ほぼ週刊 横浜の山の中通信

世界の片隅で暇つぶし

日本のコンテナ船“MOL COMFORT”沈没原因調査の最終報告書

2015年04月04日 | MOL COMFORT沈没

実質的に日本のコンテナ船“MOL COMFORT”が沈没した事故はあまり知られていません。2015年3月3日に国交省の最終報告書が出ましたが、やはりマスメディアは取り上げていないようです。

それで繰り返しになりますが、事故の概要を簡単に書きます。

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三菱重工が建造し、商船三井が運用していたコンテナ船“MOL COMFORT”が、2013年6月17日にインド洋で船体が中央部から二つに折れ、船体前半分は10日間漂流後に沈没、船体後半分は漂流中に引航を試みるも火災を起こし、7月11日に沈没しました。積荷の4382個のコンテナは全部失われましたが、乗組員(全員外国人)は全員救助されています。沈没した海域の水深は3~4000mあり、船体の引き上げは困難です。なおこのコンテナ船は、就航して数年の新しい船で、商船三井には同型船が6隻あります。

 

船体が折れる寸前の様子、二つに割れた船体が漂流する様子などの衝撃的な写真がインターネット上に出ています。これらは、“MOL COMFORT”で検索すると出てきますが、一つだけ挙げておきます。詳しくは過去のブログを参照ください。

http://www.heavyliftspecialist.com/accidents/fully-cellular-containership-mol-comfort-90613-dwt-reportedly-broken-metre-seas/

(2016.01.12現在、上記の記事・写真は削除されています。2013年7月15日のブログ「インド洋で商船三井の“MOL COMFORT”が嵐で真っ二つ」の後半で数件のサイトを紹介しているのでそちらを参照してください)

 

その後の対応として

①商船三井は、“MOL COMFORT”と同型の船6隻の船体を補強し改修した。

②国土交通省は「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」をつくり、2013年12月に中間報告を出した。その内容は

・亀裂は中央部船底外板から発生と推測

・沈没した船と同型の複数の船の中央部船底外板に、20mm程度の「座屈変形」を確認

・「座屈」に至るかシミュレーションしたが、再現できていない

 

  • 中間報告の全文:

https://www.mlit.go.jp/common/001022351.pdf

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ここから国土交通省の最終報告書と日本船級協会の報告書についてです。

  • 国土交通省の最終報告書

http://www.mlit.go.jp/common/001081291.pdf

  • 船舶の検査を行う日本船級協会の報告書

http://www.classnk.or.jp/hp/pdf/news/Investigation_Report_on_Structural_Safety_of_Large_Container_Ships_JA_ClassNK.pdf

 

これらの報告書の内容を簡単にまとめると、

(1)船体破断の原因は、船底外板の「座屈変形」から座屈崩壊に至ったと推定する

(2)“MOL COMFORT”の同型船以外のコンテナ船を数隻チェックしたが、船底に座屈崩壊の原因となる「座屈変形」は無かった

(3)船体破断の原因は船体の強度不足(他のコンテナ船より船体強度の余裕が少ない)

 

“MOL COMFORT”の船体の強度不足は予測された話なので、報告書では船体にどういう力が働いた時に船体強度を越える力が働くか、いろいろな力の働く可能性をシミュレーションで検討しています。その結果、従来のシミュレーションでは差が出ないが、外力のかかり方にある要因を考慮したシミュレーションでは差が出ると言っています。しかし “MOL COMFORT”の船体強度が、いかなる理由で余裕が少ない設計になったのかは示されていません。つまり

1)“MOL COMFORT”は他船の船体強度と同じつもりで設計したが、結果的に他船より船体強度の余裕が小さくなった。それはどのような設計が原因なのか?

