ほぼ週二 横浜の山の中通信

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起こるべくして起きたX線天文衛星「ひとみ」の失敗 その2~絵にかいたような失敗の見本~

2016年06月29日 | 科学・技術

2016年のブログ「起こるべくして起きたX線天文衛星「ひとみ」の失敗 ~組織が時代遅れ~」の続きです。

 

2016年6月8日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会」の報告書を公表していますので、その報告書を基にした解説記事が既にメディアに出ています。ここでは、わたしが報告書を読んだ感想を書きます。前のブログにも書きましたが、X線天文衛星「ひとみ」を打ち上げたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中の宇宙科学研究所ISASです。

 

報告書は下記URL参照。101ページあります。

http://www.jaxa.jp/press/2016/06/files/20160614_hitomi_01_j.pdf

 

X線天文衛星「ひとみ」が分解するまでの経緯

2007年:プロジェクトが始まる

2016年2月17日:打ち上げ

2016年2月25日:衛星打ち上げ後に変化した重量バランスに対応する数値パラメーター(この数値が間違っていた)を作成

2016年2月28日:間違った数値パラメーターを「ひとみ」に送信

2016年3月26日までに観測機器の立ち上げ完了

2016年3月26日:

 午前3時過ぎ:計画に従って「ひとみ」の姿勢変更を完了

(この姿勢制御は必要なプロセスですが、「ひとみ」を地上から観察できないタイミングで姿勢制御することに問題があるという指摘もあります)

午前4時過ぎ:「ひとみ」は(本当は正常なのに)姿勢に異常があるように自分で認識し、姿勢を正すような動作を開始したので、「ひとみ」が回転を始めた

(以前にも姿勢変更後に姿勢異常の誤認識が発生したことがあるようです)

この後、「ひとみ」は間違った数値パラメーターを基にした噴射のために、回転が増速した

(この噴射は地上からの指示ではなく、「ひとみ」の自分の判断)

午前10時過ぎ:「ひとみ」が分解した

午後4時過ぎ:音信不通が判明

2016年4月28日:復旧は困難と判断

 

衛星は、宇宙科学研究所ISASとNEC、三菱重工、日本飛行機、住友重機械、三菱電機の混成グループで打ち上げを担っていました。全体で何人いたのか、そのうちISASの人員は何人か報告書には書いてありませんが、制御関係を担当していたNECは十人前後から十数人だったようです。(これから出てくる運用担当者とあるのは、明確には書いていませんがNECと思われます)ISASだけでは、人員も技術も不足するので、こういう外部のメーカーの力を借りるのが普通のことですが、それだけにメンバーの意思疎通を図り、役割を明確にして、問題対応の漏れをなくすには大変な労力が必要です。こういう役目のプロジェクト責任者をISASの宇宙物理学の教授が出来るとは思えない。その理由は後で出て来ます。

 

それではトラブルをもう少し詳しく説明していきます。

まず衛星本体やセンサーなどに異常は無いのは確認しており、衛星自体の強度も問題なしと判断しています。原因は制御上の問題で、人の要因が強いようです。

問題が発生した順番です。

①    姿勢制御系の問題が発生

実際には回転していないのに回転していると衛星が誤って自己判断し、その回転を止めるように制御することで、逆に回転を始めた

(この誤った自己判断も以前から他の衛星でも起きている問題なので、それをキチンと対処しなかったのも問題であるが、ここでは省略します)

②    Z軸(長軸)周りにゆっくり回転を始める

③    衛星自体が姿勢の異常を検出し、安定モードになるように噴射を始めた

④    その噴射を制御する数値(パラメーター)が間違っており、適正な噴射ではなかった

⑤    「ひとみ」の回転が増速し、太陽電池パドルSAP(太陽電池を載せた羽のようなもの)の両翼(衛星の中で構造上一番弱い部分)が本体から分離

 

問題は、「噴射を制御する数値(パラメーター)が間違っていた」です。

この衛星が宇宙空間に到達すると、衛星本体に収まっていた太陽電池や測定用の機材が宇宙空間に大きく開きます。そうなると、この衛星の質量バランスが変化するので、姿勢を制御するための噴射を決める数値(パラメータ―)を書き換える必要がある。ここからが問題です。

 

