日本経済新聞の地図のチョンボ
日本経済新聞のJR羽田アクセス線の記事を読んでいたら、記事の地図に存在しない路線が描かれていた。それは、このブログで何回も書いている蒲蒲線。どこかで使った蒲蒲線の地図を流用したと思われるけど、蒲蒲線を消し忘れている。
蒲蒲線の路線図に間違いが多い
蒲蒲線に関する記事に、東急多摩川線が東急蒲田駅付近から、真っ直ぐ京急蒲田駅に向かっている路線図を時々見ますが、これは間違いです。南北に長い京急蒲田駅の南端の地下に駅を作るので、乗り換えに時間を要する。2022年6月14日の「蒲蒲線に予算?東京都は金持ち!」ではNHKの地図の誤りを指摘しています。
蒲蒲線、それとも東急空港線? 大田区の思惑
ところでこの路線、蒲蒲線というより東急空港線というべきです。蒲蒲線というと、東急蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ路線の様に誤解しますが、大田区の本来の目的は大田区役所のある東急蒲田駅(JR蒲田駅に隣接)と羽田空港を連絡すること。京急蒲田駅と連絡することは目的ではない。実際に京急蒲田駅付近には、大田区産業プラザ以外にこれといった施設はない。私も当初は、蒲蒲線という名前から、東急蒲田駅と京急蒲田駅を繋ぐ路線の様に思い込み、誤解していた。
この誤解は、大田区が意図したものだったのか、それとも意識していなかったのか? 京急蒲田駅(多分)には小学生の描いた蒲蒲線が出来た時の画が貼ってありました。小学生を出しにするなよ!という印象でした。
その蒲蒲線ですが、京急空港線に乗り入れる見通しが立たず、京急蒲田駅付近までの計画しかたっていません。ということで、空港線と呼ぶのは憚れるので、あえて蒲蒲線にしておきます。
当初の大田区の計画は経済合理性が全く無かった、今も?
当初の大田区の案(下の図の上側)を見ると、京急空港線から分岐して京急線が東急多摩川線の蒲田駅の地下に来るものでした。これでは、京急が新線の大部分を作ることになる。
(下の図の下側は2017年当時の案です。これらの図は、大田区案を参考に私が描きました)
前から言っているけど、東急蒲田駅と羽田空港を結ぶ新線を作って得をするのは東急です。京急はむしろ京急本線の利用客が減る可能性があるので損をする。だから、新線に京急が金を出すなんてありえない。計画を作った大田区の経済音痴は明らか。きっと、京急に取り合ってもらえず、東急と相談して作ったシナリオというか計画なんでしょう。この件について、経済誌が何回か好意的に取り上げていたけど、経済音痴の経済紙(今でも潰れていない)でした。
蒲蒲線の近況
大田区が61%、東急が39%を出資している「羽田エアポートライン株式会社」が蒲蒲線の建設主体です。蒲蒲線の事業費は1360億円と想定していますが、昨今の建設費上昇により、増額が予想されます。2000億円程度になるかも? これだけの費用をかけても効果は疑問です? より便利なJR羽田アクセス線が出来るのに?
蒲蒲線の経路
大田区が作成した蒲蒲線のイラストが公表されています。ただし、東急とどれだけ詰めたかは分からないので、今後変更があるかもしれません。今までのイラストも変更されています。このように蒲蒲線の計画のイラストが複数出ていますので、私が一番可能性のあるイラストを選択しました。これによると、東急多摩川線の矢口渡駅付近から複線で地下に入り、現在の東急蒲田駅の地下に東急多摩川線と蒲蒲線の蒲田地下駅を作る。東急の蒲田地下駅から京急蒲田駅近くの蒲蒲線の地下駅までは単線です。
東急蒲田駅の池上線プラットホームは地上にそのまま残り、多摩川線と池上線を連絡する線路は残すようです。そうしないと、池上線は他の東急線から孤立してしまう。旗の台駅で大井町線と立体交差していますが、渡り線はありません。
蒲蒲駅間のルートはどこ?
下のGoogleマップは、東急蒲田駅・JR蒲田駅付近とそこから800m離れた京急蒲田駅付近です。この写真を見ると、両駅間には家屋やビルがびっしり建っています。
両駅を通る道は、地図中のAとBの一方通行の二つの狭い道しかない。
この二つの道路、京急の高架下付近のC地点から東急蒲田駅方面を見ると、道路のAとBの狭さが分かる。
この道路は狭いので、地下に線路を作るにしても単線しか作れない。AとB両方の道路下にそれぞれ単線を作れば合わせて複線になるけど、費用は増える。計画の見積り1360億円は単線なので、複線にすると2000億円(近年の工事費アップを見込まずに)くらいにはなる。
単線の場合、道路Aか道路Bのかどちらの地下を通るか? 道路Aのほうが東急多摩川線からスムーズに入れますが、道路Aのような狭い道の地下に単線でも通せるのかな?
京急蒲田駅近くの蒲蒲線の地下駅はどこに?