2)初めから、船舶検査には合格するが、船体強度の余裕をギリギリに少なくする設計にした

 

1)と2)では対策がかなり違うと思うのですが、どちらかは書いてありません。船体強度のシミュレーションで差が出たと言っているので、船体の構造が他船とどこが違うのか、検討委員会の担当者はわかっているはずです。

とはいうものの、商船三井は同型船6隻をさっさと補強し改修をしたわけですし、他のコンテナ船に船底外板の「座屈変形」は無いので、2)のギリギリ設計のように思えます。

 

ところで今年3月2日に、商船三井は世界最大のコンテナ船を新造すると言うニュースがありました。発注先はサムスン重工に4隻、今治造船に2隻だったので、三菱重工は避けたのかな?というのがニュースを聞いた時の感想です。

 

これも私の感想ですが、三菱重工は先端的な分野、ロケット・旅客機パーツ製造・旅客機開発・原発・風力など多くを手掛け過ぎて、隅々まで手が回らなくなっているような気がします。

 

(注)「座屈変形」について

前回のブログでも紹介しましたが、下記のサイトに「座屈変形」の良くわかる解説があります。ぜひご覧ください。

http://www.shims.shinshu-u.ac.jp/lab/kozo/buckling.htm

 

2015.04.04

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日本のコンテナ船“MOL COMFORT”の「沈没と原因解明」のまとめ

2014年12月17日 | MOL COMFORT沈没

実質的に日本のコンテナ船“MOL COMFORT”が沈没した事故は、マスメディアでは取り上げられておらず、あまり知られていません。しかしながら、その衝撃的な写真は世界中に流れており、技術大国日本として王道の対応が必要と思うので、関係者の努力を期待して今までの経緯をまとめます。

 

三菱重工が建造し、商船三井が運用していたコンテナ船“MOL COMFORT”が、昨年2013年6月17日にインド洋で船体が中央部から二つに折れ、船体前半分は10日間漂流後の6月27日に沈没、船体後半分は漂流中に引航を試みるも火災を起こし、7月11日に沈没しました。積荷の4382個のコンテナは全部失われましたが、乗組員(全員外国人)は全員救助されています。沈没した海域の水深は3~4000mあり、船体の引き上げは困難です。なおこのコンテナ船は、就航して数年の新しい船で、同型船が6隻あります。

 

船体が折れる寸前の様子、二つに割れた船体が漂流する様子などの写真がインターネット上に出ています。これらは、“MOL COMFORT”で検索すると出てきますが、ここでは三つだけ紹介しておきます。

 

写真は少ないが、コンテナ船中央部の亀裂がアップで見られます。 (2016.01.12現在、この記事・画像は削除されていますので、2013年7月15日のブログ「インド洋で商船三井のコンテナ船”MOL CONFORT"が嵐で真っ二つ」の後半で数件のサイトを紹介しています。そちらを参照してください)

http://www.heavyliftspecialist.com/accidents/fully-cellular-containership-mol-comfort-90613-dwt-reportedly-broken-metre-seas/

 

船体後部の沈没、船体前部の火災と沈没の写真が30枚掲載されています。

http://www.shipwrecklog.com/log/tag/mol-comfort/

 

沈没海域がわかります

http://gcaptain.com/mol-box-ship-suffers-broken-back-sinks-off-yeme/

 

なお、このコンテナ船にはシリアの反政府軍向け武器・弾薬が積まれていたので、政府軍を支援するロシアが沈めたという想像だけの話(サイトを書いている人は海運か造船関係者?)は世間話的には面白いのですが、日本の最新技術を集めたコンテナ船が沈没したという現実を直視できないのでしょうか。

 

以上が日本のコンテナ船“MOL COMFORT”の沈没事故の状況です。

じゃあ、今後はどうするの? ちゃんと対応するんでしょうね!

 その後の対応

①商船三井は、“MOL COMFORT”と同型の船6隻の船体を補強し改修した。

②国土交通省は「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」をつくり、原因解明を進める

③中間報告では次のことが示された。

中間報告の全文:

https://www.mlit.go.jp/common/001022351.pdf

・亀裂は中央部船底外板から発生と推測

・“MOL COMFORT” と同型の船(複数)の中央部船底外板に、20mm程度の「座屈変形」を確認した。

・船体にかかる応力を計算し「座屈」に至るかシミュレーションしたが、再現できていない。

④「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」は最終報告を2015年3月末までに答申の予定。

 

これが時系列的に並べたその後の動きです。船体は引き上げが不可能なので、シミュレーションするしかないのですが、上に述べた状況では明確な結論は出そうにありません。

しかし、同型船(複数)の中央部船底外板に、20mm程度の「座屈変形」があったということは、この船の設計か製造過程に問題があったと見るのが妥当と思います。

ということは三菱重工の責任が大きいと言うことになりますが、彼らは認めるでしょうか?