1. 数値(パラメータ―)を書き換えることが、衛星を運用する文書に明確に書かれていなかった

2. その数値(パラメータ―)を書き換える手順を書いた手順書がなかった

3. その数値(パラメータ―)が運用担当者間で共有されていなかった

4. その数値(パラメータ―)の書き換えする(手作業です)時に、入力ミスをした

マイナスの付いた数値は、マイナスを取って入力することになっていたが、マイナスを付けたまま入力した。担当者はマイナスを取ることを知らなかった

5. その数値(パラメータ―)を書き換える作業訓練が事前に実施されていなかった

6. その数値(パラメータ―)を書き換えた後、コンピューター上でシミュレーションをすれば発見できたはずだったが、しなかった

7. 運用担当者のこれらの行為を監督する立場のISASのチェックもなかった

 

この分析を見た感想は、ヒドイの一言ですね。とても300億円をかけたプロジェクトとは思えないほど杜撰。

 

このような新しいプロジェクトでは、想定を超える事象が起きるのが普通です。だからこそ、事前に想定されている通常作業に間違いがあるようではどうしようもない。それを確認するためにも事前訓練が必要なのにしていない。さらに言えば、従来から発生しているのに解決できていない姿勢制御に関連した問題を、従来は実害が無いからと言って軽視するような態度では、まともな成功は覚束ない。

 

さらに報告書は指摘します。「衛星の設計への要求は、観測条件は詳細なのにも拘らず、安全・信頼性への要求は少ない」と。この計画のプロジェクト・マネージャー(プロジェクトの責任者)がISASの宇宙物理学の教授ということもあるのでしょう。「ISASの従来の方法では、プロジェクト管理が十分ではない」と述べていますが、全く同感です。

 

「ISASと業者の役割と責任が不明確」も指摘していますが、種子島での打ち上げでも問題になった部分で、結局ロケットは三菱重工が担当することになりました。「ひとみ」でも実質的にメーカーが大部分の業務をやっているのだったら、「ひとみ」の運行もメーカーに委託すべきです。(メーカーは嫌がるかも)

 

こういういい加減な体制だったら、こうなるだろうなと誰もが考える公式通りの失敗です。何とか戻って来た「はやぶさ」の場合も、こういう体制だったのでしょう。そうであれば「はやぶさ」が地球に帰ってこられたのは、ラッキーだったというしかない。しかし、「はやぶさ」のような偶然が再び起きるとも思えない。こういうあほらしい教訓を300億円かけて知ろうとは!

 

こういう失敗が起きても、PM(プロジェクトの責任者)とPI(観測の責任者)を別の人が担当するくらいの小手先の対策で済まして、現状通りにやろうとする人たちがISASの中にはいるようですが、どうしようもないですね。もっと根本的な対応を取る必要がある。

 

「はやぶさ」の成功の後、体制を改革できていれば、日本もまだ救いようがあるのでしょうが、それができないのが日本です。ISASの改革は、小手先だけの改革だけで済ますのではなく、もっと根本的に改革すべきです。

 

6月27日の日経新聞によると、JAXA(ISASでしょう)は代替機の予算を2017年に要求すると書いていますが、どうしようもない人達です。1回の失敗では教訓を得られない人たちで、きっと2回目の失敗が必要なのでしょう。

 

2016.06.29


起こるべくして起きたX線天文衛星「ひとみ」の失敗 その1 ~組織が時代遅れ~

2016年06月26日 | 科学・技術

「成功には偶然があり、失敗には必然がある」と言いますが、全くその通りです。

例えば、われわれは偶然も重なり大成功を収めると、その成功体験を捨てられず同じやり方を続けようとする。これは、従来通りしていれば安心ということもあるし、違う方法をやって失敗すると非難されることになるので、続けざるを得ない状況になる場合もある。そして、成功体験を漫然となぞっていると、しばらくは順調ですが、そのうち成功の陰に隠れていた欠点が徐々に大きくなり、結局失敗することが多い。後からその失敗を振り返ると、失敗が必然と思えるような原因が次々と出てくる。

 

2014年2月6日のブログ「日本のいびつな成功体験「はやぶさ」」で、「はやぶさ」の成功が「裏口技術」(私が名付けました)をもてはやす日本の「いびつさ」を指摘しました。

