2015年に行われたオバマ・習近平会談は、同時期に訪米したローマ法王の歓迎ぶりと比べて習近平主席のメンツを潰すような訪問だったと伝える報道が多く、日本では溜飲を下げた人も多かったのではと思います。このブログでも、そのような主旨で書きました。(2015.10.21のブログ「中国はアメリカと敵対するのか?」と2015.10.29のブログ「中国はアメリカと敵対するのか?その補足」)
あれから4か月、あの時の中国の習近平主席は確かにメンツを潰されたと思いますが、その後の経過を見ていると、あの会談の勝者は中国ではなかったかと思わざるを得ません。当時から、富坂聡氏は「中国の勝ち」と言っていましたし、「China2049」(私は未だ読んでいません。翻訳は硬い読みにくい文章です)を書いたアメリカ政府元高官のマイケル・ピルズバーグ氏は「中国の圧勝」と書いています。
オバマ大統領の習近平主席に対するつっけんどんな対応は、アメリカの要求を中国が認めなかったので、オバマ大統領が頭にきたのでしょう。どうせアメリカは有効な対応策を取れないと見透かして、中国は自分の主張を押し通したということでは? このことは、その後の経過を見れば推測できます。
例えば、南シナ海。
中国が占拠している人工島の領海?に、アメリカ軍の船が航海したのは、10月のわずか1回で終了しました。その一方、1月になって中国は民間人?が民間?の航空機で中国が造成した人工島を訪問したことを公表しています。
また12月には、中国が占拠している人工島の近く(領空?)をアメリカ軍の飛行機が誤って進入し、中国軍から抗議を受けたとアメリカ軍が発表しました。
南シナ海に関しては、アメリカと中国の間で何らかの約束が出来ていると言っている人がいますが、私もそう思います。アメリカは南シナ海で中国の活動を本気で阻止する気は今のところ無さそうです。アメリカの経済にとって中国は必要ですから、むやみに危機を煽るようなことをすればアメリカの経済界から不満が上がるでしょう。
その後は奇妙な沈黙が続いていて、中国が埋め立てや飛行場の整備などを続けているのか、ハッキリしません。衛星からの情報を持っているはずの米国からの記事が出て来ません。
例えば、AIIB。
アメリカはどうするつもりか、さっぱりわからない。(アメリカはAIIBを承認したと言うニュース(注)を以前に聞いたので、今回ネットで捜しましたが見つかりませんでした)少なくとも、AIIBを阻止することは諦めたようです。
(注)このニュースは、時事通信が2016年1月2日付の「アジア投資銀、米も支持=ルール順守で「手打ち」-100か国に迫る勢い[深層探訪]」で配信しています。
(2016.02.26)
あとは中国による米国へのサイバー攻撃の問題、北朝鮮の問題、これらは全て後回しになったのでしょうか? オバマ大統領の任期は残り約1年。今年、アメリカはアジアにおいて何もしないし、何も起こらないことを願っているのかもしれません。
(これを書いていて思い出したこと)
昔勤めていた会社が米国の会社と協力して製品を開発しようとしました。そこで、米国の会社の中堅幹部が日本に来てミーティングを持ちました。私の(アホな)上司がある提案をしたら、「それは非常に良い提案だ」と米国の会社の人から言われたと喜んであちこちに言いふらしていました。経験のある賢い人ならわかると思いますが、これはお世辞です。日本人は遠回しに話すけど、米国人は率直に話すと思われている人もいるかもしれませんが、そんなことは無い。率直に話す時もあるし、すごいお世辞を言う時もある。彼らだってその時の空気を読んでいます。
尖閣諸島や南シナ海の問題でアメリカの政治家や米軍の人がいろいろ発言していますが、言葉通りに受け取ってはいけません。ヤツらはウソをつきませんが、お世辞はお世辞として、こちらの期待と混同してはいけません。この時期に、アメリカの政治家や米軍は、尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海で問題を起こしたくないはずです。
2016.01.30
(補足)
上の文では、来年大統領が変われば米国の中国に対する態度も変わると受け取られるかもしれませんが、そういうことにならないと思います。候補者の中には中国に対して強い態度を取ると言っている人もいますが、当選後にそれを貫き通せるかどうか? アメリカ経済に悪影響を及ぼす政策を取れないと私は思います。中国が旧ソ連のように米国に敵対する態度を明確に示さない限り。
2016.02.02