 

(注)「座屈変形」

鉄板を両㟨から圧縮した時に外側に変形する現象。いずれ破壊につながる。

特に船のように、圧縮したり引っぱったり、不規則な力が常にかかっている場合は現象が複雑で、鉄板の性質も関係することになる。そうなると、座屈変形をシミュレーションだけで解明するのは困難。

座屈変形のやさしい解説は

http://www.shims.shinshu-u.ac.jp/lab/kozo/buckling.htm

 

2014.12.17

2015.04.10 文の誤りを若干修正しました

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コンテナ船“MOL COMFORT”5 ~船体が折れた原因の調査は鳴かず飛ばず~

2014年11月01日 | MOL COMFORT沈没

2014年9月25日に、第5回「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」が国土交通省で開催されました。中間報告の出た、第4回(2013年12月12日)から10か月余りたっています。

 

第5回の議事内容は、

1)シミュレーションを再検討したところ、「非常に低い確率ではあるが、船体毀損の場合があり得る」ことが分かった。今後、実船で検証する。

2)同型船の船底に発見された座屈変形の発生メカニズムを解明する

であり、2014年度内にこれらの取りまとめをするということです。

これは、2015年3月までに、最終結論が出るということでしょうか。そうであれば、船体が折れた原因は不明確なままの消化不良で終わりそうです。

 

私の感想は、

1)について

「非常に低い確率」ということは、普通なら船体毀損は「起こり得ない」ということでしょう。現在使っているシミュレーションでは、今回の船体が折れた原因を十分に再現していないということです。現在のシミュレーションでは考慮されていない要因があるはずです。

実際の設計ではシミュレーションだけで船を設計していることは無いし、“MOL COMFORT”以外のコンテナ船は船体が折れていないので心配していませんが。

 

2)について

“MOL COMFORT”の同型船で発見された「座屈変形」は、その原因を是非解明してほしいものです。“MOL COMFORT”の同型船以外のコンテナ船では、「座屈変形」は無いはずですから。

 

2014.11.01

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コンテナ船“MOL COMFORT”4 ~沈没原因調査の中間報告出るが、しかし・・・

2013年12月27日 | MOL COMFORT沈没

私も製品のトラブルに関わった経験があります。私の関わった製品は人命に直接関わるようなものではありませんが、トラブルが発生すると、徹底的な調査とその改善策を求められて、神経を擦り減らしたものでした。大問題となるようなトラブルは、(当たり前ですが)事前に問題の発生を予見できなかった、いわゆる「想定外」の原因でした。

 

三菱重工が建造し、商船三井が運用していたコンテナ船“MOL COMFORT”が、2013617日にインド洋で船体が中央部から真っ二つに折れ、船体前半分は10日間漂流後の627日に沈没、船体後半分は漂流中に引航を試みるも火災を起こし、711日に沈没しました。積荷の4382個のコンテナ全部が失われた一方、乗組員(全員外国人)は救助されています。沈没した海域は、水深34000mあり、引き上げは困難です。

 

国土交通省の「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」の第一回と第二回に関して、20131016日付の「コンテナ船“MOL COMFORT3~沈没原因調査はうやむやになりそう~」で、「“MOL COMFORT”の同型船を調べるべき」などと報告済みです。

 

今回は第三回(1028日)と第四回(1212日)ですが、第四回では中間報告が出ました。この中間報告の注目点は、“MOL COMFORT”の同型船の調査結果です。

中間報告の全文:https://www.mlit.go.jp/common/001022351.pdf

中間報告の要点をピックアップします。

(1)亀裂は、中央部船底外板から発生したと推測。

(2)“MOL COMFORT”の複数の同型船で、中央部船底外板に20mm程度の座屈変形を確認。

(3)シミュレーションは、船体破断の原因や船底外板の座屈変形を再現できていない。

 