 

「はやぶさ」の成功の大きな要因の一つとして、「推進装置を制御する正規の回路の他に、もしかのための配線をしておいた」というのがありました。しかし、このような「裏口技術」を異様に誉めそやす日本の風土には問題があります。あの「はやぶさ」の成功後の異様な興奮状態をTVで見ると、日本人にはまともな技術開発ができないのでは?と思いました。このようなことを続けていると、次の計画ではまともに成功しない懸念があると上記ブログで書きました。

 

幸か不幸か、この懸念が表面化することは二年ほどありませんでしたが、ついに300億円の費用と8年の準備をかけたX線天文衛星「ひとみ」が失敗しました。

 

6月8日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会」の報告書を公表しました。これは今流行りの第三者委員会だそうですが、「ヤメ検」ではなく科学者が委員なので内容はまともで、失敗の問題点を明らかにしています。(二人いる主査の一人に「佐藤勝彦」氏の名前を見た時はビックリ。彼はノーベル賞級(ノーベル賞はちょっと難しいかな?)の宇宙物理学者ですよ。委員会の実務をどれほどしたかわかりませんが)

 

先ず書いておかなくてはならないのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)といっても内情は複雑なこと。X線天文衛星「ひとみ」を打ち上げたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中の「宇宙科学研究所」。 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2003年に宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所と全国の大学の共同利用機関の旧宇宙科学研究所の3組織を統合して誕生しました。その旧宇宙科学研究所は、東京大学にあった宇宙航空研究所が源流です。

 

私のようなJAXA内部ではない者でも、宇宙科学研究所(ISAS)はJAXA本体とは一線を画している(もっとはっきり言えば独立というか孤立を保っている)なあと思います。宇宙科学研究所(ISAS)はJAXA本体の筑波市から離れた相模原市にあり、打ち上げ場も昔からの内之浦です。そして、ここのメンバーだけは「教授」「准教授」「助教」という肩書が付いています。「教授」という名前にステータスシンボルを感じるのでしょう。チーフとかディレクター、マネジャーなどの横文字よりも、「教授」のほうがえらいように思いますから。大学院教育を行っているという理由をつけるでしょうが、関係ないですよね。

 

昔からよく言われるように、「教授」なんていう人種に大プロジェクトのリーダーが務まるか?という話です。今回のX線天文衛星「ひとみ」のプロジェクトの責任者(プロジェクト・マネジャー)も高エネルギー宇宙物理学が専門の「教授」でした。

 

次回は「X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会」の報告書を読んで、そこで指摘された問題点と対策を考えます。

 

2016.06.26

 

続きはこちら

 


安倍首相は持病が悪化したのでは?

2016年06月23日 | 国際・政治

安倍首相は、自分の経済政策を「アベノミクス」と言っていますが、従来からの自民党の政策と何が違うのでしょうか? 公共工事、ばらまき、投票前に年寄りに一時金、金利引き下げ、円安誘導、公的資金を使った株価上昇策など、どこかで聞いたような自民党の従来の政策の延長としか思えない。自民党は国民の支持のもとに「アベノミクス」のような政策を続けて来て、借金1000兆円ですから。そして、借金1000兆円の返済は金持ちより貧乏人の方が多くなるのでしょう。

 

最近、経済に関して発言するプロ(熟練という意味ではなく、それで金を稼いでいる人という意味)・アマとも、茶坊主のような人が増えていて、アバノミクス翼賛会を作っています。今の発言と名前をよ~く覚えておいて、数年後にその認識が正しかったか確認するのが楽しみです。もっとも、中には2~3年で居なくなりそうな人もいるので無駄になるかもしれない。

 

ところで、最近の安倍首相の顔が弛んできています。もちろん精神的な話ではなく、外見の話です。安倍首相は潰瘍性大腸炎が持病で、薬で押さえているという話は以前から公表されています。下記のブログでは週刊誌の記事を引用して「安倍首相の病状悪化」という噂を紹介しましたが、結果はいずれもオオカミ少年で、安倍首相は未だ元気です。

 

2014年11月13日の「今回の衆議院解散は「下痢解散」」

2015年8月21日の「安部首相は何時まで持つのか? その2

2015年11月22日の「安倍首相は何時まで持つのか? その3

 

