米国のヒューレット・パッカードはシリコンバレー発祥の老舗企業の一つです。当初は電子計測器が有名で、私も使っていました。その後はコンピューターやその関連機器、プリンターなどの事務機へと事業を広げました。現在ではピーク時より売上は減少していますが、年間の売り上げが約13兆円の大大企業です。
創業の電子計測器は、現在「アジレント・テクノロジー」という会社に分社化されています。
さらに最近になって、ヒューレット・パッカードは2015年10月に、プリンターとパソコンの会社新「HP」と、サーバーやサービスを行う新「ヒューレット・パッカード・エンタープライズ」の二つの会社にほぼ等分割することを発表しました。
週刊ダイヤモンド2014年11月29日号の記事「日本企業の最後の楽園 複合機市場に忍び寄る異変」という記事には、サムスンが分社化されたプリンターとパソコンの会社新「HP」を買収する噂が書かれています。真偽のほどはわかりませんが、事実とすればサムスンはホントに焦っています。
私は2013年8月27日付けの「会社は急には変われない その2~サムスン電子~」で、サムスンの日本のメーカーをターゲットにした「2番手戦略」の話を書きました。ターゲットが明確な時は、この「2番手戦略」は有効ですが、マーケットが成熟してくると遠からず行き詰まります。サムスンは思いのほか短時間でその時が近づいて来たようです。
また、2013年9月20日付の「サムスンの焦り~時代遅れの複写機合弁会社設立~」では、サムスンがシャープの複写機部門を買収しようとして失敗したことを書きました。その時は、ペーパーレスの時代に複写機?と、サムスンが相当焦っていると書きました。サムスンが、日本メーカーのおいしい所を研究してその果実を取る「日本教科書戦略」も未だ健在なようです。
週刊ダイヤモンドの記事には、複合機(複写機とほとんど同じ意味)のピークは2016年で、それから徐々に減少に転じると書かれています。これには私も同感で、新興国で紙消費が伸びない限り、減少傾向だと思います。
そのような事業をサムスンが多額の費用をかけて買収するとは信じられない。新「HP」を買収したのち、パソコン部門(昔のCompaq)を中国メーカーに売却するにしても、買収には相当な金額が必要です。ただし、「ヒューレット・パッカードエンタープライズ」の経営者は、片割れの新「HP」が高く売れるので喜ぶかもしれませんが。
そういえば、昔ソニーも複写機事業に興味あるのでは?という噂がありました。皆さん、消耗品ビジネスはおいしいと思っているようですが、写真フィルムのようにデジカメが普及すると、消耗品ビジネスも雲散霧消しますからね。
最近のサムスンの四半期決算で営業利益が前年同期比60%減のニュースが出ていて、新聞・雑誌は「サムスン凋落」などの見出しを付けています。サムスンは元々の利益がメチャ多いので、マスコミが言うほど業績は悪くないと思っていましたが、新「HP」の買収を画策するとは?
週刊ダイヤモンドの記事が本当だとすると、サムスンも早晩ソニーと同じような状態になるのもそう遠くないと意見を変えました。
2014.11.29
「サムスンが米HPに売却」
見出しを見た時、ビックリしました。上記の記事から2年弱が経過し、米HPとサムスンの攻守が逆転していますから。しかし、その見出しも「サムスンが米HPに*事業を売却」というのと「米HPがサムスンの*事業を買収」と二通りがあって、「どっちがホント?」と思いました。サムスンの最近の状況を考えると、サムスンが主導して「米HPに*事業を売却」というのが真相だろうと推測します。
それに、「*事業」のところも、同じ新聞に「プリンター事業」と「複写機事業」の二つがあって、「どっちじゃい?」という感じ。売却するのは同じ事業でしょうが。
サムスンは現在の主力事業と今後伸びそうな新規事業に注力するために、非中核事業を整理中らしいので、これは真っ当な戦略です。
韓国の新聞は9月9日にこの噂を伝えているので、現地では早く噂が流れていたのでしょう。この新聞はサムスンがさらに事業を整理するのでは?と書いています。
2016.09.13