(1)は、三菱重工と新日鉄が開発した新しい高張力鋼が原因ではないということです。この高張力鋼板は、船体上部にしか使われていません。

 

(2)「複数の同型船の中央部船底外板に座屈変形があった」という情報は、重要です。船体を曲げようとする応力に、船体が負けている証拠ですから。「“MOL COMFORT”の同型船以外のコンテナ船も調べる」そうですが、座屈変形は無いでしょうね。もし、他のコンテナ船にも座屈変形があったら、大変なことですから。

 

(3)シミュレーション技術は、従来の技術・情報を元にした計算手段です。未知の要因や考慮されていない事象がある場合には、シミュレーションによる原因解明は無理です。

 

まとめると、他のコンテナ船には座屈変形が無いという前提ですが、“MOL COMFORT”と同型船には、設計か施工に構造的な問題があったと考えるのが妥当だと思われます。しかし、構造的な問題の要因解明には、まだまだ時間がかかりそうです。

 

 余談

シミュレーションに関して、世の中の評価は、大きく二つに分かれるようです。その一つは、大いに評価する人で、役職のある人に多いです。他方は、「フン!」と思っている人で、実務担当者に多いです。シミュレーションもその計算手法を理解して正しく使用すると有用と思いますが、大概はそうでは無いようです。

船体の応力計算は、シミュレーションにとって比較的得意とする分野でしょうが、計算条件の設定により計算結果が変化します。しかも、シミュレーションが使えるのは、あくまで船体にかかる定常的な力の解析だけで、鋼板が座屈に至る過程を化学的物理的に解析することは困難です。

 

2013.12.27

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コンテナ船“MOL COMFORT”3沈没原因調査はうやむやになりそう

2013年10月16日 | MOL COMFORT沈没

数年前に三菱重工が建造し、商船三井が運用していたコンテナ船“MOL COMFORT”が、617日にインド洋で船体が中央部から真っ二つに折れ、船首側半分は627日に沈没、船尾側半分は火災を起こし、711日に沈没しました。4382個ものコンテナが失われた一方、乗組員は全員(外国人)救助されています。

 

国土交通省の「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」の第二回が927日開催されました。

その記事を引用します。内容が乏しいです。これで、原因追及が出来るのでしょうか?

 

(1)事故船が建造時に船体構造の検査などを行う船級協会の構造規則に適合しており、その後も必要な船級協会の検査を受け、規定を満たしていたことを確認。

(2)折損の解析を行うためのシミュレーション手法について討議を行い、最適な手法を選択した。

 

(1)について

そらそうでしょうと言いたい。

(2)について

沈没した船の引き上げは困難なので、原因解明はシミュレーションと材料劣化の実験になるでしょう。

しかし、シミュレーションによって信頼性のある結果が出せるのは、重量の異なるコンテナの積み方によって船体に加わる力の計算くらいでは? 数年で発生したしたかもしれない鋼板の劣化は検討しないのでしょうか?

それに、事故を起こした船と同型の船が6隻もあるのに、この6隻を調査しないのでしょうか?商船三井は、3隻は補強工事が完了し、2隻は今秋、1隻は来春までに改修すると発表しています。そもそも、補強工事を行った3隻に何らかの兆候は無かったのでしょうか?

 

一方、日本海事協会は、814日に、

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商船三井のコンテナ船が破断・沈没した事故調査で、ハッチサイドコーミングを含む上甲板部が事故の起点ではないとの途中の調査を公表

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と発表しています。事故発生から814日までに、何か新しい事実がわかったのでしょうか?コンテナ船は沈んだままだし、シミュレーションは未着手だし。日本海事協会のプレスリリースには、全く根拠が示されていません。ひどいですね。

いずれにしても、こういう状況だと原因がハッキリすることは無さそうです。

 

2013.10.16

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