実質的に日本のコンテナ船“MOL COMFORT”が沈没した事故は、マスメディアでは取り上げられておらず、あまり知られていません。しかしながら、その衝撃的な写真は世界中に流れており、技術大国日本として王道の対応が必要と思うので、関係者の努力を期待して今までの経緯をまとめます。
三菱重工が建造し、商船三井が運用していたコンテナ船“MOL COMFORT”が、昨年2013年6月17日にインド洋で船体が中央部から二つに折れ、船体前半分は10日間漂流後の6月27日に沈没、船体後半分は漂流中に引航を試みるも火災を起こし、7月11日に沈没しました。積荷の4382個のコンテナは全部失われましたが、乗組員(全員外国人)は全員救助されています。沈没した海域の水深は3~4000mあり、船体の引き上げは困難です。なおこのコンテナ船は、就航して数年の新しい船で、同型船が6隻あります。
船体が折れる寸前の様子、二つに割れた船体が漂流する様子などの写真がインターネット上に出ています。これらは、“MOL COMFORT”で検索すると出てきますが、ここでは三つだけ紹介しておきます。
写真は少ないが、コンテナ船中央部の亀裂がアップで見られます。 (2016.01.12現在、この記事・画像は削除されていますので、2013年7月15日のブログ「インド洋で商船三井のコンテナ船”MOL CONFORT"が嵐で真っ二つ」の後半で数件のサイトを紹介しています。そちらを参照してください)
船体後部の沈没、船体前部の火災と沈没の写真が30枚掲載されています。
http://www.shipwrecklog.com/log/tag/mol-comfort/
沈没海域がわかります
http://gcaptain.com/mol-box-ship-suffers-broken-back-sinks-off-yeme/
なお、このコンテナ船にはシリアの反政府軍向け武器・弾薬が積まれていたので、政府軍を支援するロシアが沈めたという想像だけの話(サイトを書いている人は海運か造船関係者?)は世間話的には面白いのですが、日本の最新技術を集めたコンテナ船が沈没したという現実を直視できないのでしょうか。
以上が日本のコンテナ船“MOL COMFORT”の沈没事故の状況です。
じゃあ、今後はどうするの? ちゃんと対応するんでしょうね!
その後の対応
①商船三井は、“MOL COMFORT”と同型の船6隻の船体を補強し改修した。
②国土交通省は「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」をつくり、原因解明を進める
③中間報告では次のことが示された。
中間報告の全文:
https://www.mlit.go.jp/common/001022351.pdf
・亀裂は中央部船底外板から発生と推測
・“MOL COMFORT” と同型の船(複数)の中央部船底外板に、20mm程度の「座屈変形」を確認した。
・船体にかかる応力を計算し「座屈」に至るかシミュレーションしたが、再現できていない。
④「コンテナ運搬船安全対策検討委員会」は最終報告を2015年3月末までに答申の予定。
これが時系列的に並べたその後の動きです。船体は引き上げが不可能なので、シミュレーションするしかないのですが、上に述べた状況では明確な結論は出そうにありません。
しかし、同型船(複数)の中央部船底外板に、20mm程度の「座屈変形」があったということは、この船の設計か製造過程に問題があったと見るのが妥当と思います。
ということは三菱重工の責任が大きいと言うことになりますが、彼らは認めるでしょうか?
(注)「座屈変形」
鉄板を両㟨から圧縮した時に外側に変形する現象。いずれ破壊につながる。
特に船のように、圧縮したり引っぱったり、不規則な力が常にかかっている場合は現象が複雑で、鉄板の性質も関係することになる。そうなると、座屈変形をシミュレーションだけで解明するのは困難。
座屈変形のやさしい解説は
http://www.shims.shinshu-u.ac.jp/lab/kozo/buckling.htm
2014.12.17
2015.04.10 文の誤りを若干修正しました
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