ところが、最近ちょっと変だな?と思うことがありました。それは、G7サミットで、安倍首相が4枚の資料を配り「最近の経済状態は、リーマン・ショック前の状況とそっくりだ」と言ったとか。これは、安倍首相が「消費税は、リーマン・ショック級(の経済混乱)、大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていく」と言っていたので、消費税増税の先送りの新たな理由を考えなくて済むようにしたかったのでしょう。

 

不思議なのは、安倍首相がG7での自分の「リーマン・ショック前の状況とそっくりだ」発言を後日否定したこと。本人が否定しても4枚の資料は残っているし、G7の首脳は安倍首相の発言を聞いて不審に思い、それをメディアに話し、そしてメディアは紙面に書いているので、今更否定してもしょうがない。 安倍首相の「・・・そっくりだ」発言と後日の否定の二つの事実は何か違和感があります。

 

これは、安倍首相の判断ミスと片づけるよりは、潰瘍性大腸炎、あるいは潰瘍性大腸炎の薬の影響で真っ当な判断ができないのでは?と疑っています。

最近は「安倍首相の病状悪化」という週刊誌記事が出ませんが、実は本当に悪化しているのでは? 

そう思ってTVを見ると、参院選関係で安倍首相の顔が頻繁に出てきますが、元気そうな感じ? また外れたかな?

 

2016.06.23

 

(英国のEU離脱は「リーマン・ショック級」か?)

英国の国民投票でEU離脱が決定したことについて、「リーマン・ショック級の経済混乱が起きる(起きた!)」と言っている人がいますが違います。複数の国の大金融機関が破綻したり、破綻しそうになったリーマン・ショックとは比べ物にならない。今後、英国やドイツの金融機関が次々と破綻しそうになれば、「リーマン・ショック級」と言えるでしょうが。

例えて言うと、東北大震災と熊本地震くらいの違いでしょうか。(熊本の人に申し訳ないですが、安倍首相が「大震災級」と言っているので比較したまでです)

円高も、地下では以前から「円高」マグマが溜まり続けていて、何時爆発してもおかしくない時に、「英国のEU離脱」が引き金になっただけです。といっても、円がちょっと強いだけで、例えて言うと箱根の「大涌谷」くらいでしょうか、阿蘇山や桜島ほどではない。

2016.06.24


「**線」 、外には言えない本音の話

2016年06月19日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

某大空港に連絡する空港線を所有する京◇電鉄、**線に接続する予定の東◇電鉄、空港線を区役所のある*田駅に接続するために**線を推進している◎田区、この三者の本音をそっと聞いてみました。

 

京◇電鉄

〇〇経済新聞や週刊△△経済は、経済を知らない奴が好き勝手なことを書きやがって。経済のイロハを大学に戻ってもう一回勉強しろ! 

高い金をかけて**線を作っても、本線の乗客が減ったらどうしてくれるんや! ◎田区は馬の骨鉄道ライターを使っていい加減な記事を書かせやがって、営業妨害や! 役人なんて経済の「け」の字も鉄道の「て」の字も知らないくせに!

 

それに◎田区案の**線は京◇電鉄の負担が大きすぎる。この**線計画(**線は京◇電鉄空港線の途中から分岐し、*田駅に至る路線)じゃ、費用のほとんどを京◇電鉄が負担することになるやないか! 乗客が減る京◇電鉄の負担が大きく、乗客の増える東◇電鉄の負担が小さいとはどういう事や! ◎田区と東◇電鉄がつるんで、好い加減な計画を作りやがって! ◎田区案の**線なんて、あんな繁華街を通したら金がかかってしようがない。何!1000億円! 1000億円の費用かけて乗客が減るこんな計画を誰がやるものか! 馬鹿にするな!