京急蒲田駅は最近高架化されました。狭い土地の駅を高架化したので、3階は横浜方面行、2階は品川方面行になっていて、空港線は2階と3階から単線で出ています。
(下のGoogleマップは京急蒲田駅横の第一京浜から品川方向を見ています)
品川から来る電車はそのまま空港線に入るが、横浜方面から来る電車は、蒲田駅で進行方向を逆にして空港線に乗り入れています。空港から来る電車の品川方面行は2階のホームに入るし、横浜方面行は3階に入って進行方向を逆にして横浜方向に進行します。2階と3階から空港線の線路が出ていますが、同じ線路を使って空港へ行く電車と空港から来る電車を通すというややこしい運用をしています。
京急蒲田駅近くに出来る蒲蒲線の地下駅は、どこになるのか? 東横線の電車が多摩川線を経由して蒲蒲線に乗り入れるという計画なので、これらの電車に対応するプラットホームが必要です。東横線の電車は8両(長さ160m)か10両(長さ200m)なので、200m+αが必要。
京急本線の高架下(およそC地点)と国道15号線(第一京浜)の地下だけでは200mに足らない。C地点付近から、細長い敷地の大田区産業プラザの地下まで使うと、200mほどのプラットホーム(図中青紫線D)は作れる。大田区産業プラザは壊して建て替えですね。
蒲蒲線地下駅が大田区産業プラザ付近とすると、京急蒲田駅の空港線プラットホームまで少なくとも150m歩き、地下から2階か3階の空港線プラットホームまで登ることになる。これが羽田に向かう人たちに受け入れられるかどうか? JR羽田アクセス線との競争ですね。
蒲蒲線のダイヤ
東急蒲田地下駅から、京急蒲田駅近くの蒲蒲線の地下駅まで、約800mを単線で作ると、この区間は10~15分間隔でしか電車を運転できない。東急多摩川線はもっと短い間隔で運転しているので、多摩川線の3両連結の電車の大部分は東急蒲田地下駅止まりで、東横線から多摩川線をノンストップで直通してくる8両か10両の電車が蒲蒲線に直通することになる。もしかして、目黒線(地下鉄南北線、都営三田線が乗り入れている)の電車も直通してくるかもしれない。
現状の東急多摩川線は駅のホームが18m車4両対応なので、20m車の8両か10両の電車が乗り入れても、駅に停車できない。それで、直通してくる電車は田園調布駅から東急蒲田駅まで6駅をノンストップで走ることになる。そうすると、どこかの駅で、3両連結の多摩川線の電車を退避させる必要があり、そのための工事が必要です。現在、待避線はありません。
蒲蒲線を利用する人の見込み
【想定】
・山手線西側の人を想定
(東側の人は、新しく出来るJR羽田アクセス線や、品川から京急が使える)
・りんかい線大井町付近からJR羽田アクセス線への橋渡し線は完成している
(埼京線は、大崎駅からりんかい線、JR羽田アクセス線へと直通し羽田に)
・西武池袋線と東武東上線の東横線直通電車の一部が蒲蒲線にも直通する
湘南の人
⇒ 東海道線・横須賀線で横浜駅、ここで京急へ(乗り換え1回)
横浜の山側の人(東急田園都市線や東急大井町線沿線の人)
⇒ 渋谷に出て山手線で品川、京急へ(乗り換え2回)
⇒ 渋谷に出て、東横線から蒲蒲線、京急空港線(乗り換え2回)
⇒ 渋谷に出て、埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え1回)
横浜の海側の人(東急東横線より海側の人)
⇒ 京急本線・空港線で(乗り換え0回)
東急東横線沿線の人
⇒ 渋谷に出て山手線で品川、京急へ(乗り換え2回)
⇒ 渋谷に出て、埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え1回)
⇒ (沿線の横浜市の人)東横線で横浜、京急本線・京急空港線(乗り換え1回)
⇒ (沿線の東京都の人)東横線から蒲蒲線、京急空港線(乗り換え1回)
西武池袋線・東武東上線沿線の人
⇒ 池袋に出て山手線で品川、京急へ(乗り換え2回)
⇒ 副都心線・東横線直通に乗り蒲蒲線、京急空港線(乗り換え1回)
⇒ 池袋に出て、埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え1回)
西武新宿線沿線の人
⇒ 新宿や高田馬場に出て山手線で品川、京急へ(乗り換え2回)
⇒ 新宿に出て、埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え1回)
京王線沿線の人
⇒ 新宿に出て、山手線で品川、京急へ(乗り換え2回)
⇒ 新宿に出て、埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え1回)
⇒ 新宿三丁目から副都心線、東横線直通に乗り蒲蒲線、京急空港線(乗り換え2回)
小田急線沿線の人
⇒ 新宿に出て山手線で品川、京急へ(乗り換え2回)
⇒ 新宿に出て、埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え1回)
⇒ 海老名から相鉄線で横浜、京急へ(乗り換え2回)
埼京線沿線の人
⇒ 埼京線からJR羽田アクセス線(乗り換え0回)
地下鉄南北線、都営三田線沿線の人(目黒線が蒲蒲線に直通する場合)
⇒ 地下鉄南北線、都営三田線から目黒線、蒲蒲線へ、京急空港線(乗り換え1回)
⇒ いろいろ乗って、品川に出て京急へ
⇒ いろいろ乗って、JR羽田アクセス線へ
これを見ると、
・東横線・蒲蒲線利用者と京急本線利用者は競合する。蒲蒲線が出来ると京急本線利用者は減る。将来、京急空港線に東急が乗り入れると、乗り換えの手間が減るので、さらに京急本線利用者は減る。
・東横線・蒲蒲線とJR羽田アクセス線、京急は競合するので、どれを利用するのかは、電車の本数や所要時間、料金、乗り換えの手間など利便性による
東急沿線でも、一部の東横線沿線を除くと、蒲田は結構行きづらい。結局、東横線に乗り入れている西武池袋線や東武東上線、副都心線沿線の人が如何に利用するかということかな。
利用者から見ると、いろいろなルートがあるのは選択肢が増えて有難い。経営面から見ると、JR羽田アクセス線、京急、それに東横線・多摩川線・蒲蒲線直通、それに空港直通バスのどれが利益を挙げるか、興味深い。
2024年9月15日