「世の中、ちょっとやぶにらみ」

本音とたてまえ使い分け、視点をかえてにらんでみれば、違った世界が見えてくる・・・かな?    yattaro-

「秋深し」

2012年10月03日 | 趣味・・エッセイ

        

               

 田地田畑のある農家の婿養子となった同級生のもとへ、半ば親切の押し売りみたいなかたちで稲刈りの手伝いに行ったのは去年の秋。
  「今年も行こうか」と電話すると、「去年手伝ってもらった広いところは米作りをやめた。今年は家の前と後ろの小さな田んぼだけにしたから、手伝いは要らないよ」と言う。
 
 昨年までは2トンばかりの新米をJAに出荷してきたがもう限界らしい。
 老体に鞭打って精出しても、先行投資した1000万円超の農機具の維持管理が難しい。しかも年々の必要経費高騰によって、米を作れば作るほど赤字なのだと言うではないか。その上八十八の手間暇かける労力が要る。
 同級生の中では彼が一番痩せていて、苦労の跡が目に見える。
 
 田や畑は作らなくても放って置くわけにはいかない。隣接する耕作中の田んぼに害を及ぼすので、草刈りや維持はしなくてはならない。
しかも、一旦荒らすと復旧にまた大きな労力と資金が要る。苦労を数えりゃきりがない。
 
 大きな農家の婿養子になった彼を羨ましく思ったのも今や昔の物語り。
 米作りこそ縮小したが農作業には追われる彼を、せいぜいカラオケに誘い出すくらいしか能がない。
 
 それにしても食糧自給率40%を割り込んだわが国の農業政策。外国からの兵糧攻めにあったらひとたまりもないのではないかと心配する。
 食糧他力本願からの脱却、急務である。

                 2012,10, 3  毎日新聞、男の気持ち掲載 

コメント (12)
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