 

東◇電鉄

京◇鉄空港線に直結できたら東◇東▽線の乗客も増えるので良いんやけど。◎田区案は単線でかつ地下ホームで乗り換え? 競合するJRの空港アクセス線と比べて利便性が劣るのに客が来るか? と言っても、金をかけすぎると採算が取れないから、本当は*田駅なんかに寄らずに近くを通る幹線道路の地下を通りゃ安く早く上がるんやけど、◎田区の区長が「*田駅を通せ」とうるさいからな。

 

それに2~3年後には、東◇東▽線には相#線から直通してくるので、東◇東▽線は満杯や。だから、**線に直通する電車を増発する余裕なんて全く無いからな。しかし◎田区の区長の言うことを無碍に断るとうるさいから、適当に口裏を合わせておけ。2~3年後には相#線の直通線の工事も終わるので、子会社に仕事が必要やから。

 

ところで、うちの東▽線の都内終点の地下駅は作り損なったな。客の数と比べて、ホームは狭いし通路も狭い。これ以上客が増えたら、どうしようもない。そのうち死人が出るぞ。あの頃は経営が苦しくて設備投資をケチったからな。今からじゃ、金もかかるしどうにもならん。混雑を減らすために、他の私鉄は複々線や別線を作ったが、うちは金がかかるのに利益の出ない工事はせんぞ! どうしようもないから、早う帰って寝よ。

 

◎田区

区民には「**線」と言って、離れている両駅を結んで利便性を図ると言っているけど、本当は区役所のある*田駅と空港が鉄道で繋がれば良いんや。空港がある区というのに、区役所から空港へ行くのにバスだけとはありえへん。「**線」を実現できれば、実行力のある区長ということで次の選挙は大丈夫や。

 

京◇電鉄はやる気が無いから、周りから攻めていくぞ。鉄道ライターには「**線」のネタを提供して記事を書かせたし、TVにも話題を提供したし、他区の区長から署名は取ったし、外堀は大方埋まったぞ! もう少しや! 東◇電鉄は協力的やけど、京◇電鉄は頑固やな。今は人口が多いだけの区やけど、*田駅と空港が鉄道で繋がって◎田区が港区のようになったら京◇電鉄も高級電鉄になって、儲かるかもしれんぞ。保証はせんけど。

 

2016.06.20


「相鉄・東急直通線」のまとめ

2016年06月17日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

2016年1月21日の「蒲蒲線より不可解な相鉄・東急直通線」

2016年4月30日の「「蒲蒲線より不可解な相鉄・東急直通線」の補足と一言

の続きです。

 

先ずは訂正。

2016年1月21日の「蒲蒲線より不可解な相鉄・東急直通線」の中で、東横線は「ラッシュアワー時には1時間あたり30本なので2分間隔となり、ほぼ限界です」と書きましたが、「・・約24本なので2~3分間隔・・」に訂正します。菊名・日吉・自由が丘の各駅で東横線時刻表を見たら約24本でした。参考に山手線の渋谷駅での朝のラッシュアワー時間帯は、外回り・内回りとも22本だったので、東横線の24本はもう限界というレベルです。

 

今までのまとめです。相鉄からの直通ルートは次の3通りです。

  • 相鉄からJRへの直通経路

相鉄線→JR直通線→東海道貨物線→横須賀線→山手貨物線→(新宿?)

  • 相鉄から東急への直通経路

相鉄線→JR直通線→東急直通線→東横線→(渋谷)→メトロ副都心線→(新宿三丁目?)

相鉄線→JR直通線→東急直通線→目黒線→(目黒)→メトロ南北線/都営三田線?

 

 (余計なことですが、都営三田線、東急目黒線、相鉄いずみ野線が繋がれば、慶応大学の三田、日吉、SFC(湘南藤沢キャンパス)が電車1本で繋がるので、「慶応線」と言われる所以です。ただし、相鉄いずみ野線の現在の終点は湘南台駅なので、SFCへはバスです。将来延伸すると言う話もあるそうですが何時になるやら)

 

公表されている直通線の電車の本数と現在の時刻表を照らし合わせて考えてみました。

先ずは 1)現在の状況

次は  2)直通線が出来たら

最後に 3)まとめ

です。

 

1)現在の状況

  • 相鉄線

小田急江ノ島線との乗換駅である相鉄本線大和駅から横浜駅に向かう電車は、6時台で15本

相鉄いずみ野線の終点湘南台駅から横浜駅に向かう電車は、7時台で12本

相鉄本線といずみ野線が合流する二俣川駅から横浜駅に向かう電車は、7時台で24本

(JR直通線が分岐する西谷駅は二俣川駅から横浜駅に向かって2駅目)

 

