ほぼ週二 横浜の山の中通信

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蒲蒲線の大田区案を見る

2016年02月15日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

蒲蒲線については、既に三件書いています。

2015年04月10日の「蒲蒲線は実現しない!」、

2016年01月07日の「蒲蒲線は実現しない!~続き~

2016年01月15日の「蒲蒲線は実現しない!~JRはどうする?~」

今回は、蒲蒲線にご執心の大田区案について考えてみました。

 

大田区のホームページに蒲蒲線の路線案が出ています。

http://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/koutsu/kamakamasen/sinnkuukousenntyousa.files/24torimatome_web.pdf

このPDFの5ページ目に路線図が載っています。

 

概要です。

・東急多摩川線からも、京急空港線からも、単線で地下に入る

・東急蒲田駅地下駅のプラットフォームの両側に多摩川線と空港線が入る構造で、プラットフォームを介して乗換する。電車が相互に直接乗り入れる構造ではない。

 

大田区案を見ても、両蒲田駅を繋ぐ具体的なルートが不明確なので勝手に推測しました。図の中の緑色の線です。(赤色の線は環八を経由するルート案です)

 

詳しく書くと次のようになります。

東急多摩川線は

①東急多摩川線の矢口渡駅(蒲田駅の一駅手前、「矢切の渡し」ではない、多摩川はずう~と約800㍍西)の手前で分岐し単線で地下に入る

 

②東急蒲田駅の地下駅に至る。この駅は東急蒲田駅の直下に見える。この地下駅のプラットフォームで京急空港線に乗り換える

 

京急空港線は、

③京急糀谷駅(蒲田駅の一駅手前)と大鳥居駅(蒲田駅の二駅手前)の間で分岐し、単線で地下に入る

④京急本線と交差するあたりの南蒲田駅(現在京急にこの駅は無い。京急本線と環八が交差する付近とすると、京急蒲田駅から南に約200㍍)を経由する。

 

⑤そのまま単線で東急蒲田駅の地下駅に至る

 

これからわかることとそれに対する疑問を挙げます。

 

  • 蒲蒲線は単線で、地下プラットフォームで乗り換え?

 

 約1000億円以上も工事に金をかけるのに、プラットフォームで乗り換えとは不便な。それに単線では1時間に数本しか運転できないけど、その程度で十分という程度の需要見通しであれば、採算はとれるのかなあ?

 

一方で、東急多摩川線の構造的な問題もある。

東横線と目黒線が並走する田園調布―多摩川駅の間で、目黒線から多摩川線へ、東横線から目黒線を介して多摩川線へ、線路が繋がっており現在でも直通可能。

 

しかし、東急多摩川線(多摩川園―蒲田)は、昔の目蒲線の南半分で、3両連結のワンマンが地上をのんびり走っていて、各駅のプラットフォームは短いし、退避用の線路も無い。東横線からの直通電車は多摩川線(多摩川園―蒲田)区間をノンストップで通過すれば何とかなるけど、踏切も多数あるので、結局線路を改良しないと無理では。

 

  • 京急蒲田駅の地下には乗入れず、京急蒲田駅から約200㍍離れた地下に南蒲田駅を造る

 

 京急はこんな近くに新駅を造らないので、京急本線に乗る人は約200㍍歩くことになる。大田区は空港連絡だけでなく、両蒲田駅を接続することで活性化を図ると言っているけど、これでは効果が半減では? まあ京急蒲田駅の周辺は核となるような施設がないので、これでもOKかな。 そうか、わかったぞ! 大田区案は東急・JR蒲田駅と空港を繋ぐことが目的であって、京急蒲田駅と繋ぐことが目的では無いんだ。東急・JR蒲田駅付近は大田区で一番賑やかだし区役所もある。

 

  • 京急空港線が東急蒲田駅の地下まで乗り入れてくる

 

 あれ?東急が京急蒲田駅か、京急空港線に乗り入れるのでは? 何回も言っているけど、この計画が実現すると、京急本線の乗客は減るのでトータルすると京急の運賃収入は減るんじゃないの? それなのに、さらに京急に負担させようとしているのかな? こんな計画、京急は承認したのかな? もしかしたら、この計画案、東急とは相談しているけど、京急とは相談していないのでは?

 

京急空港線を東急・JR蒲田駅まで延伸すると、今まで品川駅や横浜駅で京急に乗り換えていた空港利用者は、JR蒲田駅で乗り換えることもできる。そうすると、京急本線を利用する人が減るので、京急は高い金をかけて東急・JR蒲田駅まで延伸しても乗客が減る可能性がある。といっても、JR蒲田駅に停まる電車は京浜東北線だけなので、JRに流れる客はそれほど多くないのかも。どっちにしても京急は1000億円かけて延伸してもメリットは無い。

 

  • 蒲蒲線の東急蒲田駅と京急蒲田駅の地下線路の上は住宅密集地

 

買収して道を造るのか、住宅はそのままにして地下に穴を掘るのか? こんなところに道を造っても、どん詰まりの道にしかならないので、深く掘るしかない。

 

(まとめ)

大田区の案は、蒲蒲線と言いながら東急・JR蒲田駅と空港を鉄道で繋ぐのが目的で、京急蒲田駅と繋ぐ意思は無さそうです。そう考えると、この計画の何かスッキリしなかった点がハッキリした。これは大田区案なので、東急と京急がどう考えるかは話が別です。

 

何回も言うけど、蒲蒲線を造ると京急は乗客が減り、東急は乗客が増えるはずです。1000億円をかけて、乗客が増える会社は良いけど、減る会社は詐欺に会うようなものです。この点をどうするのか、大田区案は全く触れていない。これをウィンウィンの関係にしないと民間の会社は動けない。結論は、京急、東急、それに大田区の思惑がずれているので、これらをまとめることが出来ない限り、実現性は限りなく低いと言わざるを得ません。

 

ところで、こんな計画に何も言えない鉄道ライターって、どうしようもないねえ。

 

2016.02.15

続きではありませんが、こちらを参考に!

 

(追加 2022年6月30日)

このブログを読み返してみると、Google地図に書き込んだ(赤色の線は環八を経由するルート案です)というBルート案を全く説明していないことに気がつきました。

地図に赤い線で書き込んだ、環八の地下を通るBルートは、東急にとって一番好ましいルートだと思います。これだと東急多摩川線を改良して複線のまま最短で京急の空港線に繋げることが出来る。そうすると東横線や目黒線の電車を新空港線に直通させやすくなる。ただし、東急と京急の軌間が異なる問題と京急が営業上不利になる問題は残る。

一番の問題は、大田区役所のあるJR蒲田駅/東急蒲田駅を通らないこと。大田区は、JR蒲田駅/東急蒲田駅と羽田空港を電車で結びたいのが本心なので、JR蒲田駅/東急蒲田駅を通らないルート案は絶対反対。ありえない!

こうしてみると、大田区、東急、京急の思惑は全く別の方向を向いているので、この計画がまとまることない。

 

 

 

 

 


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