですが、誘致国は多めに出すことになります。建設費は10年で8000億円を見込んでおり、誘致国がその約半分(と言うことは、4000億円)を負担するそうです。

 

活断層

産総研・地質調査総合センター(以前の地質調査所)の「地質Navi」を見ると、確かに、北上山地には活断層が一本も無いです。脊振山地は近くに1本ありますが、これを避けても30Kmは取れそう。

 

課題

しかし、私はこの国際線形加速器ILCの日本誘致には反対です。その理由は次の二点です

①今世界から日本に求められている第一は、福島の原発対策です。こちらに、お金と人材を掛けるのが、日本の責任です。

②地震活動が活発化している日本列島に、長期間30KmにわたってILCの精密さを保証できるのか?近くに活断層が無く、固い地盤に乗っていても、海溝型の地震の影響は出るのでは?

 

加速器を使った素粒子実験は、コスト的にも性能的にもそろそろ限界が来ており、もう終わりにして別の方法を考えた方が良いと思います。それほど実世界に役立つことは無いのですから。

 

2013.04.21