この状況から判断すると、西谷駅付近の相鉄本線は既にほぼ限界の電車が走っているので増発できないでしょう。(二俣川駅から西谷駅までの複々線化は無いようなので) そうすると現在の横浜駅行24本の中から直通線に振り向けるしかない。

 

  • 東横線

朝のラッシュアワー時に既に24本走っているので増発できないが、横浜駅と日吉駅の間にあってJR横浜線との乗換駅の菊名駅止まりの各停が4本あるのでこれを相鉄線直通に振り向けることは可能。ただし、直通電車は急行・特急でないと意味が無いので、各停を急行・特急にする必要あり。

 

  • 目黒線

朝のラッシュアワー時に20本前後走っているが、東横線の24本より若干少ないのはワンマンのため? それとも未だ増発の余裕がある? しかし、直通線へは従来の目黒線の終点日吉駅から延伸すればよいだけなので、直通線向けに増発する必要はない。

 

  • JR山手貨物線

渋谷駅での埼京線と湘南新宿ライン(両方とも山手貨物線を走る)を合計すると北行き15本、南行き21本

武蔵小杉駅での横須賀線と湘南新宿ライン(両方とも横須賀線を走る)を合計すると上り16本、下り18本。

埼京線は大崎止まりもあるので、相鉄から直通してくる電車を4本くらい通せるでしょう。

(増発するための障害が他にありますが、ここでは省略します)

 

2)直通線が出来たら

 

現在公表されている相鉄線から直通線へ入る電車の本数(ラッシュアワー時)

JR直通線(新宿行)4本

東急直通線 10本(これ以外に、東急から新横浜駅止まりの電車が4本)

 

結局、相鉄からJRと東急に直通する電車は、合計14本。これだけの電車を相鉄線から直通線に振り向けるとすると、相鉄の横浜駅に向かう電車は24-14=10本しかない。これじゃ、相鉄の横浜駅行は完全にローカル線になってしまうけど、これで良いの?

 

相鉄線から東急線に直通する電車の行き先と本数は?

東横線に直通する電車 4本(渋谷か新宿行?)

目黒線に直通する電車 6本(目黒駅から地下鉄に直通するか不明)

こんなものかな? (ここは私の推測です)

 

話は変わりますが、直通構想に関して、相鉄が最初に声を掛けたのが東急でなくJRだったことが分かります。初めから東急と直通構想を進めていたのなら、JRに直通する電車が1時間当たり4本なんていう計画は無い。

 

3)まとめ

 

①JR直通線と東急直通線の行き先はほぼ同じ。

JR直通線、東急直通線とも、目黒駅、渋谷駅、新宿駅(メトロ副都心線は新宿三丁目駅)を通ることになる。国はこういう重複する路線に同時に免許を出したことは今まで無いのでは?

 

②相鉄のメイン路線は東急直通線になる

相鉄の横浜駅行は完全にローカル線になるというのは言い過ぎかもしれないけど、朝のラッシュアワー時の横浜駅行の電車は24本から10本へとほぼ4割に激減する。それと同時に東急線に10本が直通するので、こっちがメインと言ってもおかしくは無い。

これは朝のラッシュアワー時ですが、昼間と夕方も同じような比率でしょう。

 

直通線の定期券を持っている人は週末に横浜駅に行かなくなる。そうすると相鉄関係の店が多い横浜駅周辺を利用する客は平日・週末とも確実には減るでしょうね。相鉄は今まで横浜駅付近に投資しているので、横浜駅付近の人出が少なくなるのは避けたいはずですが、それにもまして直通線を作るメリットが大きいと判断したということでしょう。

 

一方で、直通線のめぼしい駅の周辺は既に開発済みで、新たな開発が難しく、相鉄にはメリットが無い。むしろ東急が受ける恩恵の方が大きい。

 

③「座して死を待つよりは、戦って死すべし」

これじゃ、どっちにしても死んでしまうので、相鉄の直通計画を表現する言葉としては不適切ですが、良い言葉が思い浮かばないのでご容赦。相鉄はこれくらいの覚悟で「直通線を作る」と言うことです。

 

相鉄はメリット・デメリットを評価してメリットが多いという判断をしたのでしょうが、厳しい選択ですね。

 

2016.06.17

 

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